2023年1月から!電気代を支援する政府の補助内容とは?
ブログ 更新日: 2023.09.21

電気代の高騰が続いています。電気を供給する側の大手電力会社全10社において規制料金の燃料費調整額が上限に到達した状態が続き、上限以上の分を各電力会社が負担する逆ざや状態に陥っています。毎月のように赤字を計上している電力会社もある中、10社のうち既に6社から家庭向け電気料金の値上げが経済産業省へ申請されています。これを受けて政府は、10月28日の臨時国会において「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」を閣議決定し、家計や企業に向けた負担軽減対策の実施を決定しました。
今回の記事では、閣議決定された「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」の電気代の負担軽減策「電気・ガス価格激変緩和対策事業」により電気代の補助の対象はなにか、どれくらい安くなるのか、今後の電気代はどうなるのかについて解説します。
電気・ガス価格激変緩和対策事業とは
政府は、令和4年度第2次補正予算「物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策」として3兆円以上を計上し、エネルギー価格の高騰によって厳しい状況にある家庭や企業の負担を軽減するため、令和5年1月の使用分から、電気・ガス料金の補助を行うことを決定しました。
電気・ガス価格激変緩和対策事業は、国が値引き原資を電力・都市ガスの小売事業者などへ補助することで、家庭や企業などの利用者の請求料金を値引きし直接的に負担を軽減します。
目的
近年の世界的な燃料価格高騰や円安の影響により、エネルギー価格の高騰が続き、都市ガス代、電気代ともに値上げが続いています。電気・ガスといった光熱費の値上げは、家計や企業の業績を圧迫し、国民生活・事業活動に大きな影響を及ぼすなどの経済的な悪影響が危惧されます。
こうした状況に対する負担軽減策として、電気・ガス価格激変緩和対策事業が発表されました。特に家庭の電気使用量が増加する冬季から令和5年度前半にかけて、継続的に値下げ支援が行われます。
一部補助の対象外もある
契約プランに関わらず、ほとんどの利用者が値引きを受けることができます。
電力会社と契約していれば、法人、個人問わず低圧から高圧受電まで契約している方が使用量に応じて値引きを受けることができます。
しかし、電気代においては特別高圧の契約形態である場合、ガス代においては年間契約量が1,000万㎥以上は補助の対象外となります。
詳細は契約先の電力会社にご確認ください。
手続きは不要
電気・ガス価格激変緩和対策事業は、電力・都市ガスの小売事業者などが、国に申請を行い料金の値引きを実施するもので、電気やガスを利用する家庭や事業所では手続き等は必要ありません。
ただし、支援の対象となるのは「電気・ガス価格激変緩和対策事業」の申請手続きを行い、採択された電力・都市ガスの小売業者などです。利用している事業者が支援の採択を受けているかは、各事業者のウェブサイトや経済産業省資源エネルギー庁の電気・ガス価格激変緩和対策事業サイトなどで確認してください。
参照:経済産業省資源エネルギー庁
電気代・ガス代の値引き金額
では、家庭や企業が支払う電気代やガス代は、具体的にはどれくらい値引きされるのでしょうか。次は値引き金額の目安や確認方法について見ていきましょう。
「電気・ガス価格激変緩和対策事業」による補助金額は、電気とガスで値引き額が異なります。2023年9月使用分だけ補助額が半減されるので注意が必要です。
以下の単価に使用量(電気の場合はkWh、都市ガスの場合は㎥)を掛けた金額が実際の値引き額です。ご家庭や企業などに届く2023年1月使用分(2月請求分)以降の請求書や検針票、web明細でもご確認ください。
適用期間 | 電気(低圧) | 電気(高圧) | 都市ガス |
---|---|---|---|
令和5年1月使用分(2月検針分)から令和5年8月使用分(9月検針分) | 7.0円 | 3.5円 | 30円 |
令和5年9月使用分(10月検針分) | 3.5円 | 1.8円 | 15円 |
値引き額については電力・都市ガスの小売業者が電気料金や都市ガス料金の算定に用いる単価のため実際の値引き額とは異なる場合があります。
4人家族の月平均の電力使用量だと◯◯◯◯円の補助
電気や都市ガスの値引き額は使用量に応じて変わります。
電気代の計算方法は契約形態により異なりますが、月々の電気料金は、契約容量で決まる「基本料金」使用電力量に応じて変化する「電力量料金」に、「再エネ賦課金」を加えた合計となっています。このうち電力量料金に含まれている燃料調整額に値引き単価が反映されます。
一般的な従量制の電気料金形態ではなく、定額制を利用している場合は契約種別に値引き単価が設定されています。
値引きの反映は「基本料金」「電力量料金」等ではなく、燃料調整額に反映されます。基本料金等が値引きになるわけではありません。
4人家族の月平均の電気使用量の目安は400kWh、ガス使用量は30㎥といわれています。
この指標を基に当てはめてみると、2023年1月から8月まで電気代が月2,800円・ガス代が900円の補助額、2023年9月は電気代が1,400円・ガス代が450円が補助額となります。
電気代・ガス代の補助の延長は考えにくい
電気代・ガス代の補助は2023年1月使用分(2月検針分)から2023年9月使用分(10月)検針分)までとなっています。
閣議決定から2ヶ月後には電気料金の補助が出るということで、かなりのスピード実施といえますが、この経済対策には期間が決められており、9ヶ月間で支援が終了となってしまいます。
類似の施策として、2022年1月の経済対策の際に決定した「燃料油価格激変緩和対策事業」があります。こちらも2022年の1月から9月までの期間限定でガソリン価格の補助を行う予定でしたが、延長と拡充が繰り返され2023年9月末までの補助が決定しています。
電気料金の補助も状況によっては延長される可能性はありますが、すでに9月以降は縮小するという方針を定めているので、その可能性は低いとみていいでしょう。
電気代・ガス代の規制料金の値引きを行うために特例認可
現在、電力販売の契約数の約50%を占めている規制料金も「電気・ガス価格激変緩和対策事業」により小売事業者を通じて値下げされます。規制料金は経済産業大臣の認可を受けた、または経済産業大臣に届け出た供給約款などに従って設定されるため、値下げの実施には、定めとは異なる条件で供給を行うことの認可が必要です。小売電気事業者は令和4年12月7日付けで経済産業大臣へ申請を出し、これが認可されたことで電気事業者が、規制料金の値引きを行うことが可能となりました。
2023年の大手電力会社の規制料金値上げ情報
その値引きの認可を受けた規制料金ですが、電気料金の補助となる「電気・ガス価格激変緩和対策事業」が決定してから、わずか1ヶ月足らずで、大手電力会社10社のうちの5社が電気料金の規制上限の値上げの申請をしています。事前情報で申請を検討中としていた東京電力も、閣議決定から約3ヶ月後の2023年の1月に規制料金の値上げの申請を行いました。
各社がこの規制料金をどれだけ引き上げる申請を行ったのか、早速見てみましょう。
電力会社 | 契約種別 | 規制料金(現在) | 申請料金 | 値上げ幅 | 東北電力
従量電灯B 8,565円 11,282円 2,717円(1.32倍) |
中国電力
従量電灯A 8,029円 10,428円 2,399円(1.31倍) |
四国電力
従量電灯A 7,915円 10,120円 2,205円(1.28倍) |
沖縄電力
従量電灯 8,847円 12,320円 3,473円(1.39倍) |
北陸電力
従量電灯B 6,402円 9,098円 2,696円(1,42倍) |
東京電力
従量電灯B 9,126円 11,737円 2,611円(1,28倍) |
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電気代の上昇は続く見通し
電気代は今後も高騰することが予想されます。その背景には「ウクライナ情勢」「円安の継続」などが挙げられます。
ロシア軍のウクライナ侵攻と世界情勢の影響
ロシアは、LNGの輸出量で世界1位、原油や石炭も世界トップ3に入るほどの資源大国です。ロシア軍がウクライナへの軍事侵攻を開始して以降、経済制裁により輸出が制限されたことで、供給量が減少し価格が高騰する事態まで発展しています。
円安の影響
連日続いている円安は今後も継続することが予想されます。政府や日銀が9月末から10月末にかけて行った、為替介入も根本的な解決には至らず、歯止めがきかない現状が続いています。今後も日本とアメリカの間の金利差の拡大がさらに続く場合、日本が天然ガスや石炭を輸入する際の負担はますます増大していくことでしょう。
まとめ
2023年1月から政府による電気代の補助が始まりますが、大手電力会社の値上げが4月から始まります。
政府からの補助と大手電力の値上げを時系列でみていきましょう
- 2023年1月~3月は、政府からの補助により電気料金が値下がりします。
- 2023年4月~9月は、政府からの補助が継続していますが、大手電力会社の値上げが行われます。値上げ幅は政府の補助と同程度となるため横ばい、または微増となるでしょう。
- 2023年10月以降は、政府からの補助が終了となるので、2022年12月と比較して大きく値上がりとなります。
また、電気代の補助の対象外となっている特別高圧は2023年1月から3月も燃料調整額の煽りを受け値上がりが続き、2023年の4月から大きく値上がりすることが予想されます。
太陽光発電で電気代削減
最後に今後も高騰が続く電気代を削減する太陽光発電についてご紹介します。電気代の削減には、節電や省エネはもちろんですが、使う電気を作ってしまえばいいのです。
自家消費型太陽光発電を設置して発電した電気を自家消費すれば、その自家消費分は電力会社から電気を購入しないで済み、電気代を節約できます。蓄電池も併設すれば、昼間に使い切れなかった電力を貯めておき、夕方以降に放電することでさらに電気代を節約できるのでおすすめです。
電気代削減に関するご相談やご質問などございましたら、30分のショートミーティングを随時開催しておりますので、ちょっとしたことでもお気軽にご相談ください。ご検討状況をヒアリングしながら、弊社でお手伝いできそうなことをお話しできればと思います。
また、企業が導入する場合には、設備費を補助する補助金と節税に使える税制優遇制度が設けられています。補助金・税制優遇をまとめた資料も、以下から無料でダウンロードいただけます。