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2023年度の再エネ賦課金が値下げ|導入以来初の下落はなぜ起きたのか

ブログ 更新日: 2023.05.29

2012年度に導入された再エネ賦課金は年々増加を辿る一方でしたが、2023年度は前年度の半額以下となる1.40円/kWhに設定されています。これによって、電力需要家である利用者の負担の減少につながりました。増加傾向にあった再エネ賦課金はなぜ値下がりしたのでしょうか?今後も値下がりは続くのかなども含めて解説します。

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再エネ賦課金とは

再エネ賦課金とは、「再生可能エネルギー発電促進賦課金」の略称で、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)によって電力会社が再エネ電力の買取に要した費用を、電気料金の一部として利用者が使用量に応じて負担するものです。

FIT制度は、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの普及を目的として制定され、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買取ることを国が約束する制度です。

再エネの発電設備は環境にやさしいエネルギーですが、発電コストが高いという課題があります。FIT制度では、再エネで発電された電気を、一定期間・固定価格で電力会社が買取ることを義務付けています。

これにより、再エネ発電事業者は、安定した収入を得ることで、再エネ発電設備の設置が増え、再エネの普及が促進されます。実際にFIT制度と再エネ賦課金が導入された2012年以降、日本の再生可能エネルギー設備は年平均で26%の伸び率で増加しています。
再エネ賦課金の仕組み
出典:資源エネルギー庁『固定価格買取制度とは』

FIT制度によって発電した電力を買取る費用を賄うために再エネ賦課金は使用されます。再エネ賦課金の価格は年度ごとに見直しが行われ、FIT制度などの再エネ電力の買取費用や電力市場価格に基づき設定されます。

再エネ賦課金の導入によって電気料金が上昇するデメリットはあるものの、再エネ発電設備の普及によってCO2の排出量を抑制し、地球温暖化防止などの環境への貢献や、エネルギー自給率の向上につながっています。

再エネ賦課金単価の推移

2023年度の再エネ賦課金は1.40円/kWh

2023年3月24日の経済産業省の発表によると、2023年度の再エネ賦課金は1kWhあたり1.40円に決定し、FIT制度を開始した翌年の2013年以降から上昇を続けた再エネ賦課金が、制定以来初の下落となりました。
2022年度の単価は、1kWhあたり3.45円だったのに対して2023年度は1kWhあたり1.40円で、半額以下という急激な減少となりました。

制度開始からの再エネ賦課金の推移

再エネ賦課金は、2012年度に導入され、当時の単価は1kWhあたり0.22円でした。その後、再生可能エネルギーによる発電設備の導入量が増加に伴い、再エネ賦課金の単価も上昇し続け、2022年には制定当初の単価から約15.7倍となる1kWhあたり3.45円となりました。

制定当初から現在までの推移は以下のようになっています。

年度 単価(円/kWh) 前年との差(円/kWh)
2012 0.22 -
2013 0.35 +0.13
2014 0.75 +0.40
2015 1.58 +0.83
2016 2.25 +0.67
2017 2.64 +0.39
2018 2.9 +0.26
2019 2.95 +0.05
2020 2.98 +0.03
2021 3.36 +0.38
2022 3.45 +0.09
2023 1.4 -2.05

再エネ賦課金推移

なぜ再エネ賦課金は値下がりしたのか

再生可能エネルギーによる発電設備は増加を続け、生み出される再エネ由来の電力も増えている中で、なぜ再エネ賦課金は値下がりしたのでしょうか。

値下がりの主な要因は、電力市場価格の高騰による回避可能費用の増加です。

回避可能費用とは再エネ賦課金を算定する際に、用いられます。次に再エネ賦課金の算定方法についてみていきましょう。

再エネ賦課金単価の算定方法

再エネ賦課金の単価の算定は、毎年度、年度の開始前に再エネ特措法で定められた算定方法に則り、経済産業大臣が設定しています。
以下の計算式を元に大きく3つの要素から算定されます。

[再エネ買取費用(円) ー 回避可能費用(円) + 事務費]÷ 販売電力量(kWh)

①再エネの買取費用(円)
②回避可能費用(円)
③販売電力量(kWh)

再エネ買取費用

再エネ買取費用とは、電力会社が再生可能エネルギーを買取るために支払う費用です。
冒頭でも紹介した、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)においては、電力会社は一定期間、再生可能エネルギーを定められた価格で買取る義務があります。この買取る費用が再エネ買取費用です。

回避可能費用

回避可能費用とは、電力会社がFITによる再エネ電力を買取ることにより、本来予定していた発電を取りやめ、支出を免れることができる費用のことです。

従来は回避可能費用単価は旧一般電気事業者の電気事業に係る原価をベースに算定されていましたが、小売全面自由化に伴い、市場価格連動へと移行しました。

販売電力量

販売電力量とは、電気事業者が一般家庭や企業に販売するであろう電気の量を過去の販売電力量の実績を元に推計した販売電力量を指します。

2023年の再エネ賦課金の算定方法

以下の表は、2022年度と2023年度における再エネ賦課金の算定根拠です。
2022年度と2023年度を比較すると、買取費用と販売電力量はほとんど変わっていませんが、回避可能費用等は1兆4,609億円から3兆6,353億円と約2.5倍となっていることがわかります。

年度 買取費用等 回避可能費用等 販売電力量
2022年度 4兆2,033億円 1兆4,609億円 7,943億kWh
2023年度 4兆7,477億円 3兆6,353億円 7,946億kWh

具体的な計算式は以下のようになります。
再エネ賦課金算定方法
出典:経済産業省<再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2023年度以降の買取価格等と2023年度の賦課金単価を設定します>

市場価格と再エネ賦課金の関係性

先ほどの算定式から、回避可能費用の大幅な増加によって2023年度の再エネ賦課金単価が下がったことがわかります。

回避可能費用等は、電力会社が再エネ電力を買取ることにより、本来予定していた発電を取りやめ、支出を免れることができる費用であるため、FITなどによる発電量が火力発電などの他の発電手段によって生み出された場合の発電コストとも捉えることができます。

このコストは、過去の日本卸電力取引所(JEPX)の市場価格から算出されるため、電力市場価格が高騰していた影響を受けています。

日本の電力構成は、火力発電が約8割を占めており使用する化石燃料のほとんどを海外からの輸入に頼っているため、燃料の調達費用は市場動向や世界情勢、為替レートに左右されます。電力市場価格の高騰は、国際的な資源価格の高騰が最初の要因となり、そこにウクライナ情勢が追い打ちをかけている状況です。

電力市場価格の高騰は、世界的な燃料価格の高騰などの影響により高い状態が続いたことで、回避可能費用等が大きく膨らみました。その結果、再エネ賦課金単価が引き下げられたと考えられます。

今後の電気代の見通し

再エネ賦課金単価が下がっただけでは、電気代の負担が減るとはいえません。
2023年度の再エネ賦課金の下落は、化石燃料の高騰などを理由とした電力市場価格の高騰が原因となっているため、根本的な電気代の高騰の解決はしていないのです。

また、2021年から高騰を続けていた電力市場価格も2023年に入ってからは落ち着きを取り戻しはじめ、以前の水準に戻りつつあります。つまり、来年度は回避可能費用が減少し、再エネ賦課金が戻る可能性が高いともいえます。

大手電力会社の値上げ

大手電力会社10社の内7社が、火力発電に使うLNG(液化天然ガス)の価格高騰を受けて昨年末より経済産業省へ一般的な家庭の電力プランである、低圧の規制料金の値上げを申請していました。
この申請が、2023年5月に全て認可され、6月の使用分から規制料金が値上げされます。

値上げ幅は契約している電力会社、料金プランなどによって異なりますが、値上げ幅は20%前後、大きいところでは40%前後の値上げが予定されています。

値上げは家庭だけでなく、企業向けの高圧・特別高圧の契約プランにおいても電力会社によっては1kWhあたり3円〜4円の値上げが行われます。

今後の市場価格や燃料価格の変動などによって、値上げ幅が変更となる可能性があるため、詳細は契約している電力会社のHPをご覧ください。

まとめ

2023年度は再エネ賦課金の低下や、政府による電気代の支援によって、以前よりも電気料金は下がりつつあります。しかし、大手電力会社では値上げの実施が決まっており、電気代の支援についても2023年の9月に終了が予定されています。

今後も高騰が続く電気代を削減する太陽光発電についてご紹介します。電気代の削減には、使う電気を自分でつくって電力会社から買わない、または買う量を減らせばいいのです。
自家消費型太陽光発電を設置して発電した電気を自家消費すれば、その自家消費分は電力会社から電気を購入しないで済み、電気代を節約できます。蓄電池も併設すれば、昼間に使い切れなかった電力を貯めておき、夕方以降に放電することでさらに電気代を節約できるのでおすすめです。


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