蓄電池と太陽光発電で災害時の長期的な停電にも備える!

蓄電池 更新日: 2022.10.28

年々大型化する台風や、局地的な震災などの自然災害により長期的な停電が起きるリスクは毎年高まっています。万が一災害などで長期間の停電が起きてしまうと、企業の経営に深刻な打撃を与えかねません。本記事では、災害によって長期間の停電が起きた事例を踏まえ、停電時の蓄電池の役割や賄える電力量などについて解説します。

以下では、過去に開催した「BCP対策オンラインセミナー」のダイジェスト資料をダウンロードいただけます。


災害時の太陽光発電と蓄電池の役割

災害によって停電が起きた際に、太陽光発電と蓄電池はいずれも非常用電源として活用できます。どちらも非常用電源となり得ますが、併用することで相互的な補完ができるので最大限の効果を発揮します。

太陽光発電は、日中の間太陽の光を利用して発電ができます。この発電した電気を企業や家庭で消費する電力にあてることで電気代を削減することができます。しかし、天候によって発電量が左右され、夜間は太陽の光を得られないため発電ができません。
一方、蓄電池は電気を貯められますが、外部から電力を供給しないと充電できません。蓄電池だけでは停電した時、貯めていた電気を使えますが、残量を使い切ってしまうと外部から電力が供給できないため電気が使えなくなってしまいます。
これら2つの設備を併用することで、日中に発電している間は自分達で消費し、余った電力を蓄電池へ充電し、夜間や雨天の際は蓄電池から放電を行うことができます。太陽光発電で電力を供給しながら蓄電池で電気を貯めることができるのでお互いに補完して長期的な停電にもある程度対応することができます。

蓄電池が注目を浴びたきっかけ

家庭用蓄電池が注目を浴びるきっかけとなったのは、2011年に発生した東日本大震災によって広範囲にもたらされた停電が影響しています。

当時、大規模発電所が停止したことで、発電力が低下し東京電力管内で計画停電が実施されました。計画停電は地域をグループ分けして一度に3時間ほどの停電が実施され、事前に準備ができる停電とはいえ、電気は貯めることができないため照明やテレビ、パソコンから冷蔵庫まで全ての電化製品が止まることになりました。こうした電気に頼る部分の多いライフスタイルだからこそ、電気を備蓄しておく重要性から蓄電池が注目を浴びることになりました。
さらに2012年から蓄電池の導入に関して国からも補助金が交付されるようになり、災害への不安も相まって当時高額だった家庭用蓄電池も災害時の非常用電源として導入する家庭が増加しました。

災害によって長期停電が発生した事例

近年、台風などの大雨によって大規模停電が発生したことは皆さんもご存知かと思います。
以下ではここ数年で起きた台風による自然災害によって発生した大規模停電の件数、復旧までどのくらいの時間を要したのか紹介します。

2018年台風21号

近畿地方を中心に大規模停電が発生、停電件数は一時最大で168万軒で延べ約220万軒の停電が発生した。電柱の破損・倒壊などは1,343本、被害回線数は2,837回線数まで及んだ。
<関西電力管内の停電戸数の推移>

日時 9月4日21時 9月5日0時 9月9日0時 9月20日18時
停電戸数 約168万戸 約32万戸 約99%復旧 停電解消

2019年台風15号

千葉県を中心に大規模停電被害が発生。東京電力館内では最大約93万戸が停電(千葉県では最大約64万戸が停電)が発生。
東京電力管内は9月24日に全ての停電が解消され、復旧までに約2週間を要した。
長期化に至った要因

  • 暴風により電柱1,996本が倒壊・傾斜
  • 大規模な倒木等の影響で山間部を中心に立入困難な地域が広範囲に存在
  • 設備被害が広範囲にわたるとともに、配電線路 に多数の事故点が存在

<東京電力管内の停電戸数の推移>

日時 9月9日8時 9月10日8時 9月13日8時 9月24日19時
停電戸数 約93万戸 約63万戸 約20万戸 停電解消

過去の台風における停電復旧までの時間

災害名 最大停電戸数

99%復旧までの時間
2018年 台風21号 約240万戸(関電) 5日後
台風24号 約180万戸(中電) 3日後
2019年 台風15号 約93戸(東電) 12日後
台風19号 約52万戸(東電:約44万戸) 4日後
2020年 台風10号 約53万戸(九電:約48万戸) 2日後

<出典:経済産業省「令和2年に発生した災害の振り返りと 今後の対応について」>

停電が起きたときに太陽光発電と蓄電池を使う方法

停電時に太陽光発電で発電した電力や蓄電池の電気を利用するには、パワーコンディショナと呼ばれる機器を「自立運転」に切り替える必要があります。自立運転は停電時以外で使うことがないため、停電に遭遇した際に、やり方がわからず使えなかったなんてことにならないように自立運転の仕組みと切り替え方法を知っておきましょう。

自立運転とは

自立運転機能とは、災害などによる停電時でも太陽光発電でつくった電気を使用できる機能のことで、この機能がないパワーコンディショナーの場合、せっかく発電していても停電時に貯めた電気を利用できません。
自立運転機能は、災害時に電気が使用できないリスクに備えるための大切な機能です。

通常パワーコンディショナは系統に連携しているため、停電などの系統側の異常時に太陽光発電システムを安全に停止させる系統連携保護装置が働きます。これを自立運転に切り替えることで、系統と切り離してパワーコンディショナを運転させ、付属のコンセントに接続された機器に電力を供給することを自立運転といいます。

パワーコンディショナの系統連携保護装置は、系統側の異常時に発生する太陽光発電システムからの逆潮流によって、停電しているはずの一般家庭や停電の復旧工事を行っている現場に電気が流れ思わぬ事故を防ぐ重要な機能を果たしています。

太陽光発電を自立運転に切り替える方法

一般的な太陽光発電の自立運転モードの使用手順は以下の通りです。

  1. 「主電源ブレーカー」をオフにします。
  2. 「太陽光発電ブレーカー」をオフにします。
  3. 「自立運転モード」に切り替えます。
  4. 「自立運転用コンセント」に使用したい機器を接続して使用します。

実際の手順については、メーカーや型式によって若干手順が異なります。作業前にマニュアルで確認しましょう。

蓄電池を自立運転に切り替える方法

蓄電池には停電が発生すると自動で自立運転に切り替える機能がついているものもあります。そのような蓄電池を利用している場合、手動で切り替える必要はありません。
室内リモコンなどで自立運転に切り替わっていることを確認して利用しましょう。

  1. 「主電源ブレーカー」をオフにします。
  2. 「太陽光発電ブレーカー」をオフにします。
  3. 「蓄電池用分電盤のスイッチ」を蓄電池側に切り替えます。
  4. 「自立運転モード」にマニュアルの指示に従って切り替えます。
  5. 自立運転用コンセントに使いたい機器を接続する

基本的な流れは太陽光発電を自立運転に切り替える場合と同様なので、商品ごとの具体的な切り替え方法をマニュアルで確認しましょう。

蓄電池の「全負荷型」と「特定負荷型」

また、蓄電池には「全負荷型」と「特定負荷型」の2種類があり、停電時に使用できる電気の範囲で区別されます。

家全体の電気をバックアップしてくれる「全負荷型」蓄電池

「全負荷型」の蓄電池の場合、停電が発生すると蓄電池からの電力供給に切り替わり、普段利用しているコンセントにそのまま蓄電池から電力が供給されます。つまり停電が発生してもほとんど変わらない状態で電気を使用し続けることができます。

電力を供給するエリアをあらかじめ選んでおく「特定負荷型」蓄電池

「特定負荷型」の蓄電池は、停電が発生するとあらかじめ設定したエリア(部屋)は引き続き電気が供給されますが、それ以外の部屋では電気が供給されなくなります。電気を使える場所は限られますが、停電時に電気を使い過ぎることがありません。また、全負荷タイプに比べて価格が安い商品が多いため、ある程度導入しやすくなります。

蓄電池の容量と出力

蓄電池は「容量」と「出力」によって性能が決まります。
「容量」は電気を蓄えておける量を指し「kWh」で表します。容量が大きいほど充電しておける電力量が増えるため、蓄電池のみで電力を供給できる時間が増え、るため安心して電気を利用できます。しかし、容量が大きくなれば設置費用も増えるので予算や停電時に使いたい電化製品を検討して容量を選択しましょう。

「出力」は一度に電気をどのくらい出せるかを表します。電化製品にもよりますが出力が大きいと同時に稼働できる電化製品の数が増えます。
蓄電池の出力は一般的に1500W(1.5kW)〜3000kW(3.0kW)のものがあります。1500Wであれば冷蔵庫、照明、テレビ、スマホの充電など災害時に必要な備えができます。

もう一つ、蓄電池の「出力」のポイントとして、100Vのタイプと200Vタイプがあります。
2つの違いは、電気を流す強さが異なり、V(ボルト)の単位で表されます。日本の一般的な電化製品は100Vとなっていますが、IH機器やエアコンは200Vの仕様もあるため注意が必要です。200Vの電化製品は200Vに対応した蓄電池でなければ使用できません。蓄電池を選ぶ際には停電時に使用したい電化製品の仕様も確認する必要があります。

持ち運びができるポータブル電源として機能するバッテリーも存在します。
定置用と違って持ち運べることから、災害時に避難先に持ち運んだり、また平常時にはキャンプやレジャーなどのアウトドアに持ち運ぶこともでき、スマホの充電、電気毛布など多用途に活用できます。代表的な製品にはJackery(ジャクリ)の製品があり、最大24kWhの超大容量なモデルから965gの軽量なモデルまで幅広い製品を取り揃えています。

停電時に使用する際の注意点

停電時には自立運転となり太陽光発電で発電した電力や蓄電池に貯めていた電力を利用します。蓄電池の残量がなくなってしまうと発電電力のみを使用するため天候に左右され電力供給が不安定になります。
パワーコンディショナの供給する電力が自立運転用コンセントにつないだ電気機器の消費電力より小さい時や、蓄電池の残量がなくなってしまった場合、電力の供給が停止するため、途中で電源が切れると、生命や財産に損害を受ける恐れがある機器は使用を控える必要があります。
具体的には以下のような電気機器が当てはまります。

  • すべての医療機器
  • 灯油やガスを用いる冷暖房機器やヒータを持つ機器
  • デスクトップパソコンなどのバッテリを持たない情報機器

また、自立運転用コンセントで使用できる電力量にも制限があります。最大出力は一般的に1,500Wとなっているため、これ以上の消費電力となる電気機器は利用できません、使用する際は優先度の高いものを選定しましょう。
災害によって停電が起きた時、蓄電池の電気はどれだけ使えるのか?
蓄電池の容量には限りがあるため、停電時でも無尽蔵に電力を使えるわけではありません。残量を気にせずに使い過ぎると、本当に必要な時に電気を使用できない事態になります。
実際に停電が起きた時に蓄電池はどれくらい利用できるのか下の表を参考にみていきましょう。以下の表は一般的な家電製品の消費電力です。停電中に使用するであろう家電製品の消費電力についてまとめました。

家電 消費電力
LEDシーリングライト 34W
蛍光灯シーリングライト 68W
パソコン 20W~30W
デスクトップPC 50W~150W
液晶テレビ 50W
冷蔵庫(400L) 200W~300W
洗濯機 400W
エアコン(六畳用) 450W
エアコン(十畳~十五畳) 750W~1100W
電気ポット(沸騰時) 800W
掃除機 1000W
ドライヤー 1000W
電気炊飯器 1300W
電子レンジ 1400W
携帯充電器 5W~15W

3人から4人家族の想定で具体的に計算してみると以下のようになります。

冷蔵庫1台を24時間稼働させる 300W×24h=7,200Wh(7.2kwh)
デスクトップPC1台を3時間使用する 150W×3h=450Wh(0.45kwh)
LEDシーリングライトを6時間使用する 34W×6h=204Wh(0.2kwh)
携帯を4時間充電する 15W×4h=60Wh(0.6kwh)
合計 8.45kWh

これだけでも合計してみると8.45kWhが必要となります。
家庭用蓄電池の容量を10kwhと仮定すると、10kWh÷8.45kWh=1.18となります。つまり、10kWhの容量のみで上記の電力を賄えるのは約28時間となります。

しかし、太陽光発電を併設していれば日中の電力を賄えることができます。
太陽光発電を設置していて、日中は冷蔵庫の電力を賄えた場合で仮定すると冷蔵庫が電気を使用するのは18時から翌日の5時、300W×11h=3,300Wh(3.3kWh)となります。先ほどの電化製品の消費電力を合計しても4.55kWhになります。さらに太陽光発電で余った部分は蓄電へ回すことができるのでより長期的な停電が起こってしまった場合にも対応することができます。

災害時は節電を心がける

災害による停電が長期化する可能性は十分にあります。2019年に千葉県を中心として発生した大規模停電が最たる例ですが、山間部で倒木が電柱に倒れかかったり、事故現場への道を塞いでいたりすると修繕作業の長期化につながります。

停電が起きたら、節電を心がけて蓄電池からの電気の供給を少しでも長持ちさせることを意識しましょう。
また、省エネ製品に切り替えていくことも大切です。上記の表からわかるようにLEDシーリングライトと蛍光灯シーリングライトでは消費電力は半分であることがわかります。つまりLEDシーリングライトなら蛍光灯シーリングライトの2倍使用できます。そのほかにも最新の電化製品は消費電力が少なくなっています。買い替える際には省エネの電化製品を選ぶことも心がけましょう。

まとめ

日本では年々大型化する台風や、局地的な震災などにより災害の危機はこれまで以上に高まっています。こうした中で災害による停電対策として蓄電池の導入が注目されています。
蓄電池には今回紹介した停電対策面だけでなく、電気代削減という大きなメリットもあります。蓄電池のメリット・デメリットに関してはこちらの記事をご覧いただくとより理解が深まります。



蓄電池の導入は企業にとって必要?導入のメリットと注意点

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太陽光発電を導入している、または導入を検討されている方の中には蓄電池の導入を併せて考えている方もいるのではないでしょうか。 そこで今回は、企業が太陽光発電を導入する際の蓄電池の必要性を検討する指標の一つとして蓄電池を導入することのメリットや注意点、活用例についてご紹介したいと思います。


また、8月31日に各省庁から令和5年度(2023年度)の概算要求が発表され、太陽光発電の導入に関する補助金情報も公開されました。発表されている補助金の一部では蓄電池併設型の導入を支援しているもの、蓄電池導入を必須としているものもあり国全体で蓄電池を含む蓄電システムの拡充を後押ししていく意図があるようです。発表された各補助金の詳細についてはこちらの記事をご覧ください。



【令和5年度|2023年度】太陽光発電に関連する補助金の概算要求情報まとめ

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8月31日に各省庁から、令和5年度(2023年度)の概算要求が発表され、太陽光発電の導入に関する補助金情報も公開されました。需要家主導補助金やストレージパリティ補助金など、今年度展開されていた補助金が令和5年度も継続される見込みです。


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