電気代補助金は3月まで!家計への影響はどれくらい?
電気料金 更新日: 2025.01.27
家計や企業の光熱費を支援する補助事業は、酷暑乗り切り緊急支援として2024年10月使用分を最後に終了しましたが、2025年1月使用分から電気・ガス料金負担軽減支援事業補助金として支援がはじまっています。
こちらの記事では、電気・ガス料金負担軽減支援事業補助金の概要と、これまでの補助金との比較、今後の見通しについて解説していきます。
2025年1月使用分からの「電気・ガス料金負担軽減支援事業補助金」とは
酷暑乗り切り緊急支援を経て一旦終了した補助金でしたが、終了から間も無い、11月22日に「国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策」が閣議決定され、2025年1月使用分から使用量に応じた電気・ガス料金の支援を行われることが決定しました。
閣議決定された経済対策では、以下のことが掲げられました。
”誰一人取り残されない形で、成長型経済へ移行することに道筋をつけるため、継続する物価高の中、様々な事情によって働けない方々を含め、厳しい状況に置かれている方々を対象とし、当面の支援措置を講じる”
この経済制作の具体的な施策の1つとして、物価高により厳しい状況にある生活者を支援するため、家庭の電力使用量の最も大きい時期である1月から3月の冬期の電気・ガス代を支援することとされました。
支援内容は以下の通りになっています。
1月・2月使用分について、電気は使用量に対して低圧 2.5円/kWh、高圧 1.3円/kWh を乗じた額、ガスは使用量に対して 10円/㎥を乗じた額を助成する。3月使用分について、電気は使用量に対して低圧 1.3円/kWh、高圧 0.7円/kWh を乗じた額、ガスは使用量に対して5円/㎥を乗じた額を助成する。
この支援は、国から電力・都市ガスの小売事業者などに値引き原資を支援し、利用者となる家庭や企業などの請求料金に還元される仕組みとなっており、利用者側からの申請は不要で享受できるものとなっています。
これまでの電気代・ガス補助事業
電気・ガス激変緩和事業
電気・ガス激変緩和事業とは、エネルギー価格の高騰によって厳しい状況にある家庭や企業の負担を軽減するため、令和4年度第2次補正予算「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」として3兆円以上を計上して実施された補助事業です。
開始当時は、2023年1月使用分から9月使用分までの補助期間とされていましたが、終了月となる9月に補助期間を2023年の12月使用分までの延長、その後11月の「デフレ完全脱却のための総合経済対策」の中で2024年5月使用分までの補助の延長が決定しました。
段階的な縮小を続けながらも、1年以上補助を続け、エネルギー価格の高騰が落ち着いたことを背景に終了しました。
酷暑乗り切り緊急支援
酷暑乗り切り緊急支援とは、物価水準が高止まりする中で、家庭や企業を支援する経済対策のうちの1つで、電気代と都市ガス料金を支援する施策です。
長く続いた電気・ガス激変緩和事業が終了した後の、6月に当時の岸田首相が以下のように言及したことをきっかけに再度実施されました。
まず、第一段の対策としては、地方経済や低所得世帯に即効性の高いエネルギー補助を速やかに実施いたします。まず、燃油激変緩和措置は、年内に限り継続することといたします。
そして、酷暑、暑い夏を乗り切るための緊急支援、「酷暑乗り切り緊急支援」として、8月・9月・10月分、3か月について、電気・ガス料金補助を行います。
名称にも打ち出しているように、酷暑、暑い夏を乗り切るための緊急支援が目的となっていたこともあり、延長などは行われず、実施期間は2024年8月使用分から10月使用分までで終了しました。
補助額の比較
以下の表では、今までの「電気・ガス激変緩和事業」「酷暑乗り切り緊急支援策」での支援金額をまとめています。
適用期間 | 電気(低圧) | 電気(高圧) | 都市ガス |
---|---|---|---|
令和5年1月〜令和5年8月使用分 | 7.0円/kWh | 3.5円/kWh | 30円/㎥ |
令和5年9月〜令和6年4月使用分 | 3.5円/kWh | 1.8円/kWh | 15円/㎥ |
令和6年5月使用分 | 1.8円/kWh | 0.9円/kWh | 7.5円/㎥ |
令和6年8,9月使用分 | 4.0円/kWh | 2.0円/kWh | 17.5円/㎥ |
令和6年10月使用分 | 2.5円/kWh | 1.3円/kWh | 10.0円/㎥ |
令和7年1,2月使用分 | 2.5円/kWh | 1.3円/kWh | 5.0円/㎥ |
令和7年3月使用分 | 1.3円/kWh | 0.7円/kWh | 10.0円/㎥ |
値引き額については、ご契約のプランによっては、値引き金額が異なる場合があります。詳細については、各社HP等をご参照ください。
家計への影響
各家庭や企業の値引き額は、それぞれの使用量によって異なります。詳細な金額については、月々のご利用明細や検針表などに記載されている「当該月の使用量(電気の場合はkWh、都市ガスの場合は㎥)」と値引き単価を掛け算することで算出することができます。
日本における一般的な世帯構成別の月平均電気使用量の目安は以下の通りです。それぞれの世帯別平均使用量に応じた補助額についても併せて記載しています。
2025年1,2月使用分の補助額
世帯 | 電気使用量 | 補助金額 |
---|---|---|
1人暮らし | 150kWh~250kWh | 375円~625円 |
2人暮らし | 250kWh~350kWh | 325円~455円 |
4人暮らし | 400kWh~500kWh | 520円~650円 |
3月使用分は補助額も半額になるため、効果も半分程度になることが予想されます。
こちらで示した表は、平均的な電気使用量を元に算出しており、暖房の使用頻度によっては平均より使用量が増加する可能性もあります。利用料に応じて値引きが行われるため、そうした場合補助額も増えていきます。
より詳しい電気料金のシミュレーションについては、各電力会社や料金比較サイトで確認することをおすすめします。
セレクトラ・ジャパンの電気料金シミュレーターは、郵便番号と使用量を入力するだけで、自分に合った最適な料金プランを見つけることができます。
3月以降も継続することはあるのか
電気・ガス料金負担軽減支援事業補助金は、3月使用分を期限として終了が予定されています。以前の酷暑乗り切り緊急支援策も、延長が行われずに終了したことから、今回も期限通り終了されることが予想されます。
また支援事業が行われるとすれば、電気使用量が再び増える夏頃の使用分を支援する事業が可能性としては考えられそうです。しかし、支援額が段階的に引き下げが行われ、10月使用分に至っては、高圧料金は1円を割り始めてきたことも加味するとインパクトの大きな補助は行われないことが予想されます。
上昇を続ける再エネ賦課金と不安定な燃料費調整単価
電気料金は、大きく分けて、基本料金・電力量料金・再エネ賦課金の3つの要素をもとに試算されます。燃料費調整単価は電力量料金に含まれますが、この燃料調整単価が電気料金を不安定にさせる要因の1つでもあります。そもそも電気料金はどのように決定されているのでしょうか?
基本料金は、契約容量に応じて毎月一定の金額として支払う料金になります。契約容量は家庭に用いられる低圧電力の場合はA(アンペア)で表されることが多く、企業などに用いられる高圧電力の場合はkWで表されます。この基本料金は電気を契約している限り、電気を使った、使っていないに関わらず支払う料金となっています。
電力量料金は、使用電力に応じて変化する金額で使った分支払う金額になります。従量料金(kWh)×料金単価(円)によって計算されます。従量料金に含まれる燃料費調整単価は、火力発電に必要な燃料費の基準価格より上回っている場合は、単価に加算され、下回っている場合は、単価から引かれる仕組みとなっています。2021年から新型コロナウイルスからの復興で、エネルギー価格は上昇を続け、ロシアのウクライナ侵攻により、高騰したことで燃料費調整単価が基準価格を大きく上回り料金単価に加算される結果となりました。
再エネ賦課金とは、再生可能エネルギー固定価格買取制度によって発生した費用を、電気を利用する全員で負担するものです。使用した電力量に合わせて再エネ賦課金単価を加えた金額が、再エネ賦課金となります。再エネ賦課金は年々高騰を続け、2023年度は一時落ち着きましたが、2024年は再び値上がりし、史上最高値の3.49円/kWhを記録しました。
なぜ電気料金は不安定なのか
電気料金は、2021年末に卸電力市場の市場価格の高騰による値上がりに端を発し、円安や世界情勢の変化、燃料価格の高騰の影響を大いに受けました。これによって企業や家計に留まらず、新電力会社の倒産に発展する事態となりました。
なぜ、電気代は不安定なのでしょうか。
その理由は日本のエネルギー構造にあります。
以下のグラフは2022年度の日本の電源構成を表しています。
日本の電源構成のうち、約7割が火力発電(天然ガス・石炭・石油)に依存しています。この火力発電の燃料となる天然ガス・石炭・石油の9割以上を海外からの輸入に頼っています。
こうしたエネルギー構造から、世界情勢による燃料価格の高騰や、円安による影響が電気代に転嫁される状態となっています。
電気代の高止まりは今後も続くのか
電気代は今後も高止まりする可能性が高いでしょう。電気代が落ち着くためには、内的要因か外的要因のどちらか一方でも好転する必要があります。
内的要因としては、日本の電源構成における火力発電の割合を減らし、燃料価格に左右されにくい電源構成に転換することが必要となります。日本は2050年カーボンニュートラル宣言を掲げたことで、企業も脱炭素に向けて再生可能エネルギーを導入や、再エネ電力の購入、カーボンオフセットによる脱炭素に向けた取り組みが行われていますが、根幹の電源構成の転換には時間がかかることが予想されます。
外的要因としては、燃料価格の低下や円安の解消による燃料費調整単価のマイナス調整による従量料金の低下ですが、こちらも長引くことが予想されます。
まとめ
2025年1月使用分からはじまった電気・ガス料金負担軽減支援事業補助金は、3月使用分まで適用されます。3月使用分以降の延長されるかは未定となっていますが、延長される見込みは低いと言えます。
日本の根本的なエネルギー構造の解決に向けた施策も今後より増えていくことが予想されます。既に長期脱炭素電源オークションが開始されていたり、脱炭素の実現とエネルギー構造の転換に向けた制度が進行し、脱炭素はより一層加速していきます。
そのほかにも、企業による蓄電池の導入や太陽光発電の導入には、環境省を始めとして多くの補助事業が拡充しています。
電気代の高止まりが続くことが予想される中で、企業ができることは使用する電力を削減する省エネのほかに、太陽光発電を導入することで電気を自分たちで作る方法があります。自社の屋根や敷地内に太陽光発電を設置して、発電した電力を自社で使用することで、電気代の削減に加えて再生可能エネルギーを得ることができます。
脱炭素に取り組むことが、企業の経営課題と捉える企業も増加しており、取引先からの要望や、企業の社会的責任として脱炭素に取り組むことで優位性の獲得につながります。
こちらのページでは、電気の再エネ化に貢献する太陽光発電の導入費用を、簡単にシミュレーションすることができます。電話番号の入力は不要ですので、まずは費用感を知りたいなど、情報収集の1つにいかがでしょうか。
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