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カーボンニュートラル投資促進税制とは?わかりやすく解説

節税 更新日: 2023.04.13

企業が自家消費型太陽光発電の導入に使えるカーボンニュートラル投資促進税制をご紹介します。脱炭素化効果が高い製品やエネルギー消費量の削減となる設備投資に対して、特別償却50%または最大10%の税額控除が可能な税制です。補助金と併用も可能で税制の適用を受けることができれば大きな恩恵を受けることができます。

11月初旬に令和4年度補正予算で太陽光発電の導入に利用可能な追加の補助金が決定したためこちらも合わせて参考いただくと理解が深まります。


カーボンニュートラル投資促進税制とは?

カーボンニュートラル投資促進税制とは、経済産業省所管の産業競争力強化法に基づき、企業がカーボンニュートラルの実現に向けた事業再構築に対して、国が金融支援や税制措置によって後押しする施策の1つです。

産業競争力強化法とは産業における生産性向上を目的として、事業再編を行う企業の取り組みを事業再編計画として認定し、認定を受けた取り組みに対して、金融支援等の支援措置を行うものです。
カーボンニュートラル投資促進税制のほかにDX投資促進税制も、産業競争力強化法に基づいて創設されました。

税制措置を受けるには、青色申告を行っている法人であるほか、事業適応計画の認定が必要となります。
カーボンニュートラル投資促進税制における、事業適応は「エネルギー利用環境低減事業適応」のことを指し「2050年カーボンニュートラルを実現すべく、脱炭素化効果が高い製品の普及や生産工程等の脱炭素化に取り組むこと。」や「エネルギーの消費量の削減、非化石エネルギー源の活用その他のエネルギーの利用による環境への負荷低減に関する国際的な条件の変化に対応して行うもの。」とされています。
参照:産業競争力強化法における事業適応計画について

より具体的には、企業がエネルギー利用環境低減事業適応に向けた中長期的な計画を所管の大臣から認定を受けた後、大きな脱炭素効果を持つ製品の生産設備、または生産工程などの脱炭素化と付加価値向上を両立する設備の導入に対して、カーボンニュートラル投資促進税制の税制措置を受けることができます。

カーボンニュートラルに向けた投資促進税制の対象設備

カーボンニュートラル投資促進税制の対象設備は大きく分けて以下の2つになります。

大きな脱炭素効果を持つ製品の生産設備(需要開拓商品)の導入

事業適応計画に記載された、以下の需要開拓商品を生産する設備導入に対して、最大10%の税額控除または50%の特別償却を受けることができます。

化合物パワー半導体
※電力の制御若しくは電気信号の整流を行う化合物半導体素子、または当該素子の製造に用いられる化合物半導体基板が対象です。

EVまたはPHEV向けリチウムイオン蓄電池
※電気自動車またはプラグインハイブリッド自動車を構成するリチウムイオン蓄電池が対象です。

定置用リチウムイオン蓄電池
※ 定置用リチウムイオン蓄電池(7,300回の充放電後に定格容量の60%以上の放電容量を有するものに限る。)が対象です。

燃料電池
※燃料電池(定格運転時における低位発熱量基準の発電効率が50%以上であるもの若しくは総合エネルギー効率が97%以上であるものまたは水素のみを燃料とするものに限る。)が対象です。

洋上風力発電設備の主要専門部品
※ 洋上風力発電設備(一基あたりの定格出力が9MW以上であるものに限る。)を構成する商品のうち、次に掲げるものが対象です。ナセル、発電機、増速機、軸受、タワー、基礎

生産工程などの脱炭素化と付加価値向上を両立する設備(生産工程効率化等設備)の導入

設備の導入により事業所の炭素生産性(付加価値額/エネルギー起源CO2排出量)を導入前後で1%以上向上させる機械装置、器具備品、建物附属設備、構築物などの設備が対象となり、3年以内に炭素生産性を7%以上向上させる計画の策定が必要です。炭素生産性を7%以上向上させる計画に対しては税額控除5%または特別償却50%の措置を受けることができ、炭素生産性を10%以上向上させる計画の設備投資に対しては、税額控除10%または特別償却50%が適用されます。
また、事業者全体の炭素生産性の向上目標を設定する上では、再エネへの切り替えによる二酸化炭素排出量の削減といった取り組みを含めても良いこととなっています。

炭素生産性の数値は付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)÷エネルギー起源二酸化炭素排出量から求めることができます。
具体的には以下のように計算されます。
<設備導入前>
付加価値額:100,000,000円
CO2排出量:1000t/CO2だった場合、
100,000,000÷1,000,000=100
炭素生産性は100となります。

この状態から1500万円の設備導入により、CO2排出量を200t/CO2減らした場合、
付加価値額:115,000,000円
CO2排出量:800t/CO2となり、
115,000,000÷800,000=143.75
炭素生産性は143.75となり、炭素生産性は43.75%向上することとなり、税制の適用対象設備となります。

一方、ファンの交換で電気代を削減しCO2排出量を4t/CO2減らした場合、
付加価値額:100,100,000円
CO2排出量:996t/CO2となり、
100,100,000÷996,000=100.502…となり、炭素生産性は1%未満の向上となるため税制の対象とはなりません。
参照: エネルギー利用環境負荷低減事業適応計画(カーボンニュートラルに向けた投資促進税制)の申請方法・審査のポイント

太陽光発電の導入にも利用可能

カーボンニュートラル投資促進税制は自家消費型太陽光発電の導入にも利用できます。敷地内に太陽光発電設備を設置し、自社内で発電した電力を使用することで外部からの電力購入額を減らすだけでなく、二酸化炭素排出量も削減することができるため炭素生産性の向上に貢献します。
自己投資で設置するほかにPPAなどの導入方法がありますが、カーボンニュートラル投資促進税制は会社が保有する資産が対象となるため、所有資産がPPA事業者となる場合、税制の対象から外れてしまうため注意が必要です。

税制適用に際しての注意点

① 本税制の検討開始から事業適応計画の認定を受けるまでは通常3カ月~6カ月程度を要します。

② 事業適応計画の認定以降に取得し、かつ、24年3月末までに事業の用に供する設備が対象となります。取得とは、資産の購入または引渡しを受けること等を指します。

③ 貸付けの用に供する資産は税制の対象外です。したがって、会社が取得した設備を、子会社または第三者に貸し付ける場合における当該資産は適用対象となりません。

本税制の設備投資総額の上限は500億円です。また、税額控除の控除上限は、DX投資促進税制とあわせて当期の法人税額の20%です。

⑤ 設備投資について補助金を受けたことによる法人税法上の「圧縮記帳」と本税制の併用は可能です。圧縮記帳の適用を受けた場合は圧縮記帳後の金額が税務上の取得金額となります。

申請手続きとスケジュール

次に申請手続きから税制措置の適用を受けるまでのイメージについて見ていきましょう。
事前相談
計画の認定を希望する際に、要件に合致するかどうかを、事業を所管している主務省庁への事前相談が必要となります。
計画の申請・認定
計画に定める投資設備が、税制対象設備であることの確認や計画の審査を通じ認定を得ます。
税制対象投資の実施
税制の適用期間内に( i )設備などを製作・取得し、( ii )その事業の用に供した場合に、法人税の特例措置(税額控除・特別償却)の適用を受けることができます。
税務申告
認定計画の写しと認定書の写しを添付して税務申告を行います。

認定を受けた計画は各認定省庁のホームページなどで公表され、計画期間中の実施状況についても計画の終了まで毎年度報告し、公表されます。

事業適応計画の認定要件

計画のポイント
生産性の向上 生産工程効率化等設備の導入を伴う場合:目標年度(計画開始後3年以内で設定した年度)において、炭素生産性を7%以上向上
新需要の開拓 需要開拓商品生産設備の導入を伴う場合:需要開拓商品について十分な販路を開拓すること
財務の健全性 計画の終了年度において経常収入>経常支出(黒字)となる計画を示す
前向きな取組 生産工程効率化設備または需要開拓商品生産設備の導入その他エネルギーの利用による環境への負荷の低減に資する取り組みを行うことにより、生産性の向上または需要の開拓を図ること
経営方針 実施しようとする事業適応が取締役会その他これに準ずる機関による経営の方針に係る決議・決定(ー事業部門・ー事業拠点でなく組織的な意思決定)に基づくものであること

参照: エネルギー利用環境負荷低減事業適応計画(カーボンニュートラルに向けた投資促進税制)の申請方法・審査のポイント

まとめ

今回はカーボンニュートラル投資促進税制についてご紹介しました。
税制の適用を受けるには複雑な条件があるため、わかりにくく感じたかもしれません。

まず、前段階として産業競争力強化法の事業適応計画という計画の策定と認定を受ける必要があります。
さらにカーボンニュートラル投資促進税制の対象設備となる、生産工程効率化等設備の導入後に炭素生産性1%向上を達成した根拠となる資料の提出を行います。

他にも炭素生産性の向上割合に関する条件や、計画期間中は毎年実施状況の報告も必要となるため税制の適用については税理士法人へ相談してみましょう。


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