BCPとは?BCPに取り組むメリットや策定手順について解説!
太陽光発電 更新日: 2022.03.18
BCP(事業継続計画)の需要が企業で高まっています。 昨今の台風や大雨などによる自然災害、災害大国日本を象徴する地震、津波、そしてパンデミックと、近年は過去に類を見ないほど、企業の経営に深刻な打撃を与える事態が頻発しています。こうした背景から、BCPの重要度が再認識されています。 本記事では、BCPの基礎知識を紹介いたします。
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BCPとは
BCPとは、Business Continuity Planの略で「事業継続計画」と訳されます。
内閣府ではBCPを以下のように記しています。
災害時に特定された重要業務が中断しないこと、また万一事業活動が中断した場合に目標復旧時間内に重要な機能を再開させ、業務中断に伴う顧客取引の競合他社への流出、マーケットシェアの低下、企業評価の低下などから企業を守るための経営戦略。バックアップシステムの整備、バックアップオフィスの確保、安否確認の迅速化、要員の確保、生産設備の代替などの対策を実施する(Business Continuity Plan: BCP)。
つまり、自然災害や感染症などの「緊急事態」を想定し、自社の重要な業務の継続あるいは早期に復旧させるため、緊急時における事業継続の方法などを取り決めておく計画のことを指します。
災害や大きな事故が発生しても、顧客からは平時と同様な対応を求められるため、事業を続けるためには、いくつもの課題が発生します。どのような企業でも災害や大きな事故にあえば、多くの課題がある中でも、スピードがある対応が求められるのです。つまり、BCPは被災後の事業継続を図っていくための経営戦略ともいえます。
緊急事態に直面した際に、人・モノ・資金・情報が足りなくなるという状況の中で、短時間で対応できるようにするためには、あらかじめ何が起こり得るかを考えて、そのときに行うべきことを計画として定め、実際にその計画が実行できるように訓練を行うなどして備えておくことが重要です。
BCPに取り組むメリット
被害の最小化、中核事業の早期復旧
BCPの策定において、事前の対策や災害直後にとるべき対応、また事業再開までに必要になることを計画としてあらかじめ整備します。BCPに取り組むということは災害による被害を小さくすることができ、事業再開までの時間を短くすることにつながります。
経営改善につながる
BCPは災害や大きな事故が発生した状況において、限られた経営資源の中で短時間でどのように対応するかをあらかじめ考え、実際の状況に応じて、柔軟に判断しながら行動が起こせるよう訓練して対応能力を高めるための活動です。これは、日常の経営改善(=経営の効率化)と同意義です。
つまり、企業が置かれている現状を把握し、課題を抽出・整理、改善策を順序立てて実施し改善するという経営改善の流れは、災害時も同じように求められることなのです。災害時に限られた時間、限られた状態の中でこれらを実施できるようにすることは、平常時の日々の業務の効率化や経営改善をも期待できるということです。
日常的なトラブルの対策になる
事業を止める要因を引き起こすのは大災害だけではありません。大地震や洪水が起きなくても施設が使えなくなるという事態は起き得ますし、従業員が出社できなくなるようなことも日常的に起こり得ます。たとえば、近隣で火災が起きて安全のために一時的に施設から退去させられることもあるかもしれません。他にもシステムのトラブルや社長が突如入院ということもあるでしょうし、取引先から何らかの要因で部材が入手できなくなることもあるでしょう。
このような経営資源が一定期間(たとえば1日、3日、1週間)使えなくなることは、大災害でなくても日常的に起こり得ることで、BCPによりこうした日常的なトラブルへの対策が可能となります。
事業承継につながる
BCPに取り組むことで経営課題が解決できるという代表的な事例が事業承継です。災害時には、人がケガをしたり、ものが壊れるだけでなく、働ける社員の数が減り、インフラが使えなくなり、さらに機械や設備が壊れて使えなくなり、社長の不在や一人の経営者だけでは対応しきれないような中で、さまざまな意思決定を求められます。BCP では、そのような事態に陥っても、事業が継続できるよう、社長の代替となる意思決定者を決めたり、万が一経営資産や資源が使えなくなった場合までの対応を検討しておきます。
一方、事業承継計画では、経営資産や資源を明確にし経営理念や事業方針、今後の経営戦略を明確にした上で後継者を育成するわけですから、BCPにはこれらの計画の内容が包含されています。つまり、BCPへの取り組みが結果的に事業承継計画の策定にもつながることが期待されます。
平時の事業存続・発展につながる
BCPに取り組むことは危機管理がされていることを対外的にアピールすることができるため、取引先や株主などのステークホルダーから信頼が高まります。
BCPを策定して運用している企業にとっては取引先の企業がBCPを策定しているかどうかが重要な選定基準になる可能性があります。取引先の企業が事業の継続能力に不安がある(BCPが未策定)場合、緊急事態の際に取引先の事業中断や関連倒産のリスクが高くなり、自社のBCPの実効性が弱まることにつながるからです。
つまり、BCPの策定がされているかどうかが企業を選定する指標の1つになる可能性があるということです。
その他にも、介護業においては2021年4月から施行された「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」内で2024年からBCPの策定が義務づけられました。
感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築する観点から、 全ての介護サービス事業者を対象に、業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション) の実施等を義務づける。その際、3年間の経過措置期間を設けることとする。【省令改正】
BCPの策定が求められるのは近年の動向から今後も続いて行くことは明らかなので、早急なBCPの策定がビジネスチャンスにつながります。
BCPの押さえておくべき5つのポイント
災害など緊急時に遭遇した際に会社が生き抜くための前提は、従業員の生命と会社の財産を守ることです。これを踏まえ、一般的なBCP文書には次の5つのポイントが含まれています。仮にBCPを文書で整備しなくても、こうしたポイントを抑えておけば、災害時でも事業が継続しやすくなるはずです。
1.重要商品(事業)を特定すること
緊急時において優先して継続・復旧すべき中心となる事業を特定します。緊急時には、利用できる人材や設備、資金が制約されます。そのため事業を絞り込むことが企業存続の近道です。
※実際に被災後に行うべき事業は、必ずしもBCPで策定した中核事業とは限りませんが、緊急時の優先順位を明確にしておくために、あらかじめ会社にとっての中核事業を決めておきます。
2.復旧する目標時間を考えること
緊急時において主要な事業を復旧する目標時間を考えておきます。目標がないと適切な行動を起こすことができません。災害が発生した際には、被害状況を判断しながら復旧までの時間を再設定することもあります。
3.取引先とあらかじめ協議しておくこと
主要な事業やその復旧時間について顧客や取引先などとあらかじめ協議しておきます。緊急時には、顧客との迅速・円滑な連絡が肝心です。
※災害の被災度合いによっては、提供する商品やサービス、顧客を限定せざるを得ないケースもあります。
4.代替策を用意・検討しておくこと
事業拠点や生産設備、仕入れ調達などの代替策を用意または検討しておきます。緊急時のこれらの使用不能に備え、可能な範囲で用意します。コンピューターをあらかじめバックアップしておくことも重要です。
5.従業員とBCPの方針や内容について共通認識を形成しておくこと
緊急時に経営者はどう行動するつもりか、従業員にどう行動して欲しいか共通認識をつくっておきます。
自社に影響する被害を緻密に分析するだけではなく「こんなことが起きたら何をしなくてはいけないの?」と考えることも大切なことです。
BCP文書の策定と手順
BCPに取り組むことはすべての企業において共通であり、文書化にあたっては過度な明文化は控えた方が無難なケースがありますが、業態や規模、平時の組織構造によってはしっかりとした文書化が必要なケースも出てきます。文書化が目的となってしまってはいけませんが、社内・社外向けにBCPを見える化し、非常事態に対して事前に理解し、必要な対策・訓練を施すために必要な書類を準備することが必要です。
策定の際には以下の3点を考慮する必要があります。
1.なぜこの事項を記載しなければいけないのかその目的
2.その記載事項は実際にどのように活用されるのかを意識
3.それを社内に浸透させる方法
1.基本方針の立案(目的:何のためにやるのか)
BCPの策定は、「何のためにBCPを策定するのか」「BCPを策定・運用することにどのような意味合いがあるのか」を検討し、基本方針を決めることからはじまります。なぜなら緊急時の対応には、事前対策も含めて、社員や取引先の協力が不可欠で、一致団結して行動することが不可欠なためです。
経営者自身が、何のために、誰のために、BCP に取り組むのかをじっくりと考え、断固とした決意を従業員や取引先に伝えなくてはなりません。おそらく、ほとんどの企業は、平時の経営においても経営方針を掲げ事業に取り組んでいると思いますが、BCPの基本方針は、その会社の経営方針の延長(あるいは原点)に位置するもので、何のために会社が事業を行っているか見つめ直すことにもつながります。
2.重要商品の検討(優先順位:何をやり、何をやらないのか)
企業には、さまざまな商品・サービスがありますが、災害などの発生時には、限りある人員や資機材の範囲内で、事業を継続させ、あらかじめ策定したBCPの基本方針を実現しなければなりません。そのため、基本方針を立案した次の手順として限りある人員や資機材の中で優先的に製造や販売する商品・サービスをあらかじめ取り決めておく必要があります。
たとえば、収益・売上が大きな商品・サービスであったり、その商品・サービスを届けないと社会や市場全体に大きな影響を及ぼしてしまう事業が該当します。ただし、あくまでも会社の実情に合ったものでなければなりませんから、被災状況に合わせて対応を決定する方が合理的であったり、季節要因や受注状況などにより取扱商品の振れ幅が大きかったりする商品の場合は、被災時に情報収集・分析を行い、どの業務(商品・取引先など)をどうやって行うかの「方針決定」を重要業務としている企業もあります。
3.被害状況の確認(現状認識:今のままだとどういう状況になるのか)
企業が影響を受ける災害には、洪水や、地震、新型インフルエンザなど、さまざまあり、こうした災害により、工場が生産停止となったり、店舗が壊れて商品を販売できなくなったりする場合があります。そのため、まずは災害などにより会社が受ける影響のイメージを自社全体で共有する必要があります。こうした影響を会社が受けた場合に、先ほどの「2.重要商品の検討」で検討した事業が継続できるかどうかを考えます。
大規模な洪水については、会社や工場の所在地によって被災の可能性が大きく異なりますが、公共交通網の遅延だけでなく、ライフラインが使えなくなったり、設備が被災したりすることもあります。地震については、すべての企業が直面し得る災害であるため、震度6を超えるような大きな地震が発生した場合に想定される自社への影響を列挙し、自社全体でその影響の範囲を共有します。
4.事前対策の実施(改善策:どうすれば改善できるのか)
「3.被害状況の確認」で想定した状況になったとしても、会社は従業員などの安全を確保した上で、商品を提供していかなければなりません。そして、重要商品を提供し続けるためには、製造や販売に携わる従業員や機械設備など、さまざまな経営資源(人・モノ・資金・情報など)が必要となります。
そのため、緊急時においても、会社がこうした必要な経営資源を確保するための対策(事前対策)を平時から検討・実施しておくことが重要です。
たとえば、人に関して取り上げれば、早期に参集してもらうための安否確認ルールの整備や、担当者が不在になった場合の代替要員の確保などが考えられます。前提として、安全を確保するための転倒防止や、水・食糧・非常用トイレなどの備蓄も重要です。
モノでは、設備類を固定しておくこと、もし壊れてしまった場合でも別のもので代替できるようにしておくこと。情報では、重要なデータについてはあらかじめバックアップする、適切に保管しておくことなどが重要です。
災害時は固定電話や携帯電話などが使えなくなる可能性が高いため、複数の情報収集・発信手段を確保しておくことも重要です。さらに、被災して事業が止まっても社員の給与や取引先への支払いは継続しなくてはなりませんし、被災設備などの復旧にもお金がかかりますので、こうした緊急時に必要な資金を把握し、現金や貯金を準備、あるいは損害に備えて保険に加入しておくことも重要です。
5.緊急時の体制の実施(責任:誰が何をやるのか)
実際に災害などが発生した際でも、会社が事業継続のために適切に行動するためには、緊急時の対応とその責任者を整理しておくことが必要です。緊急時の対応には、初動対応、復旧のための活動、さまざまなものがありますが、最低限こうした全社の対応に関する重要な意思決定およびその指揮命令を行う統括責任者を取り決めておくことが重要となります。また、統括責任者が不在の場合や被災する場合もありますので、代理責任者も決めておく必要があります。
BCPの運用
いざ、緊急事態になった際に「従業員がBCPの内容を理解していなかったため、適切に対応することができなかった」「BCPに整理されている情報が古くなっており、役に立たなかった」ということでは、せっかくBCPを策定していても意味がありません。BCP対策は文書の策定だけでなく、有事の際にBCP文書に沿った対応が取れるように平時から社員に対して浸透させる活動も含みます。
有事の際に迅速かつ的確な行動を取るために、BCPを策定した後は従業員にBCPの内容やBCPの重要性を理解してもらう社内での研修や教育活動を実施することが必要です。
BCPの見直し(改善:定期的・継続的な見直し)
常にBCPの内容を自社の現状に合ったものとしておくために、必要に応じBCPの見直しを行うことが重要です。
BCPの見直しは、たとえば顧客管理や在庫管理など、日頃から会社が実施している経営管理の延長にあるものです。顧客の状況や在庫状況などに大幅な変更があった場合、商品やサービスの変更・追加、生産ラインの組み替え、人事異動などがあった場合は、BCPの見直しを行う必要 があるか検討し、必要があればBCPに反映します。
また、これから実施を予定している事前対策の進捗状況や問題点も定期的にチェックし、対策の内容や実施時期を再検討する必要があります。そのため、策定したBCPの中に、BCPを見直す基準を記載しておき、随時確認すると良いでしょう。
太陽光発電と蓄電池でBCPに取り組む
自社で所有している>建物の屋根に太陽光発電設備を設置することでBCP対策を行うことができます。
非常時の電力確保というのは非常に重要です。通信機器には電源が必要なため、電力供給がストップしてしまうとパソコンや電話など通信手段に支障が生じます。そうした場合に社内・社外への情報伝達に滞りが生じ、事業復旧に遅れが生じてしまいます。太陽光発電設備を導入すれば、電力会社からの送電が止まっても日中は電力を確保することができます。しかし、太陽光発電の設置容量によってはすべての電力を賄うことは難しい場合もあるため、電気を使用する設備などを事前に決めておく必要があります。また、蓄電池を導入することで発電して使用しない分の電気を蓄えることができます。
太陽光発電と蓄電池を導入することは、BCP対策だけでなく、日々の電気代の削減や経費削減、さらには環境貢献に役立てることができます。近年では「脱炭素化」が加速しつつあり、大企業だけでなく中小企業にも脱炭素化が求められます。日本では2030年までに温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目標としています。太陽光発電の導入にも補助金や優遇税制といった措置があるため、BCP対策や環境貢献の解決につながる太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。
以下では、過去に開催した「BCP対策オンラインセミナー」のダイジェスト資料をダウンロードいただけます。どうぞBCP策定にお役立てください。
また、自社の工場や倉庫、事務所の屋根に設置する太陽光発電設備の概要資料もございます。緊急時には電気インフラの確保、平時には電気代削減、脱炭素化などのメリットが見込めます。