バーチャルPPAとは?環境価値のみを取引きする仕組みを徹底解説

脱炭素 更新日: 2026.01.20

バーチャルPPAとは?環境価値のみを取引きする仕組みを徹底解説

「バーチャルPPAはうちの会社に関係ある?」「導入したいけどよく分かっていない」
脱炭素や再生可能エネルギーへの対応が求められる中、こうした疑問を抱える企業担当者は多くいます。

結論からお伝えします。バーチャルPPAとは電力契約を変えずに、再生可能エネルギーの「環境価値」を長期的に確保し価格変動リスクも分かち合う仕組みです。
再エネの電気を直接使うわけではありません。新しい再エネ発電所の建設を支え、RE100やSBTといった国際的な脱炭素要請にも対応できる仕組みです。

バーチャルPPAの仕組みはやや複雑で、すべての企業に向いているわけではありません。そこで本記事では、バーチャルPPAの仕組みや、導入したら得られる利点、さらには具体的な導入事例を紹介。バーチャルPPAとは何か、自社に向いているのか、を判断できるように丁寧に解説します。

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バーチャルPPAとは?

バーチャルPPAとは、再生可能エネルギー由来の電力そのものではありません。環境価値を長期契約で取得し電力価格を差額決済する手法です。仮想的な電力購入契約(Virtual Power Purchase Agreement)を意味しています。

ちなみに環境価値とは、再生可能エネルギーの発電や省エネ活動によって生まれた成果・価値を取引する仕組みです。これについては、以下の記事で詳しく知れるので、ぜひ知識を深めてみてください。


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環境価値とは、再生可能エネルギーの利用やCO₂削減といった成果を証書として可視化し、取引できるようにしたクレジット。発電設備を持たない企業には魅力的ですが、目的に合った証書を選ばないと意味が薄れてしまいます。


日本ではまだ導入事例が少ないため、よく知らない人も多くいるでしょう。しかし国内ではあまり聞かないだけで、海外では主流になりつつあります。

バーチャルPPAの仕組み

バーチャルPPAでは発電した電力は電力市場で売られ、需要家には物理的に届きません。電気そのものは、電力市場で通常どおり売買されるためです。下図は、バーチャルPPAの仕組みを表したものです。

バーチャルPPAのスキームイメージ
(引用)オフサイトコーポレートPPAについて|環境省

図の黄色い横線で示されたPPA契約価格とは、発電事業者と需要家の結ぶバーチャルPPA契約時に決められる価格をいいます。
市場価格がPPA契約価格よりも高くなれば、超過分の一部を利益として発電事業者が需要家に支払います。一方で、市場価格がPPA契約よりも低くなれば、損失分を需要家が補填しなければなりません。

つまりバーチャルPPAとは、将来の再エネ電力価格を長期で約束する契約であり、契約価格と市場価格の差額を精算する仕組みです。

バーチャルPPAと環境価値の関係性

バーチャルPPAは環境価値を長期的に購入する契約です。単発の環境価値証書購入とは異なり、特定の発電所と長期で結びつくイメージ。長期での支援になるバーチャルPPAは、新しい再エネ導入につながる可能性があります。

とくに新設の再エネ発電所の開発・建設を後押しする形のバーチャルPPAであれば、追加性が高いといえます。


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「追加性」は英語では「additionality」と表現される概念です。新たな再生可能エネルギー設備への投資を促す効果を表しています。気候変動を抑制する視点とビジネス要因によって、追加性は重視されています。


バーチャルPPAとフィジカルPPAの違い

バーチャルPPAとフィジカルPPAの違いが分からなくなるケースもよく聞くので、ここで説明します。バーチャルPPAは環境価値のみの契約であり、電力契約ではありません。一方で、フィジカルPPAは電力と環境価値のセットという特徴をもちます。

オフサイトコーポレートPPAの形態
(引用)オフサイトコーポレートPPAについて|環境省

さらに「オフサイト」のワードが出てきて、混乱してしまう人もいるでしょう。PPAはそもそも場所の観点で、オンサイト(敷地内)とオフサイト(敷地外)に分類されています。太陽光発電のPPAの分類・モデルについては、以下の記事で詳しく解説しています。


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太陽光発電のPPAモデルとは、初期費用とランニングコストがともに0円で太陽光発電システムを導入し、再生可能エネルギーが使える仕組みです。
電力の自家消費を希望する需要家に対して、第三者であるPPA事業者が太陽光発電システムやその電力を提供します。


バーチャルPPAもフィジカルPPAも、オフサイトPPAの一種と考えて差し支えありません。電力を購入するかどうかの違いです。
再エネ発電設備が電気の需要場所から離れているオフサイトPPAにおいて、再エネ電力とそれに付随する環境価値をセットで購入するPPAがフィジカルPPA、電力と環境価値を切り離して環境価値のみを購入するPPAがバーチャルPPAです。

コーポレートPPAの選択肢
(参照)コーポレートPPA日本の最新動向2025年版|自然エネルギー財団


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PPAの1つであるオフサイトコーポレートPPAを解説します。オンサイトとの違いやオフサイトならではの利点や注意点をまとめます。


 

バーチャルPPAのメリット

企業がバーチャルPPA契約を結ぶと、どのような利点があるのでしょうか?

再エネ導入と聞くと、「コストがかかる」「手間が増える」といった印象を持つ人も多いかもしれません。しかしバーチャルPPAは、従来の再エネ導入手法とは異なるアプローチで、脱炭素経営を可能にします。

バーチャルPPAのメリット

メリットは大きく分けて5つあります。企業にとってどのような利点があるのか、具体的に解説します。

電力契約を変えずに再エネを導入できる

バーチャルPPAでは、今使っている電力会社との契約をそのまま維持できます。もちろん工場や店舗が全国にあっても、面倒な契約変更は不要。電力契約を変えずに再エネ導入できるので、手間が減らせます。

立地制約なしに大規模な再エネを支援できる

大規模な発電施設は、フィジカルPPAで導入しようとすると、設置場所や送電の観点から立地の制約を受けやすくなります。しかしバーチャルPPAは発電所がどこにあっても問題ありません

例えば次のような場合でも、バーチャルPPAなら再エネ導入に参加・支援できます。

  • 自社の敷地内や近隣に土地がない
  • 都市部に拠点を持つ
  • 風力やメガソーラーを支援したい

バーチャルPPAは電力を物理的に受け取らないのが特徴です。つまり立地制約の大きい再生可能エネルギーも、選択・支援可能です。

国際的な脱炭素イニシアチブに対応できる

RE100やSBTといった、国際的な脱炭素イニシアチブに整合的な手法で再生可能エネルギーを導入できるのもバーチャルPPAのメリットです。環境価値の取得により、環境対応への目標や結果を定量的に示せます

RE100

RE100とは、事業で使う電力を100%再エネにする、という枠組みです。バーチャルPPAは環境価値を明確に取得でき、特定の発電所と長期契約するため、RE100に活用できます。

SBT

科学的根拠に基づいてCO₂削減目標を設定・達成するのが、SBTです。電力由来のCO₂であるScope 2排出量を減らすことが求められています。もちろんバーチャルPPAは再エネ由来であり、CO₂排出削減量を説明できるため、SBTにも対応可能です。

新しい再エネを増やす力を応援できる

バーチャルPPAは10~20年の長期契約です。そのため、発電所の建設を支援できる点もメリットとして挙げられます。

建設を支援すれば、「バーチャルPPAのおかげで発電所が建った」ともいえますよね。ちなみに環境価値の購入のみでは単発になるため、ここまでの追加性は持っていません。まさにバーチャルPPAだからこそ持っている応援力です。

電力価格変動リスクをヘッジできる

バーチャルPPAは、電力市場価格と契約価格の差額を精算する仕組みです。そのため電力価格が高騰した際に支払いを相殺でき、電力価格の変動リスクを抑制します。

具体的な数値を用いて、より分かりやすく解説しましょう。例えば基準価格を10円/kWhとした場合、市場価格が15円になれば発電事業者には+5円の儲けが出ますよね。その一部をバーチャルPPA契約企業に支払います。別契約である電気代は高くなりますが、その分儲けとなった利益が入ってきます。
一方で市場価格が7円になれば差額は-8円。こちらは発電事業者に補填しなければならない状況です。しかし別契約の電気代はそもそも安くなっています。つまり大きな損失になりにくい(そのような設計とする)ケースが一般的です。

リスクヘッジのためには、トータルで相殺される設計がコツです。正しい設計をしなければ、ヘッジにならずリスクになるので注意です。

  • 契約価格の設定
  • 契約量
  • 会社の電力使用パターン

これらの条件は企業によって違うので、自社にあった設計をしましょう。

 

バーチャルPPAのデメリット

バーチャルPPAにはメリットばかりではありません。以下のようなデメリットも存在します。

  • 価格リスクがゼロではない
  • 実際の電気は再エネにならない
  • 電力契約ではないため会計・契約が複雑

導入前にデメリットを知り、バーチャルPPAが自社にあっているのか判断しましょう。

価格リスクがゼロではない

バーチャルPPAには差額決済があり、電力市場価格と契約価格の差額を精算します。そのため価格リスクが発生する可能性があるのは、デメリットといえます。

例えば市場価格が下がり続けたり契約価格が高すぎたりした場合は、追加の支払いが発生する可能性も。少しでもリスクをゼロに近づけるには、自社の電力使用パターンに合った設計が必要です。

実際の電気は再エネにならない

バーチャルPPAでは、再生可能エネルギー由来の電力が物理的に供給されるわけではありません。そのため、実際に使用する電気の性質については注意が必要です。

具体的には、次のような点にご注意ください。

  • コンセントに来る電気は従来と変わらない
  • 電力の使用実態と環境価値の取得が切り離されている
  • 「再エネを使っている」という表現には社内外への丁寧な説明が必要

そもそもバーチャルPPAは、「環境価値で再エネを長期的に応援している」仕組みです。この点を正しく理解・共有しておかないと、制度への誤解や認識のズレが生じる可能性があります。

電力契約ではないため会計・契約が複雑

バーチャルPPAは金融契約に近く、中小企業にはハードルが高い特徴をもっています。具体的に以下の点が、中小企業には懸念事項が残るでしょう。

  • 電力市場価格を参照する
  • 固定価格との差額を精算する
  • 10~20年の長期契約になる

損益が毎年ブレる可能性もあり、会計基準の確認や監査法人との相談が必要になる可能性もあります。専任の法務・財務担当が不在で長期リスクを取りにくい中小企業には、バーチャルPPA導入のハードルは高く感じられるでしょう。

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【導入事例】バーチャルPPAを使っている日本企業

日本は海外と比較すると、バーチャルPPAがあまり知られていません。しかしすでに導入している企業があるのも事実です。

日本マイクロソフト株式会社

愛知県犬山市の太陽光発電プロジェクトにおいて、20年間のバーチャルPPA契約を結んだのは日本マイクロソフト株式会社です。大規模なバーチャルPPAの先例となりました。

(参考)自然電力、マイクロソフトとバーチャルPPAを締結|自然電力

KDDI

KDDIは、鹿児島県南大隅町の陸上風力発電に係るバーチャルPPAを締結しました。これにより、KDDIの九州基地局におけるCO₂排出量を5割ほど削減できる見込みです。

(参考)KDDIとJパワー、陸上風力発電所に係るバーチャルPPAを締結|KDDI

株式会社村田製作所

三菱商事とバーチャルPPA契約を結んでいるのは、電子部品メーカーである株式会社村田製作所です。三菱商事が新たに開発・運営する大規模太陽光発電所から生まれる環境価値を、村田製作所が長期調達する契約を結びました。

(参考)カーボンニュートラル社会の実現に向けた協業の枠組みに合意|村田製作所

 

バーチャルPPAに関するよくある質問

ここまでバーチャルPPAのメリット・デメリットや導入事例を紹介しました。しかしまだ疑問が残る人もいるでしょう。ここからはよくある質問として、以下の4つを解説します。

  • バーチャルPPAの単価はいくら?
  • バーチャルPPAで取得できる環境価値の種別は?
  • バーチャルPPAはデリバティブか?
  • 中小企業にバーチャルPPAは向かないのか?

バーチャルPPAの知識を深めていきましょう。

バーチャルPPAの単価はいくら?

バーチャルPPAの単価は、案件ごとに個別交渉で決まります。そのため一律の相場はありません。

案件ごとに決まるというのは、以下の条件が契約によって違うためです。

  • 発電所の種類
  • 規模や立地
  • 契約期間

ちなみに電力市場価格を基準にした固定価格の相場は、13~16円/kWh程度(※記事公開時点)です。バーチャルPPAは市場価格との差を精算する仕組みのため、価格だけでなくリスク分担や契約条件全体で評価する必要があります。

バーチャルPPAで取得できる環境価値の種別は?

主に非FIT非化石証書が、バーチャルPPAで取得できる環境価値の種別です。非FIT非化石証書は、RE100やSBTなどの国際基準への対応を前提に設計されています。

バーチャルPPAはデリバティブか?

すべてのバーチャルPPAがデリバティブ(金融派生商品)ではありません。ただし契約内容によっては、デリバティブとして扱われる可能性もあります。環境省も、以下の見解を示しています。

バーチャルPPAは商品先物取引に相当し、いわゆるデリバティブ (金融派生商品)契約に該当する可能性がある。この場合、企業会計処理上の整理が必要となる。
(引用)オフサイトコーポレートPPAについて|環境省

電力市場価格と契約価格の差額を精算する仕組みが金融取引に近いため、「可能性がある」の表現になります。会計上の扱いは契約条件や基準によって異なるため、導入時には会計・法務などの専門家との確認が不可欠です。

中小企業にバーチャルPPAは向かないのか?

たしかに中小企業にとっては、ハードルは高めであるといえます。長期契約によるリスクや会計の複雑さがネックになるためです。

中小企業の場合は、バーチャルPPAよりもオンサイトPPAや環境価値証書購入の方が現実的なケースもあるでしょう。オンサイトPPAを検討中の事業者は、以下の記事で理解を深められます。


PPA事業者を選ぶコツ5選|失敗しない業者選びを伝授します

PPA事業者を選ぶコツ5選|失敗しない業者選びを伝授します

PPA契約は約20年にわたる長期間の契約です。「A社とB社で値段が違う」「C社では断られたが、D社では問題なかった」などのケースも起こり得るため、業者選びは重要です。


 

バーチャルPPAとは電力契約なしで環境価値を長期的に買い取る契約である

バーチャルPPAは、再生可能エネルギー由来の電力そのものを購入する契約ではなく、環境価値を長期的に取得する仕組みです。発電された電力は契約した需要家が得るのではなく、電力市場で売買されます。需要家と発電事業者の間では、あらかじめ定めた契約価格と市場価格との差額を精算する点が大きな特徴です。

企業は電力契約を変更せずに再エネ導入に参加でき、立地制約もなく大規模な再生可能エネルギーを支援できます。さらにRE100やSBTといった、国際的な脱炭素イニシアティブにも対応可能な点がメリットとして挙げられます。

一方でバーチャルPPAは価格差精算を伴うため、設計次第ではリスクを抱える可能性も。契約・会計面も比較的複雑なため、すべての企業にとって万能な手法ではありません。自社の電力使用量や経営体力に応じて、オンサイトPPAや環境価値証書購入など他の手法とも比較・検討してみてください。

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