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2024年度再エネ賦課金は3.49円!値上がりの要因と推移をおさらい

電気料金 更新日: 2024.04.22

経済産業省は2024年3月19日に、電気の使用量に応じて需要家が負担する再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)の2024年度単価を3.49円/kWhにすることを公表しました。
2023年度は1.4円で、実に2.09円の値上がりとなります。新たな再エネ賦課金単価は、2024年5月検針分から2025年4月検針分まで適用されます。

本記事では、2024年度の再エネ賦課金の値上がりの要因とこれまでの推移を解説します。

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なぜ?2023年度の1.4円から2.09円の値上がり

2.09円という値上がりは、2012年から始まった再エネ賦課金の制度史上、過去最大の値上がりです。

再エネ賦課金の単価は、毎年度、再エネ特措法で定められた算定方法に則って経済産業大臣が設定しています。2024年度の算定は以下となっています。

2024年度再エネ賦課金単価は過去最高の3.49円/kWh(出典)2024年度の賦課金単価|経済産業省資源エネルギー庁

再エネ賦課金単価は①買取費用、②回避可能費用等、③販売電力量で構成されています。

①買取費用は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)を利用して運転開始をする再エネ発電設備の電力買取に要する費用や、再エネ発電所の発電量の予測誤差を調整するための費用です。
②の回避可能費用等は、電力会社が買い取るFIT再エネ電力量分を、自社で保有する火力発電所などでの調達に置き換えた際に要するコストで、電力会社にとっては自社で調達せずに支出を免れた費用と言えます。
③の販売電力量は、年間に想定される電力需要を表しています。

そもそも2023年度の再エネ賦課金単価は安かった

この算定式に基づいて、2024年度と2023年度、2022年度の内訳を比較します。

2024年度 2023年度 2022年度
①買取費用 4兆8,172億円 4兆7,477億円 4兆2,033億円
②回避可能費用等 2兆1,322億円 3兆6,353億円 1兆4,609億円
③販売電力量 7,707憶kWh 7,946憶kWh 7,943億kWh

表から、買取費用と販売電力量には年度毎の差異がさほどない一方、回避可能費用等では大きな差があることがわかります。

2024年度と2023年度の回避可能費用等で約1兆3,000億円の差、2023年度と2022年度との比較では約2兆円と、さらに大きく差があり、2023年度の回避可能費用等が大きな額であったことがわかります。
これは、2022年~2023年にかけて化石燃料のコスト増大による電力卸売市場の市場価格が高騰したことが原因です。2023年度は回避可能費用等が増大したことによって、母数である販売電力量が相対的に大きくなったことから、2023年度の再エネ賦課金単価は比較的安い水準となりました。

再エネ賦課金値上がりの要因は3つ

1つ目は、前項の2023年度の回避可能費用等が例年よりも大きく、2023年度の再エネ賦課金単価が安かったことです。

2つ目は、化石燃料の調達コストが落ち着き始め、電力の市場価格が下落し、2023年以前の水準に近付いていることが挙げられます。しかしながら、2022年度と比べると依然として50%程度高い水準で電力市場の高止まり傾向が反映されています。

3つ目は、FIT再エネ発電所の稼働が今後も続くと予想されていることです。これは①買取費用に関係しており、再エネ発電の主軸である太陽光発電が自家消費が主流となった現在でも、FIT認定発電所の稼働残はまだボリュームがあるということです。

一般的な世帯での年間負担額は17,000円

再エネ賦課金はkWhで計算されるので、使用した電力量に応じて徴収されます。電力使用量が400kWhの一般的な世帯では、月額1,396円、年間では16,752円の負担となります。2023年度は月額560円、年間6,720円であったことを考えると、年間で1万円負担が増えることとなります。

 

そもそも、再エネ賦課金とは?

再エネ賦課金とは再生可能エネルギー発電促進賦課金の略で、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの導入を拡大させるために、電力会社がこれらの再エネ電力を買い取っていますが、この買取りに要する費用を電気料金に上乗せする形で電気を使用する家庭や企業が負担しています。この負担金および制度が再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)です。

端的に言えば、再エネ導入のためにみんなが負っている負担金です。

再エネ賦課金はkWhあたりの単価設定で、電気の使用量に応じて毎月の金額が決定します。

 

なぜ負担する必要があるのか

再エネ賦課金は電気を使用しているだけで、すべての家庭や企業が負担する必要があります。なぜでしょうか。

その答えは、2012年に始まった太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電、バイオマス発電という5つの再生可能エネルギーの導入拡大を図る再生可能エネルギー固定価格買取制度から続く国を挙げた再エネの推進にあります。なぜ再エネ賦課金を負う必要があるのかという問いは、なぜ再エネを導入する必要があるのかと同じ意味です。

日本のエネルギー自給率は11.8%

日本は諸外国に比べ資源に乏しく、2018年に日本国内で消費したエネルギーのうち自国産のエネルギーの比率はわずか11.8%です。この自給率はOECD諸国と比べてかなり低い水準です。11.8%のほとんどは水力発電を含めた再生可能エネルギーが占め、自給できていない残りの90%弱は石炭や石油、LNG(液化天然ガス)です。そしてこれら化石燃料は海外からの輸入に依存しています。

エネルギーの約90%を輸入に頼っているという事実は、非常に憂慮すべき事態です。

2020年から2021年の年末年始にかけて、JEPXの電力卸売価格が異常なまでに高騰しました。この要因の1つには、暖房などの使用で電気需要が高まる時期に、新型コロナウイルスの影響で海外から石油やLNGを積んだタンカーが日本に入ってこなくなったためと言われています。

また、日本が輸入する石油は90%以上を中東に依存していますが、ご存知の通り中東は政情が非常に不安定な地域です。仮に石油が入ってこなくなると、電力の供給不足で前述のように電気料金が高騰するきっかけとなったりさらには東日本大震災直後のような計画停電をせざるを得なくなったりする可能性があります。

こうした理由から、純国産のエネルギーとして再生可能エネルギーの導入拡大が求められています。

再エネのコスト低減→電気料金の低下

再生可能エネルギーをさらに導入し、その比率を高めていくためには、再エネが経済的にもメリットのある電源である必要があります。近年の太陽光発電は、他の火力などの電源と同程度のコスト水準か、発電所によってはそれよりも安い電力を供給していますが、すべての再エネでそうなのかと言うと、残念ながらそうではありません。再エネという括りで見れば、まだ再エネは高いのです。

今の再エネを、自由な市場で他の電源と戦わせると経済的なメリットがなく負けてしまいます。そのため、国が電力会社に対して再エネ由来の電力を買うことを法律として定めることで、まだ競争力の低い再エネでも導入できるようにしています。これが再生可能エネルギー固定価格買取制度(通称FIT法)です。

FIT法を使って導入を促すことで、設置業者間の競争が生まれコストが低下していきます。実際に、太陽光発電はFIT法施行以降、10年前からは80%、5年前からは60%、3年前からは10%という劇的なコスト低下を実現し、国の方針も太陽光発電はFIT法に頼らない自立の方向にシフトしてきています。

火力や原子力よりも安くなった太陽光発電がさらに増えることで、将来的には電気料金の低下が期待できます。

脱炭素社会の実現

2020年10月に菅首相は、2050年までに日本国内での温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする脱炭素社会を実現すると宣言しました。脱炭素社会の実現には、省エネによるそもそものエネルギー消費量を削減する取り組みが欠かせませんが、再生可能エネルギーの比率も飛躍的に上げなくてはなりません。

脱炭素社会の実現は日本だけが独自に宣言しているものではなく、パリ協定を受けて世界中がその実現を目指す世界基準の目標です。実現のためには、再生可能エネルギーの導入拡大が欠かせません。

 

再エネ賦課金単価の推移

再エネ賦課金単価の推移をご紹介します。2023年度のみ下落しましたが、制度が施行された2012年から変わらず値上がり傾向にあります。

再エネ賦課金単価の推移【2024年度最新】再エネ賦課金単価の推移

上昇の要因としては、再生可能エネルギーの固定価格買取制度を使用した再生可能エネルギーの導入が進んでいるためです。導入が進めば、それだけ電力会社が買い取る再エネの量は増え、その負担額も増大していきます。また、事業用FITの買取期間は20年間と長期であり、FIT発電所の導入が鈍化している現在においても買取負担は変わらず発生し続けています。

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