Column コラム

日本卸電力取引所「JEPX」とは?電力市場の仕組みがわかる!

ブログ 更新日: 2022.10.27

日本国内で消費される電力の卸取引市場である日本卸電力取引所「JEPX」についてご紹介します。

エネルギー価格の高騰に伴いJEPXの取引価格も高騰し、煽りを受けた新電力各社で電力供給の停止や撤退、倒産などが相次いでいます。帝国データバンクによると、2021年度の新電力の倒産件数は過去最多の14件に上ったとの調査結果が発表されました。これまで最多だった20年度の7倍の水準となっています。

新電力と呼ばれる電力自由化後に経済産業省資源エネルギー庁から認可された小売電気事業者は自社で発電所を保有する義務がないため、JEPXで仕入れるか、発電所を持っている事業者より大口で購入することで販売することができますが、JEPXの仕入れ価格の影響を受けやすいです。

本記事では、JEPXの取引の仕組みや取引価格の決定方法、電気料金に与える影響などについて解説していきます。

また、以下の資料では、電気代を削減したい企業様向けに削減手法をまとめて紹介しています。最近、電気代が高くなったという企業様にとってご参考いただける資料となっています。

高騰する電気代に対して企業が取り得る電気代削減手法をまとめたハンドブック資料

 

 

日本卸電力取引所「JEPX」の役割

JEPXとはJapan Electric Power Exchangeの略称で、日本で唯一の卸電力取引所です。
日本における電力自由化の流れを受けて、2003年に設立されました。
この取引所で発電事業者や小売電気事業者などが電力の売買を行うことができます。

そもそも電力事業とは、「発電」「送配電」「小売」の三つの事業から成り立ちます。
2016年4月以降、電気事業法の改正により、これまで一般電気事業者(電力会社)や特定規模電気事業者(新電力)と統合されていた電力事業を、この事業類ごとに三つに分離されるライセンス制が導入され、2020年には法人格にグループ化されました。
事業ごと分離されたことで、発電事業者、小売事業者の間の電力売買の仲介役として、取引所が機能します。

取引の仕組み

JEPXで取引を行う場合、取引会員になる必要があり、事業内容や資産要件などがあります。2022年5月現在の会員数は250社となっています。

取引は1日を電力の計量単位(毎時0分〜30分、30分〜0分)で分割し、48個の個々の商品として取引が行われています。
市場により、商品や取引期間、約定価格の決定方法が異なります。

スポット市場(一日前市場)

スポット市場は、卸電力取引所が開催する代表的な電力取引市場の一つで、翌日に発電または販売する電力を前日までに入札し売買を成立させるものです。このことから一日前市場と呼ばれることもあります。
最低取引単位は1コマ(30分)あたり50kWhで1日分の48コマから選びます。入札価格はkWh当たりの価格を銭単位(0.01円)で指定します。
発電所や一般電気事業者などの売り手と、新電力や一般電気事業者の買い手は、取引日までに売りたい量と価格または買いたい量と価格の組み合わせをネットの取引システムを通じて入札します。
価格は「シングル・プライス・オークション」という方式で約定価格や約定量が決定されます。取引所は締切後にすべての入札を「売り」と「買い」に分け、売買の量と価格から、需要曲線と供給曲線が交わる均衡点をコンピューターが計算し、約定価格を決定します。約定価格よりも安い売値を入れた売り手も、高い買い値を入れた買い手もこの約定価格で取引ができます。約定価格よりも高い売札や安い買札は取引不成立となります。
スポット市場は日々の電力需要と供給状況や、季節によって市場価格が変動します。

当日市場(時間前市場)

当日市場は発電不調や気温変化による発電・需要の調整の場として電気の取引を行います。
発電側でいえば、発電所が事故により停止し、計画していた量が発電できない場合、この当日市場(時間前市場)で不足分を調達できます。また、気温低下などにより発電量が増える場合は、追加して売却が可能です。
需要側でいえば、気温上昇により需要が増えることが予想され、調達分では足りなくなることが予測される場合、この当日市場(時間前市場)で追加調達ができます。また、気温低下により調達分に余剰がでる場合は、既調達分の売却も可能です。

スポット市場が1日分48コマを一斉に計算するのに対して、当日市場では30分単位の商品ごと時間優先・価格優先でザラ場取引されます。取引単位はスポット市場と同様に50kWhで入札価格はkWh当たり銭単位(0.01円)で指定します。

先渡市場

先渡市場では、将来の特定期間(1年間・1ヶ月間・1週間)に受渡を約する電気をザラ場手法で取引します。将来受け渡される電気の価格を固定化したい(価格ヘッジ)際の利用に適しています。
スポット市場では、30分毎に価格が決まります。日々30分毎に変動する価格を事前に固定化したい場合、たとえば1カ月間や1週間の価格を固定したい場合などに、この先渡市場が利用されます。但し、売る人・買う人の条件が合わなければ約定しませんので、安い価格で買いたいと希望しても、売る人が現れなければ買うことはできません。

直近の卸売電力市場の動向について

スポット市場の価格推移

2021年の秋口以降、諸外国の電力市場価格は高騰しています。日本は諸外国に比べれば相対的に低いもののスポット価格が高騰していることがわかります。

円/kwh 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月
平均 7.9円 12.1円 18.5円 17.3円 21.9円 20.6円 17.3円 17.3円

電力市場のスポット価格

出典:経済産業省 資源エネルギー庁「第48回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会」開催資料

燃料価格と電力市場価格の関係(年平均の推移)

日本の電力市場価格は、以前から燃料価格と強く相関しています。原油価格の高騰と同時期に電力市場価格も高騰していることがわかります。
燃料価格の推移
出典:経済産業省 資源エネルギー庁「第48回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会」開催資料

卸電力市場高騰の要因

卸電力市場が高騰した要因はさまざまな事象が互いに影響しあって引き起こされます。直接的な影響となり得るものは、発電所トラブルなどによる急な供給力の低下や、予期せぬ気温変化による需要の急増化などが挙げられます。
その他の一つとして挙げられるのが、原油や石炭、天然ガスなどの燃料価格の高騰です。
"日本の電源構成は、化石燃料による火力発電が76.3%を占めています。(2020年度資源エネルギー庁発表)そのため、原油やガス価格の上昇につれて卸価格も高騰しました。

飲食店であれば、仕入れ価格が高いことから「購入しない」という手段を選ぶことも可能ですが、電力市場は契約している顧客の電力需要を満たす必要があるので購入しないという選択はできません。
確かに、卸電力市場で電力を調達することができなくても、顧客には送配電業者が電力を融通することで需要家に電気が届かなくなることはありません。しかし、電力を融通してもらった場合、送配電会社に「インバランス料金」という追加料金を支払う必要があります。
このインバランス料金は、ペナルティ的な意味合いが強く、卸電力よりも高く設定されています。
以下のグラフは2021年(赤)と2022年(青)の1月の同日のインバランス料金についてグラフ化したものです。
インバランス料金比較出所:中部電気パワーグリッドインバランス単価(確報値)を基に作成

2021年のインバランス料金は一時500円/kWhを超える料金ということがわかります。このインバランス料金を支払わないように必要な電力を一生懸命確保しようとした結果、電力市場価格が高騰したということがわかります。電力市場価格は2022年同日で最高値は40円/kWhとなっているのに対して、2021年のこの日は一時200円/kWhを超える時間帯もありました。
この緊急事態に対して、経済産業省は2021年1月15日に1月17日以降のインバランス料金の上限を200円/kWhとする特例認可を出しました。
また、2022年からはインバランス料金の制度が見直されたことで、市場価格に連動した価格ではなく実際にかかったコストに見合うように変更されました。

このように仕入れ価格が販売価格を上回ってしまったことも、新電力会社の電力供給停止などに至る要因の一つであったと考えられます。

 

電気代を削減したい企業様向け施策ハンドブック

 

電気料金への影響

JEPXの高騰が、電力の一般消費者にも電気料金の値上げとして影響が出始めています。22年5月は大手電力会社10社すべてで値上がりし、比較できる過去5年間で最も高い水準となっています。もちろん、ウクライナ情勢によるLNGや石炭の輸入価格の上昇も要因の一つとして挙げられますが、電力市場の高騰により電力会社も値上げに踏み切らなければならない状態であることも要因として挙げられます。新電力の中には、市場価格に応じて電気料金が変動する市場連動型プランを展開している会社もあり、市場価格の影響が次月の電気料金の請求額に跳ね返ります。今のJEPX高騰の状況ではその影響を特に受けやすいため、同プランを契約している場合は注意が必要です。
以下の記事では、電気代が高騰する原因について解説しています。併せてご覧いただければより理解が深まります。



電気代が高い!2022年のいま高騰する原因を解説します

電気代が高い!2022年のいま高騰する原因を解説します

2021年から電気代が高い状態が続いています。いま現在、一般家庭や会社を問わず直面している電気代が高い原因は「燃料費調整単価の値上がり」「電気料金プランの単価上昇」「市場価格の高騰」の3つが考えられます。


今後の電気代はどうなるのか

今後も燃料価格の影響を受け、電気代は高いまま推移することが予測されます。
電気代を削減するには省エネだけでなく、自社で発電設備を持つことによって電気全体の使用量を抑えることが必要です。電気代の仕組みに関しては以下の記事で解説していますので、併せてご覧いただければより理解が深まります。



今さら聞けない「電気代の仕組み」と今後の推移

今さら聞けない「電気代の仕組み」と今後の推移

電気代は大きくわけて3つの料金から構成されます(基本料金・電力量料金・再エネ賦課金)。月々の電気料金は、契約容量で決まる基本料金と、使用電力量に応じて変化する電力量料金に、再生可能エネルギー発電促進賦課金を加えた合計です。


太陽光発電を導入することで、環境への貢献だけでなく毎年電気代を削減することで投資回収も可能です。また、太陽光発電設備の導入に利用可能な補助金を以下でご紹介しています。ぜひご参考ください。


概算見積もりフォーム

補助金大全無料ダウンロード