【法人向け】自家消費型太陽光発電を解説|仕組みや導入のメリットを紹介
太陽光発電 更新日: 2024.05.07
電気代高騰による固定費削減や脱炭素化、BCP対策などの課題解決のため、自家消費型太陽光発電の導入を検討する法人が増加しています。法人の施設に太陽光発電を導入すると多くのメリットがありますが、デメリットを見落とすとせっかくの経済効果が薄れてしまいかねません。
本記事では自家消費型太陽光発電の導入を検討中の法人ご担当者様向けに、仕組みや導入するメリットと注意点を説明します。
自家消費型太陽光発電の全体像が分かる内容になっているので、ぜひ検討の参考にしてください。
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自家消費型太陽光発電の概要と仕組み
近年では様々な背景から、法人向けの太陽光発電は自家消費が主流になっています。2020年までに新設された自家消費を前提とする屋根設置タイプの事業用太陽光発電の自家消費率は17%程度で推移していましたが、2021年以降は40%を超えている状況です。
自家消費型太陽光発電を導入する法人が増えている背景や、仕組みを見ていきましょう。
概要と背景
発電設備を自社に導入し、生み出された電気を施設で利用する仕組みを自家消費型太陽光発電と言います。法人向け自家消費型太陽光発電が注目されている理由は、以下の3つです。
- 電気代が高騰している
- FIT価格が低く自家消費の経済性が高くなっている
- 脱炭素社会の実現に貢献するため
世界情勢の変化や輸入燃料費の高騰で、電気料金が高い水準で推移しています。FIT制度による電力の買取価格が低く、売電よりも自家消費のほうが経済的なメリットが大きい状況です。日本では2050年までのカーボンニュートラル実現を宣言しており、CO₂削減が急務となっている中、中小企業の脱炭素化が重要になっています。
仕組み
太陽光発電システムは主に以下の機器で構成されており、ケーブルで接続して発電できる状態にします。
- 太陽光パネル
- パワーコンディショナ
- 分電盤
太陽光パネルで発電した状態の電気は直流で、そのままでは自家消費できない種類の電流です。パワーコンディショナで交流電流に変換し、分電盤を経由して施設に電気が供給されるのが自家消費型太陽光発電の基本的な仕組みです。
自家消費型太陽光発電の種類
自家消費型太陽光発電には、以下2つの種類があります。
- 全量自家消費型
- 余剰売電型
それぞれがどのような仕組みか、順に見ていきましょう。
全量自家消費型
余剰売電せず発電した電気を全て自社の施設で利用するのが、全量自家消費型の太陽光発電です。
定置用蓄電池と併用すれば消費しきれなかった電気を蓄電でき、太陽光発電からの電力消費を増やすことで電気の自家消費率を高められます。蓄電池を設置しなくても日中の消費電力量が多い法人は、太陽光発電の導入で十分な電気代削減の経済効果が期待できます。
余剰売電型
太陽光発電では自家消費した余剰電力で売電収入を得られます。
発電量に対して電力消費量が少ない事業所などは、余剰売電の選択肢もあります。ただし固定価格買取制度によるFIT価格は以前より下がっており、さらに電力会社の電気料金が上がっていることから経済的なメリットが少ない状況です。余剰売電する場合は、シミュレーションで収支を徹底的にチェックした上での導入をおすすめします。
自家消費型太陽光発電を法人が導入するメリット
法人が自家消費型太陽光発電を設置することで、様々なメリットを得られます。個人宅への太陽光発電導入でも同じようにメリットがありますが、自家消費型太陽光発電は法人が得られるメリットが大きい状況です。どのような利点があるのか、ポイントを1つずつ説明します。
補助金制度が充実している
政府や自治体による補助金事業の豊富な点が、法人向け自家消費型太陽光発電のメリットです。
日本は2030年度までに2013年度比で46%のCO₂削減することを目標にしており、さらに2050年までのカーボンニュートラル実現を宣言しています。この背景から脱炭素を推進するための補助金事業に多くの予算が回されています。
初期費用が高額で太陽光発電の導入に踏み切れなかった企業も、補助金を利用して自家消費型太陽光発電による脱炭素化に取り組みやすくなっている状況です。
2024年度に自家消費型太陽光発電の導入に利用できる補助金制度を、抜粋して紹介します。
補助金制度 | 対象機器と補助金額 |
ストレージパリティ補助金 | ①自家消費型太陽光発電
・自己所有:4万円/kW ・PPAまたはリース:5万円/kW ②蓄電池 ・産業用:4万円/kWh ・家庭用:4.5万円/kWh ※蓄電池との併用が必須 |
ソーラーカーポート補助金 | ・太陽光発電一体型カーポート
・太陽光発電搭載型カーポート ・定置用蓄電池 要件を満たしている場合に、初期費用合計の1/3を補助 |
(参照)民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業|環境省
補助金事業は、地方自治体でも実施しています。2023年度に自家消費型太陽光発電向けの補助金があった場合は、2024年度も実施される可能性が高いと言えます。
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電気代の削減効果が得られる
自家消費型太陽光発電システムを導入して電気を自家消費すれば購入する電力量が減り、電気代を削減できます。
契約電力が高圧250kVAの製造工場に発電容量250kWの自家消費型太陽光発電を導入した場合に、電力会社から購入する電気料金単価を18円/kWhと仮定すると、年間で520万円ほどの電気代削減効果が期待できます。電気料金の30%に相当する額です。
遮熱効果で電気代を節約できる
太陽光パネルを屋根に設置すると、直射日光が屋根に当たらないため夏は室温が上昇しにくくなります。また、冬は放射冷却による室温の低下を防ぎます。
外気温の影響による室温の変動を抑制でき、太陽光発電を導入している建物では空調の使用頻度が下がります。空調は200Vの電圧が必要な電化製品で消費電力が大きく、100Vの家電を同じ時間使用したときよりも電気料金が高くなります。遮熱効果で空調の使用を抑えられることが、自家消費型太陽光発電で電気代を節約できる理由です。
余剰電力があれば収入になる
電力消費量が発電量よりも少ない場合、自家消費できなかった電気はロスになるため余剰売電の選択肢もあります。ただし、近年では高い売電収入は望めないことと、出力制御が各電力会社で実施されている点は注意が必要です。
2023年には約19億kWhの再生可能エネルギーによる電気が、出力抑制によって垂れ流し状態でした。出力制御が実施されていないときは余剰売電できるため、蓄電池を併用しないケースでは売電収入のメリットがあります。
(参照)「捨てた」再エネ電気、45万世帯分 出力制御急増で 朝日新聞集計|朝日新聞デジタル
CO₂削減による脱炭素経営になる
CO₂排出量を削減できることから、自家消費型太陽光発電の導入は脱炭素経営につながります。脱炭素経営はCO₂削減などに取り組むことを重要課題とし、気候変動対策を重視した企業経営のことです。
現在では、環境問題に取り組んでいるかどうかも企業の価値を測る指標になっているため、脱炭素経営に取り組めばイメージや知名度の向上などメリットがあります。
BCP対策に活用できる
自家消費型太陽光発電は、BCP対策の手段にもなります。BCP対策は自然災害やテロ、事故などの緊急事態が発生したときに、従業員や企業の存続に関わる重要性が高い事業を守るための事業継続計画です。
例えば自家消費型太陽光発電を非常用電源として活用すれば、停電時に必要最低限の事務所機能を継続させることが可能です。緊急事態でも事業を継続できる自家消費型太陽光発電の導入は、法人にとってメリットが大きいと言えます。
節税効果がある
減価償却と税制優遇制度の利用により、自家消費型太陽光発電は法人の節税対策になります。
自家消費型太陽光発電は、設置した年度に固定資産として申告が必要です。17年間減価償却できるため、期間中は経費計上により節税ができます。メンテナンス費用も経費計上すれば節税できるため、忘れずに申告しましょう。
中小企業が利用できる税制優遇制度は、以下の4つです。
- 中小企業経営強化税制
- 中小企業投資促進税制
- カーボンニュートラル投資促進税制
- 先端設備等導入計画
どの制度も法人の規模で控除の割合が異なる点が共通していますが、中小企業経営強化税制は自家消費率50%以上が対象です。また、カーボンニュートラル投資促進税制では、法人の規模と炭素生産性で控除の割合が変わります。炭素生産性とは、再生可能エネルギーの付加価値額とエネルギー起源の排出量です。
制度の種類 | 選べる節税方法 |
中小企業経営強化税制 | ①資本金3,000万円以下の法人等および個人事業主
→即時償却または10%税額控除 ②資本金3,000万円超1億円以下の法人 →即時償却または7%税額控除 |
中小企業投資促進税制 | ①資本金3,000万円以下の法人等および個人事業主
→30%特別償却または7%税額控除 ②資本金3,000万円超1億円以下の法人 →30%特別償却 |
カーボンニュートラル投資促進税制 | ①中小企業:炭素生産性17%
→税額控除14%または特別償却50% ②大企業:炭素生産性20%および中小企業:炭素生産性10% →税額控除10%または特別償却50% ③大企業:炭素生産性15% →税額控除5%または特別償却50% |
本記事執筆時点の2024年2月では、いずれも期間限定での控除になっています。
- 中小企業経営強化税制:2025年3月31日まで
- 中小企業投資促進税制:2025年3月31日まで
- カーボンニュートラル投資促進税制:2028年度末まで(認定期間:2年以内+設備導入期間:認定日から3年以内)
税制優遇制度の利用を希望される場合は、早めの自家消費型太陽光発電導入の検討をおすすめします。
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空きスペースを有効活用できる
自社の屋根や遊休地への自家消費型太陽光発電の導入は、事業活動に直接利用しないスペースを有効活用することにつながります。
普段は使用していない空きスペースに発電設備を導入するだけで、電気代削減や非常用電源の確保などができる点が自家消費型太陽光発電のメリットです。条件が合わなければ屋根も遊休地も太陽光発電を導入できないため、早い段階で業者への現地調査依頼が必要です。
自家消費型太陽光発電のデメリット3選
自家消費型太陽光発電を法人が導入する際、以下のような懸念点もあります。
- 希望する場所に設置できない可能性がある
- コストがかかる
- 発電量が一定ではない
どのようなことがデメリットになるのか、順に見ていきましょう。
希望する場所に設置できない可能性がある
太陽光発電を屋根に設置する場合、形状や材質が設置に適した種類でなければ導入が難しくなります。また建物の耐震性や耐荷重が基準を満たしていないと、太陽光発電は設置できません。敷地内の遊休地に太陽光発電を設置する場合でも、影を作るものが周辺にあったり、日照条件が良くなかったりすると発電量が少なく経済効果が得られません。
発電量が少ないと自家消費率が下がり、初期費用を回収するまでの期間も長くなるため、経済的なメリットが少なくなってしまいます。十分な発電量を期待できる場所選びは、太陽光発電の導入において重要な検討事項です。
コストがかかる
自家消費型太陽光発電システムの設置には高額な初期費用がかかり、導入後もメンテナンスなど維持管理費用が必要です。容量が10kW以上の屋根設置タイプの太陽光発電導入にかかる費用平均は、22.3万円/kWになります。法人向けの自家消費型太陽光発電では容量が大きい設備を導入するケースが多く、初期費用は1,000万単位になることが一般的です。
また、メンテナンス費用の平均的な金額は、設備の規模で以下のように異なります。
- 50kW未満:10~15万円/年
- 50kW以上:100万円~
定期的に発電設備のメンテナンスを実施すれば、発電効率が高い状態を維持できます。発電効率が高ければ自家消費率が上がり経済的なメリットが得られるため、メンテナンスのコストは必要経費と捉えるようにしましょう。
発電量が一定ではない
太陽光発電は、毎日同じだけの発電量を得られるわけではありません。1日の中でも夜間は発電できず、日射量が少ない季節には発電量が減少します。以下のグラフは静岡県浜松市における年間の発電量と平均日射量の推移を表しており、日射量が少ない時期は発電量も少ないことが分かります。
結晶系の太陽電池はパネルの表面温度が1℃上昇するごとに発電効率が0.4%程度低下する性質があり、外気温が高く日差しが強い夏場も発電量が少ない傾向です。このため、事前の発電シミュレーションを念入りに行い、天候や時間帯による発電量の変化を加味した収支計画が必要になります。
自家消費型太陽光発電を導入する際の5つのチェックポイント
自社への自家消費型太陽光発電導入を検討するときにチェックするべき項目は、以下の5つです。
- 自家消費型太陽光発電に適した設置場所
- コストをチェックして予算を把握
- 発電開始までの流れと期間を確認
- リスクを洗い出して対策の検討
- 慎重な業者選び
どのような点に気を付けなければいけないのか、詳しく説明します。
自家消費型太陽光発電に適した設置場所
太陽光発電設備の設置場所が、太陽の光エネルギーによる発電に適しているかの確認は必ず実施しましょう。屋根が太陽光発電の設置に適しているか判断するためのチェック項目は、以下の9つです。
- 設置スペースを確保できるか
- 設置場所に使用制限がないか
- 1981年6月1日に開始した新耐震基準の施設か
- 屋根の形状と材質が設置に適しているか
- 防水工事が必要か
- 海岸と距離が離れているか
- 平均積雪量が200cm未満か
- 近隣に日射を遮るような高い建物や木がないか
- 近隣にパネルの反射光があたりそうな建物がないか
上記以外でも、屋根の耐荷重を確認するために建築設計図面と構造計算書が必要です。業者に依頼すれば現地調査を実施した上で、屋根が発電設備の設置に適しているかどうか診断してもらえます。
コストをチェックして予算を把握
太陽光発電は初期の導入費用のほか、メンテナンスや保険料などでランニングコストがかかります。適切にメンテナンスしていれば機器の不具合を早期に発見でき、都度対処することで高い発電効率を維持できます。また、万が一の事態で想定外の支出が発生しないよう保険加入も必要です。
さらにパワコンは太陽光発電を稼働させている中で1回は交換すると言われているため、これに備えて資金の準備も必要になります。太陽光発電導入後に発生するランニングコストを事前に把握してシミュレーションに含めていれば、非常事態が起きても収支バランスが崩れず経済効果への影響を少なくできます。
発電開始までの流れと期間を確認
業者に現地調査をしてもらっても、すぐに太陽光発電を設置して発電を開始できるわけではありません。電力会社への電力系統に関する確認と申請やそのほかの申請には、完了するまで数ヶ月かかるケースがあるためです。一般的な太陽光発電導入までの流れは、以下のようになります。
- 現地調査を実施
- 提案(必要に応じて再提案)
- 契約と手付金の支払い
- 各種申請手続き
- 設置工事・電気工事
- 完工
- 残金の支払い
- 税制優遇の申請
- メンテナンス
各工程にかかる期間は状況によって変わるため、自社のケースではどれくらいになるか知りたい場合は業者に問い合わせが必要です。
リスクを洗い出して対策の検討
自家消費型太陽光発電を導入すると電気代削減などのメリットが得られますが、デメリットもあるため何も対策しないと損失になる可能性があります。主なデメリットは、以下の3つです。
- スペースがないと設置できない
- 初期費用が高額・ランニングコストがかかる
- 発電量が天気や時間の影響を受けるため一定しない
適切な太陽光発電の設置場所がない場合、自己託送やオフサイトPPAの利用で解決できます。補助金の利用や第三者所有の太陽光発電を採用すれば、初期コストを抑えられます。ランニングコストと発電量の変動を含めたシミュレーションができていれば、経済効果が大きく低下することはありません。
自社のケースで考えられるリスクを洗い出し、対策した上での導入が自家消費型太陽光発電で失敗しないために重要です。
慎重な業者選び
自家消費型太陽光発電の導入で失敗しないために最も重要なのは、業者選びです。信頼できる業者を見極めるポイントは、3つあります。
- 事業継続年数が10年以上
- 自家消費型太陽光発電で法人向けの導入実績が豊富
- 電気主任技術者が在籍
事業実績の年数が長く同程度の規模感の自家消費型太陽光発電を施工した実績が豊富な業者は、デメリットやリスクを知り尽くしています。信頼できる業者を見極められれば、過去の事例を踏まえて想定されるデメリットやリスクの回避方法を提案してもらえる可能性が高いです。このため慎重な業者選びが、自家消費型太陽光発電の購入では大切と言えます。
まとめ|自家消費型太陽光発電を法人が導入するとメリットが多い
自家消費型太陽光発電は特に法人が導入するとメリットが大きく、相性が良い発電システムです。基本的には全量自家消費して電気代削減の経済効果を高める使い方がおすすめですが、電力消費量に応じて余剰売電も選択できます。
法人への自家消費型太陽光発電導入で得られるメリットは、以下のとおりです。
- 補助金制度が充実している
- 電気代の削減効果が得られる
- 遮熱効果で電気代を節約できる
- 余剰電力があれば収入になる
- CO₂削減による脱炭素経営になる
- BCP対策に活用できる
- 節税効果がある
- 空きスペースを有効活用できる
多くのメリットがある自家消費型太陽光発電ですが、デメリットやリスクも存在するため、対策方法や注意点を確認しながら導入を検討しましょう。
法人向けの自家消費型太陽光発電について詳しくお知りになりたい方は、以下より資料請求し導入検討の参考にしてください。