新電力が倒産したらどうしたらいい?最終保障供給があるから電気は止まらない

電気料金 更新日: 2022.10.27

電力市場の高騰を起因とする新電力会社の倒産が後を絶ちません。帝国データバンクの発表によると、2021年度の新電力の倒産件数は過去最多の14件に上りました(2022年3月30日発表)。倒産には至らずとも電力供給の停止や電力小売事業から撤退する新電力も相次いており、撤退した事業者も含めると31社に上ります。2020年度は2件だったことから、実に7倍にまで急増しています。

こうした状況を受け、契約していた新電力が倒産・撤退・電力供給を停止して困惑している、また倒産したらどうしたらいいのかと不安に思われている方も大勢いらっしゃることと思います。
本記事では、いま新電力の倒産が相次いでいる理由と、倒産・撤退・電力供給が停止した場合の対処方法をご紹介します。

また、以下の資料では、高騰する電気代に対して企業が取り得る電気代削減手法をご紹介しています。電力コストの増加は企業リスクに直結しますので、いち早い対処が肝要です。

高騰する電気代に対して企業が取り得る電気代削減手法をまとめたハンドブック資料

 

 

なぜ新電力の倒産や撤退が急増している?

冒頭でも触れたように、2021年から新電力の倒産・撤退・電力供給の停止が相次いでおり、2022年に入ってからはその影響がより広範囲に広がっていると予想されることから、2022年度の倒産件数は2021年度を上回る可能性が高いと思われます。
新電力が倒産している一番の要因は、日本卸電力取引所(JEPX)の取引価格の高騰です。

新電力会社の倒産件数(年度別)と直近1年以内の事業撤退動向_帝国データバンク2022年3月30日出典:帝国データバンク2022年3月30日プレス資料より

2020年~2021年の年末年始のJEPX高騰

新電力は東京電力や中部電力といった大手の電力会社と違い、自社で発電所を持つ必要がありません。発電所を持たない場合、電力小売事業に必要な電力はJEPXから調達するか、発電所を所有している事業者から調達していますが、新電力の多くがJEPXからの仕入れに依存しています。ということは、JEPXでの取引価格が新電力会社の運営を大きく左右するということです。

JEPXの取引価格は2020年まではkWhあたり10円未満で安定して推移していたため、新電力各社は電力を市場から安く購入し、大手の電力会社よりも安い料金プランや独自のオプションを展開することで契約数を伸ばしてきました。

ところが、2020年から2021年にかけての年末年始の時期に突如JEPXが高騰し、2021年1月には一時140円を超えるほどの異常な高騰を見せました。予期せぬJEPXの高騰で、電力の多くを市場から仕入れている新電力は電力調達コストが上昇し、顧客に供給する電力の不足分を電力会社から融通してもらうインバランスの支払いも発生したことにより、多くの新電力の経営状況が急激に悪化しました。その結果、新電力大手であるF-Powerが2021年3月に会社更生法を適用するなど、経営破綻に陥る新電力会社が続出し、倒産・撤退・電力供給の停止に至りました。

2021年9月から現在まで続くJEPX高騰

2020年から2021年の年末年始の異常な高騰は、2021年2月に入ると以前の10円未満の価格で推移するようになり一旦は沈静化しました。しかし、2021年9月頃から世界的に原油や天然ガスといった資源価格が上昇し始めるとJEPXも連動して値上がりし始め、2021年12月以降は20円前後での取引が当たり前となり、時間帯や日によっては30円、40円を超える取引も続出するようになりました。

一時期の100円を超えるような異常な高騰までには至っていませんが、家庭向けの電気料金プランの従量料金は20円~30円、法人向けでは20円未満が一般的であることを考えると、仕入れ値が20円や30円では電気を売るほど赤字です。

JEPXの2020年4月から2022年4月までのスポット日平均価格推移出所:JEPX市場取引結果より作成

このように、新電力の倒産にはJEPXにおける市場取引価格の高騰が大きく関係しており、2020年~2021年の年末年始、2021年9月から現在までと2度の高騰期が発生したことにより、対応できた会社とそうでなかった会社とに二分されてしまいました。
料金プランを値上げするなどの対応も当然考えられ、実際に値上げに踏み切った新電力会社もありますが、これまで低価格を一番のウリとして勝負してきただけに、電力調達コストの増加を料金プランに転嫁できる会社は限られているようです。

 

電気代を削減したい企業様向け施策ハンドブック

 

JEPXの仕組み電気代・JEPXの高騰については、以下のブログでも詳しく解説しています。



日本卸電力取引所「JEPX」とは?電力市場の仕組みがわかる!

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日本国内で消費される電力の卸取引市場である日本卸電力取引所「JEPX」についてご紹介します。 エネルギー価格の高騰に伴いJEPXの取引価格も高騰し、煽りを受けた新電力各社で電力供給の停止や撤退、倒産などが相次いでいます。帝国データバンクによると、2021年度の新電力の倒産件数は過去最多の14件に上ったとの調査結果が発表されました。




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2021年から電気代が高い状態が続いています。いま現在、一般家庭や会社を問わず直面している電気代が高い原因は「燃料費調整単価の値上がり」「電気料金プランの単価上昇」「市場価格の高騰」の3つが考えられます。これらの解説とおすすめの対策方法もご紹介しますので、原因を知った上でご自分の状況に適した対策方法を試してみてください。


 

新電力各社の主な倒産・撤退・電力供給停止の状況(2021年以降)

「ピタでん」「はなカメくん電気」株式会社F-Power(会社更生→スポンサー契約→新会社発足)

「ピタでん」および「はなカメくん電気」を運営する株式会社F-Powerは2021年3月に会社更生法の適用を申請し、同月受理されました。会社更生は破産とは異なり、再建を図るために事業を継続するための手続きで、F-Powerは2021年10月に日本GLPとスポンサー契約を締結しました。その後、2022年4月にF-Powerを譲り受けた日本GLPは株式会社FPSを設立し、同月より電力小売事業を開始するとともに再生可能エネルギーの開発にも参入しました。

「Japan電力」アンフィニ株式会社(民事再生→事業移転)

「Japan電力」を運営するアンフィニ株式会社は2021年9月に民事再生法の適用を申請しました。民事再生法の受理後も事業は継続されており、現在も電力供給は続いています。2022年2月からは新しく設立したJapan電力株式会社に事業を移転しています。

「ハルエネでんき」株式会社ハルエネ(法人向け供給から撤退)

「ハルエネでんき」を運営する株式会社ハルエネは、2021年11月に法人向けの高圧・特別高圧の電力供給から撤退するとともに、契約者に他社への切り替えを要請しました。家庭向けの低圧電力の供給は現在も続いています。

株式会社ホープエナジー(破産)

株式会社ホープエナジーは2022年3月に破産手続きに入りました。負債は300億円とされています。ホープエナジーは2021年12月に親会社の株式会社ホープから電力小売事業を承継していました。

熊本電力株式会社(電力供給停止)

熊本電力株式会社は2022年3月に電力の供給を停止しました。同社ではエビス電力(株式会社シグナストラスト)への継承を推奨しています。

株式会社ウエスト電力(撤退)

株式会社ウエスト電力は2022年3月末に電力小売事業を廃止することを発表しました。ウエスト電力は株式会社ウエストホールディングスのグループ会社で、今後は再生可能エネルギー事業に注力していくようです。

「しずおかの電気」つづくみらいエナジー株式会社(電力供給停止)

「しずおかの電気」を提供するつづくみらいエナジー株式会社は2022年初頭からすべての契約者に対して電力供給を停止しています。契約者のほか電力会社への切り替えはすでに完了しています。つづくみらいエナジー株式会社は、2021年2月に新規参入した静岡県内をサービス供給地域とする地域新電力です。

 

【最終保障供給】新電力が倒産・撤退しても電気は止まらない

JEPXの慢性的な高騰により倒産・撤退が相次ぐ新電力については、倒産したら電気が使えなくなるのでは?という不安がありますが、仮に倒産しても問題なく電気は使えます。

まず、新電力が倒産や撤退などで電力供給サービスを廃止することが決定した際には、経済産業省の「電力の小売営業に関する指針」に従って契約者に対して以下のような連絡を行います。

  • 解除日15日程度前
    【小売電気事業者(新電力)】
    需要家(契約者)に電力供給サービスの解除予告を通知。「最終保障供給」についても説明。
  • 解除日10日程度前
    【小売電気事業者】
    一般送配電事業者(東京電力・中部電力など)に連絡。
  • 供給停止日5程度前
    【一般送配電事業者】
    小売電気事業者と新規契約しないと電力供給が止まる旨を需要家に連絡。「最終保障供給」についても説明。
  • 最終保障供給開始

このように、新電力が倒産・撤退する場合は、サービスが完全に廃止されるより前にその旨を契約者に事前に通達し、他の電力会社への契約を促します。契約者は電力供給が止まる前に新規契約先の電力会社を探しますが、万が一新規受け入れ先が見つからない場合でも、一般送配電事業者の最終保障供給約款に基づいて電力の供給を受けられるため、新電力が倒産・撤退しても電気が使えなくなることはありません。

※出典:「電力の小売営業に関する指針」経済産業省 – 2022年4月1日改訂

最終保障供給とは

最終保障供給とは、小売電気事業者のいずれとも電力の供給契約を結べなかった場合に、次の契約先が見つかるまで一般送配電事業者が当該企業に電力を供給する制度です。一般送配電事業者は必要に応じて最終保障供給を行うことが義務付けられています。料金は標準メニューよりも割高です。

提供する電力会社

全国10の一般送配電事業者が提供しており、電力の供給を受ける需要場所が所在する区域を管轄する事業者に申込みます。

契約期間

基本1年以内です。実際の期間は電力会社との協議で決定します。契約期間内に小売電気事業者と契約できなかった場合は、1年を超えての延長も可能です。

料金

標準メニューより2割高と定められています。通常よりも割高にすることで、次の契約先にいち早く移行させることを念頭に置いています。

最終保障供給は実質的なセーフティネットとして機能しており、契約している新電力から倒産・撤退といった通達があり、ほかの新電力とも契約が困難である場合は、各地の電力会社が受け付けている最終保障供給を検討しましょう。

 

電気代の削減・市場変動リスクの回避には太陽光発電がおすすめ

新電力の倒産・撤退には、電力市場の高騰が大きく関わっていることをご紹介しました。電力市場の高騰、また火力燃料の高騰は新電力の経営だけでなく、一般家庭や企業の電気代にも値上げという影響を及ぼしています。現在の高騰は様々な事象が複雑に絡み合い引き起こされており、短い期間で解消されるものではなく、電気代の高騰はしばらく続くことが高い確率で予想されます。企業にとっても慢性的に経営コストを圧迫するため、優先して対処すべき事案です。

そこでおすすめなのが、自家消費型の太陽光発電です。発電した電気を自社で消費することで、電力会社から買う電力を削減でき電気代を削減できます。BCPや脱炭素の取り組みにもつながり、多方面でのメリットが期待できます。数年前から国が推進していることもあり、補助金・税制優遇が豊富な点もおすすめできるポイントです。

自家消費型太陽光発電については以下から概要資料が無料でダウンロードいただけますので、ぜひお手に取ってご参考ください。

自家消費型太陽光発電とは?メリットや事例、最新の補助金情報をまとめた概要資料

 

自家消費型太陽光発電で使える補助金や税制優遇制度について、こちらも情報をまとめた資料を無料でダウンロードいただけます。

令和5年度最新補助金・税制優遇情報活用資料

 

令和4年度に使える補助金・税制優遇は以下ブログでもご案内しています。併せてご確認ください。



【令和4年度補助金】太陽光発電導入で活用できる補助金

【令和4年度補助金】太陽光発電導入で活用できる補助金

企業が令和4年度に導入する自家消費型太陽光発電システムや蓄電池に使える補助金を6つご紹介します。 自家消費型太陽光発電は、電気代削減や脱炭素経営の推進などのメリットで注目されている、太陽光発電で発電した電気を自家消費する太陽光発電システムです。


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