水銀灯製造禁止!2021年から始まった「水俣条約」とは?
脱炭素 更新日: 2023.01.25
水俣条約とは
経済産業省では、水俣条約を以下のように説明しています。
水銀に関する水俣条約は、水銀及び水銀化合物の人為的な排出から人の健康及び環境を保護する目的で、水銀の採掘、貿易、製品や製造プロセスへの使用、排出等の規制を包括的に定めた国際条約です。
つまり、人の健康に害を及ぼす水銀に対して、採掘、使用、排出において規制する条約です。
条約採択までの経緯
2001年 | 国連環境計画(UNEP)が地球規模の水銀汚染に係る活動を開始。 |
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2002年 | 人への影響や汚染実態をまとめた報告書(世界水銀アセスメント)を公表。 |
2009年2月 | 第25回UNEP管理理事会が開催 水銀によるリスク削減のための法的拘束力のある文書(条約)を制定しそのための政府間交渉委員会(INC : Intergovernmental Negotiating Committee)を設置。 |
2010年 | 第1回政府間交渉委員会(INC1)が開催 2013年までにとりまとめを目指すことで合意。 |
2013年1月 | 第5回政府間交渉委員会(INC5)が開催 国際的な水銀条約に関する条文案が合意され、条約の名称が「水銀に関する水俣条約」に決定。 |
2013年10月 | 熊本市及び水俣市で水銀に関する水俣条約の外交会議及びその準備会合が10月7日から11日まで開催 60か国以上の閣僚級を含む約140か国・地域の政府関係者の他、国際機関、NGO等、1,000人以上が出席し、水銀に関する水俣条約が全会一致で採択され、92か国(含むEU)が条約へ署名。 |
2017年8月16日 | 水銀に関する水俣条約が発効。 |
世界水銀アセスメントについて
人への影響や汚染実態をまとめた報告書の世界水銀アセスメントでは主に以下のような報告がされました。
- 水銀は様々な排出源から様々な形態で環境に排出され、分解されず、全世界を循環。メチル水銀は生物に蓄積しやすい。
- 人への毒性が強く、特に発達途上(胎児、新生児、小児)の神経系に有害。食物連鎖により野生生物へも影響する。
- 先進国では使用量が減っているが、途上国では依然利用され、リスクが高い。
- 自然発生源もあるが、人為的排出が大気中の水銀濃度や堆積速度を高めている。
- 世界的な取り組みにより、人為的な排出の削減・根絶が必要。
参照:http://www.env.go.jp/chemi/tmms/convention/treaty_outline.pdf
参照:https://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h28/img/fd1_3_5_1_01.gif
水俣条約の内容
前文
水銀のリスクに対する認識や国際的な水銀対策の推進の必要性、水銀対策を進める際の基本的な考え方について記載。
水俣病の教訓として、水銀汚染による人の健康及び環境への深刻な影響、水銀の適切な管理確保の必要性及び同様の公害の再発防止を記載。(日本の提案を受け記載)
リオ原則を再確認。(汚染者負担原則及び予防的アプローチがリオ原則の中に含まれている。)
水俣条約の目的
水銀及び水銀化合物の人為的な排出から人の健康及び環境を保護すること。
規制内容
- 水銀採掘、水銀等の使用禁止
- 輸出入の規制
- 水銀使用製品の製造規制等
- 水銀等の貯蔵
- 大気への排出の規制
- 土壌・水への放出の規制
- 廃棄物の管理
参照:http://www.env.go.jp/press/uplode/upfile/100686/26422.pdf
水銀灯は2021年から製造中止
2020年12月31日以降、水銀灯の製造・輸出入が禁止され、水銀に関する規制が2021年1月1日から実施されています。
- 一般照明用の高圧水銀ランプは、2021年から製造・輸出・輸入を禁止。
水銀条約による規制は製造・輸出入を禁止するもので、現在ご使用中のランプはそのまま利用することが可能です。 - 全面禁止の対象は高圧水銀ランプです。
※メタルハライドランプ、セラミックメタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプ、特殊用途ランプ(紫外線ランプなど)は規制対象外です。 - 蛍光ランプは、水銀封入量を規制。水銀封入量が規制値(5~10mg)以下の蛍光ランプは引き続き製造・販売が可能です。
規制品について詳しくはコチラをご覧ください。
https://www.env.go.jp/chemi/tmms/taiougijutsukento/list.pdf
水銀灯自体は2021年以降も使用し続けることは可能です。しかし、ランプが切れた際に交換用ランプが手に入らなくなってしまいます。
水銀灯からLED照明への早めの切り替えをお勧めします。
蛍光灯はどうなる?
価格や色合いを理由に白熱電球を使う消費者がいることから蛍光灯は禁止されません。
政府としては、消費者に対して「蛍光灯の使用を禁止」を強制的にするものではなく、LEDを含む照明でまとめて省エネ基準を作り、照明の省エネ性能を向上させたいとの考えです。
蛍光灯や白熱電球などの種類を問わず、省エネ性能が高まるようにしよう、というのがねらいです。
しかし、蛍光灯の照明器具は多くのメーカーが生産を終了しています。
- Panasonic 2019年3月に全ての蛍光灯照明器具の生産終了
- 三菱電機 2019年3月に全ての蛍光灯照明器具の生産終了
- 岩崎電気 2018年9月に全ての蛍光灯照明器具の生産終了
- 東芝 2017年3月に全ての蛍光灯照明器具の生産終了
また、蛍光ランプの生産についても一部のメーカーで生産が終了しつつあります。
蛍光管が今も出荷されているとはいえ、生産量は年々減少しつつあります。
先のことを考えると今のうちにLEDへと切り替えることをオススメします。
また、LEDは蛍光灯よりも価格が高いため、導入をためらっている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、同じくらいの明るさを照らすのに、LEDの方が蛍光灯よりも消費電力が少ないため電気代の節約になります。
また、LEDの方が寿命が長いので、蛍光灯と比べて交換の手間と費用がかかりません。
蛍光灯の寿命はどんなに長くても13,000時間程度に対して、LEDは40,000時間ほどとその差は歴然です。
参照:https://www.env.go.jp/press/files/jp/20144.pdf
エネルギーマネジメントの必要性
昨今では企業において、電気の効率的な利用による省エネだけでなく、環境に配慮した経営が重要視されています。
エネルギーマネジメントとは工場や倉庫・施設・店舗・事業所などで使用するエネルギーの「創る」「蓄える」「使う」を有機的に連携させ、効率的にエネルギーを利用することを指します。
具体的には年間のエネルギー使用量やデマンド値(瞬間最大電力値)を把握し、太陽光発電や蓄電池などの導入で電気代を削減する省エネを実現します。
近年はRE100やESG投資、SDGs促進の一環として取り組む企業も増え、エネルギーマネジメントを通して省エネだけでなく、顧客の持続可能性に貢献します。
電気の効率的な利用には省エネだけでなく、電気を使わないことが一番です。
太陽光発電を取り入れることで、電気の使用量を減らすだけでなく、売電収入を得ることができます。
経済産業省の資料によると、平均的には住宅用太陽光発電がつくった電気のうち、自家消費されるのは約3割、売電が約7割です。
つまり、太陽光発電を設置することによって収入を得られるということになります。
太陽光発電の導入にも補助金や優遇税制があります。
今後の環境に配慮した経営、脱炭素経営に向けて太陽光発電の導入を検討してみてはいかがでしょうか?