PPAモデルとは?太陽光発電を0円で導入する仕組みやメリットを解説
太陽光発電 更新日: 2022.11.09
「PPA」という単語を見聞きしたことはございますでしょうか?
初期費用、ランニングコストがともに0円で太陽光発電システムを導入できる「PPAモデル」で知られ、0円設置と聞くと家庭での導入を想像されるかもしれません。最近は企業においてもPPAを活用して、自家消費目的の太陽光発電システムを導入したり発電した電気を購入したりする取り組みが広がっています。
本記事では、PPAモデルの仕組みやメリット、デメリット、どのような注意点があるのか解説します。
以下では、PPAモデルの実態を紹介する動画をご視聴いただけます。ぜひ、PPAモデルを活用した太陽光発電の導入検討のご参考にしてみてください。
PPAとは?太陽光発電システムが0円で導入できる仕組み
PPAとは「Power Purchase Agreement」の略で、日本語での直訳は「電力購入契約」です。また、発電事業者側から見た場合は「電力販売契約」とも訳されます。
電力を購入または販売するための契約で、かつては電力会社と発電事業者間の電力の卸売り契約を指す意味合いが一般的でした。最近は企業が需要家となって直接電力を調達するコーポレートPPAの概念が海外から輸入され、日本でも広まってきています。
同じPPAでも前者と後者では意味合いが異なるため、現在企業を中心として広まっている後者のPPAをコーポレートPPAまたは第三者所有モデルと呼び区別しています。
企業が需要家となるコーポレートPPA(第三者所有モデル)がどのような仕組みか、詳しく見ていきましょう。
PPAモデルの仕組み
PPAモデルは、電力の自家消費を希望する需要家に対して、第三者であるPPA事業者が太陽光発電システムやその電力を提供する仕組みです。
以下の図は、工場や事務所の屋根にPPAモデルで太陽光発電設備を導入する場合のスキームを表現しています。
「需要家」は「PPA事業者」とPPAを締結し、「PPA事業者」から太陽光発電システムの設置と設置後のメンテナンスを受けます。この際「需要家」に、システムとメンテナンスの費用は発生しません。そのため、PPAモデルを活用すると「需要家は」0円で太陽光発電システムが導入できます。
「需要家」は太陽光発電由来の電力を使いながら、不足する分はこれまで通り電力会社から購入します。
「PPA事業者」は「需要家」に提供する太陽光発電システムの設置とメンテナンスの代金を、「需要家」から毎月の電気料金の支払いで回収します。
PPAで太陽光発電システムを導入する場合、設置場所が自社の工場の屋根であっても、その所有者はあくまで相手方(ここでは発電事業者である「当社」)であるため第三者所有モデルとも呼ばれる所以です。自社で所有しないため償却資産税もかかりません。
PPA事業者とは?
PPA事業者とは太陽光発電システムを所有する発電事業者を指します。PPA事業者には金融機関や小売電気事業者、太陽光発電設置業者などさまざまな業界からの算入があります。
本来の意味でのPPA事業者は、電力会社に電力を供給する発電事業者のことを指していました。第三者所有モデルのPPAが広まってきたことで、意味が混在しややこしくなっています。
太陽光発電のPPAモデルの種類と比較
太陽光発電のPPAモデルには、その契約形態や利用方法によって大きく2つの種類分かれます。
- オンサイトPPA
- オフサイトPPA
それぞれがどのような仕組みか、順に見ていきましょう。
オンサイトPPA
以下の図で表す仕組みがオンサイトPPAで、ここまで解説してきたPPAです。
自社の所有物である屋根や敷地にPPAを活用して太陽光発電システムを導入します。PPAの中では最もイメージしやすいスキームで、現在の日本における主流のPPAです。なお「オンサイト」とは「現地で・現場で」という意味合いです。
オンサイトPPAについては、以下のコラムでもオフサイトPPAとの違いに触れながら詳しく解説しています。どうぞ併せてご参考ください。
オフサイトPPA
オフサイトPPAとは、物理的に自社の敷地と近接していない遠隔地に太陽光発電システムを設置し、発電された電気を電力会社の送電網を通して需要場所に供給する仕組みです。太陽光発電設備の所有権はPPA事業者にあり、事業者と需要家の基本的な関係はオンサイトPPAと同様です。「オフサイト」とは「現地から離れた場所・遠隔地」を指します。
オフサイトPPAは複数の企業が参画し、異なる発電所で発電された電気をいくつかの需要場所へ供給することが可能です。FITからFIPへの移行期にある日本において、柔軟に再生可能エネルギーを供給・調達する仕組みとしてオフサイトPPAの注目度は増しています。
オフサイトPPAは自己託送ともよく比較されます。違いやメリット・デメリットは以下のコラムでも解説していますので、ぜひ併せてご参考ください。
フィジカルPPA
昨今のカーボンニュートラル、企業の環境志向を受けて、太陽光発電などの再生可能エネルギーで発電される電気を「電力」と「環境価値」の2つに分けて考え、それぞれ別に取引するビジネスモデルが生まれています。
フィジカルPPAはこの2つの価値を分けず、PPA事業者から需要家に「電力」も「環境価値」も提供する仕組みです。
オンサイトPPAは基本的にこのフィジカルPPAで提供されます。オフサイトPPAはPPA事業者との契約内容によって電力と環境価値双方、電力のみ、環境価値のみの3パターンがあり、この内、双方を提供する契約形態のみフィジカルPPAとされます。
バーチャルPPA
バーチャルPPAは再生可能エネルギーの電気のうち「環境価値」のみを切り離して取引するビジネスモデルです。FITを活用していない再生可能エネルギー由来の電気である「非FIT非化石証書(再エネ指定)」として取引され、需要家は従前の電力会社を変更することなく、事業者から直接購入することによって自社のCO₂排出量をカーボンフリーにできます。
アメリカでは環境志向の高い大企業が複数参画した契約が締結されるなど盛んですが、日本では法整備や事例が不十分であったため実施されてきませんでしたが、近年になって少しずつ活用する企業が現れてきています。
(参考)花王、国内最大規模のバーチャルPPAを締結|PR TIMES
PPAスキームの比較
オンサイトPPAとオフサイトPPAの仕組みには、以下の比較表のような違いがあります。
オンサイトPPA | オフサイトPPA | ||
フィジカルPPA | バーチャルPPA | ||
設備の設置場所 | 需要場所の敷地内 | 需要場所の敷地外・遠隔地 | |
電力の供給方法 | 直接(系統接続無し) | 系統経由 | 電力供給無し |
取引価格 | 契約価格で固定 | 契約価格で固定 | 契約価格と市場価格により変動 |
託送料金の有無 | 無し | 有り | 無し |
環境価値の所有者 | 需要家 |
太陽光発電のPPAモデルの5つのメリット
第三者所有型のPPAモデルの理解が深まったところで、PPAモデルを活用して太陽光発電システムを導入するメリットを5つご紹介します。
【3つの“0”】初期費用・ランニングコスト・償却資産税
PPAの最大のメリットは初期費用・ランニングコストがともに0円で、太陽光発電システムを設置できるという点です。初期投資費用だけでなく、設置後のメンテナンスもPPA事業者が無償で行います。また、太陽光発電システムはPPA事業者が所有しているため、需要家である企業は資産計上する必要がなく償却資産税が発生しないこともメリットです。
以下で紹介する4つのメリットを無償で得られる点も見逃せません。
電気代削減効果が期待できる
PPAで導入する太陽光発電システムは自家消費型太陽光発電が前提となります。システムはPPA事業者の所有物ですが、発電した電気は自社の事務所や工場などで自家消費が可能です。太陽光発電システムで発電する電気は、電力会社から購入するよりも安く調達できるケースが多いので、自家消費する電力量が多ければ多いほど電気代を削減できます。
自家消費とはつまり電力会社から電気を購入しないということですので、自家消費した分だけ再エネ賦課金も削減できます。
自家消費分だけでは電力が足りない場合はこれまで通りの電力会社から購入するか、あるいはPPA事業者が別途提供している場合もあり、料金が比較的安く設定されているプランも選択できます。
PPAを活用すれば太陽光発電の安い電気、再エネ賦課金の削減、新電力の安い電気の3つで電気代削減効果が期待できます。
補助金が活用できる
PPAを利用した太陽光発電システムまた蓄電池の導入には、環境省と経済産業省から補助金が用意されています。以下はその一例です。
ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業
通称ストレージパリティ補助金と呼ばれ、環境省から出ている補助金です。オンサイトPPAが対象で、太陽光発電システムと蓄電池の導入費用を補助します。
補助対象設備 | ①自家消費型太陽光発電システム ②産業用蓄電池 ③家庭用蓄電池 ④車載型蓄電池 ⑤充放電設備 ⑥その他、補助対象設備の運用に直接必要な付帯設備等 |
補助額・補助率 | ① ・4万円/kW・・・自己所有 ・5万円/kW・・・PPA・リース ・7万円/kW・・・戸建住宅 ②4万円/kW ③4.5万円/kW ④蓄電池容量(kWh)1/2×4万円 ⑤1/2 |
補助上限額 | ①:2,000万円 ②~⑤:1,000万円 合計:3,000万円 |
需要家主導型太陽光発電導入促進事業
経済産業省から出ているオフサイトPPAを対象とする補助事業です。
補助対象経費 | 太陽光発電設備および併設の蓄電池における以下の費用
設計費・設備購入費・土地造成費・工事費・接続費 |
補助額・補助率 | ・自治体連携型以外(民間団体・企業)・・・1/3あるいは1/2 ・自治体連携型(地方公共団体・企業)・・・2/3 ※蓄電池に係る経費:1/3 |
補助上限額 | なし |
脱炭素・再エネ化できる
脱炭素・カーボンニュートラルは昨今のビジネスの潮流で、企業においてもエネルギー消費の脱炭素化が求められています。太陽光発電は発電時にCO2を排出しない再生可能エネルギーであり、太陽光発電システムで発電した電気を自家消費することで、自家消費した分だけ脱炭素化を実現できます。
RE100、RE Actionなどのイニシアチブの要件にも適合しており、近年、PPAを活用して再生可能エネルギーを調達する加盟企業が増加しています。
BCP整備・災害対策ができる
近年の異常気象による災害は企業にとって無視できない脅威であり、2021年の世界全体での自然災害の被害は総額約29兆、前年比で24%も増加したと報告されています。一企業単位でも、数時間の停電で数千万もの損害を被ったという事例もあり、自然災害が企業の存続に与える影響は日に日に増大しています。
太陽光発電システムがあれば停電時でも電気が使え、社員・家族の安否確認、情報収集、データのバックアップ、主要事業の最低限の維持が可能です。蓄電池も併せて設置することで、夜間でも電気を使えるだけでなく、緊急時の対応を定めるBCPの計画性をより強化できるでしょう。
以下では、PPAモデルを活用して導入する自家消費型太陽光発電システムの資料をダウンロードいただけます。ぜひ、PPAモデルを活用した太陽光発電の導入検討の参考にしてみてください。
太陽光発電のPPAモデルの4つのデメリット・注意点
メリットに続き、PPAモデルのデメリット・注意点を4つご紹介します。
与信調査が行われる
PPAでは太陽光発電システムの設備費用をPPA事業者が持つことから、需要家がPPAを問題なく履行できるかの与信調査が行われます。PPA事業者にとっては、期間中に需要家となる企業が倒産してしまったり資金繰りが厳しくなってしまったりすることで、設備代金の回収が困難になることを避けたい思惑があります。
与信調査の手法はPPA事業者によって異なり、比較的ハードルが高い事業者、低い事業者が存在するため、PPAを検討する際は1つの事業者だけでなく複数の事業者との交渉をおすすめします。
契約期間は長期になる傾向
PPAの契約期間はPPA事業者によって異なりますが、15〜20年と長期になる傾向にあります。長期となる理由は、PPA事業者が需要家の電力購入量に応じて設備代金を回収するためです。
需要家の電力購入量が多いほど設備代金の回収は早まるため、契約内容によっては多少短縮されるかもしれません。PPAは途中解約が基本的に不可能であり、需要家は契約前に期間中に期待される電気代削減効果やその他のメリットをよく検証する必要があります。
自社都合による設備の撤去はできない
PPAで提供される太陽光発電システムはPPA事業者の所有物であるため、需要家の一方的な都合による設備の撤去および解約は基本的にできません。屋根に設置する場合は、屋根の耐久度や葺き替え工事の予定がないかなどの確認を事前に済ませましょう。
契約満了後は自社メンテナンスが必要
PPAの契約期間終了後、PPA事業者が所有していた太陽光発電システムは需要家に無償で譲渡されるケースがあります。太陽光発電はPPA終了の20年以降も問題なく発電するシステムであり、無償譲渡後もPPA期間中と同様に電気代削減効果などが期待できます。
一方で、PPAの終了と同時にメンテナンスの契約も途切れるため、無償譲渡後のメンテナンスは自社で行うか、新たにメンテナンスの契約を締結する必要があります。
PPAモデル以外の太陽光発電を導入する仕組みと比較
太陽光発電を自社に導入する仕組みには、PPAモデル以外に以下2つの方法があります。
- 自己所有型
- リースモデル
それぞれの仕組みの詳細やPPAモデルとの違いを、順に見ていきましょう。
自己所有型
電力の需要家が自社で費用を負担し、自家消費型太陽光発電を導入する仕組みを「自己所有型」といいます。
自社で所有する太陽光発電設備のため、電力の自家消費に費用は発生しません。ただし、自社の責任で発電設備の維持管理が必要で、メンテナンス費が発生します。太陽光発電の電気よりも施設での消費電力が多い場合は、電力会社から購入します。反対に、余剰分の電力を電力会社に売電する選択肢もあるのが、自己所有型の仕組みです。
リースモデル
リース契約を締結した事業者が、電力の需要家の敷地内に設置する太陽光発電の電力を消費する仕組みが「リースモデル」です。
需要家は太陽光発電の電力の消費量にかかわらず、事前に取り決めたリース料金をリース事業者に支払います。発電した電気の余剰分は、需要家が売電できる場合があります。一般的に太陽光発電設備の維持管理は、リース事業者の責任で行われます。ただし、契約内容によるため、メンテナンスの実施者の確認が必要です。
PPAモデルと自己所有型とリースの比較
最後に、PPAを活用した場合と通常の自己所有、またはリースを使った場合の太陽光発電システムの導入を比較します。
オンサイトPPA | オフサイトPPA | 自己所有 | リース | |
費用 |
◎ 初期投資・維持管理ともに0円 |
△ 企業では最低でも1,000万円~ |
◯ 初期投資費用なし・月額料金制 |
|
電気代削減効果 |
△ 電気料金は他手法よりも割高 |
◎ 自家消費による削減だけでなく、電力の購入先も自由に選べ割安な電力会社を選択できる |
◯ 自家消費可能だが、電力会社は指定される可能性が高く、割高となる |
|
環境価値 |
◎ 需要家に付随 |
◯ 契約による。付随させる場合は料金が割高となる |
◎ 制約なく純粋に自己の価値として需要 |
◯ 契約による。付随させる場合は料金が割高となる |
補助金 |
◎ 複数の補助金で活用可 |
◯ 現状、需要家主導補助金のみ |
◯ ストレージパリティ補助金、ソーラーカーポートなど複数あり |
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節税 税制優遇 |
✕ 設備は自己所有物ではないため適用不可。反面、資産計上の手間がない |
◎ 100%即時償却または10%・7%税額控除のどちらかが利用可能。 |
◯ 契約内容によって自己所有型と同等の償却効果が適用できる場合がある。 |
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事業期間 |
△ 15〜20年超と長期。期間中の解約は基本的に不可 |
◎ 10年前後で投資回収が見込める。補助金と節税を活用すればさらに早まる |
◯ PPAほど長くならない可能性があるが、それでも10〜15年ほどが見込まれる |
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設備の交換・撤去 |
✕ 契約期間中の一方的な設備の交換、撤去は不可 |
◎ 自由に設備の更新や撤去が行える |
△ 契約内容による。基本的には不可のケースが多い |
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導入の容易さ |
△ 与信調査があり、優良企業とみなされる基準はPPA事業者によって異なる
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✕ 対応事業者が少なく、発電所ストックも限られる |
◯ 投資費用は高額となる可能性があるが、導入に制限はなく補助金と節税も活用できる |
△ PPAと同様に与信調査があり、希望するすべての企業が活用できるわけではない |
結局どの形態がおすすめ?
導入する需要家の経営状況や課題は企業それぞれであるので、一概にどれが最もおすすめとは言えませんが、PPA・自己所有型・リースの特徴をまとめると
- PPA:初期費用を抑えられる
- 自己所有:電気代削減効果と節税による実質的な経費削減効果が高い
- リース:PPAと自己所有の中間
と表現できます。
費用を抑えたい企業はPPA、実質的な経済効果と節税を得たい企業は自己所有、初期投資を抑えながらある程度の経済効果を期待したい企業はリースがおすすめと言えるかもしれません。いずれの方式を取っても、環境価値は基本的には需要家に帰属します。