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サハリン2だけでは終わらない|ウクライナ侵攻で再考する日本のエネルギー問題

ブログ 2022.03.16

サハリン2だけではないウクライナ侵攻による日本のエネルギー問題

ウクライナ侵攻による日本への影響で注目されている「サハリン2」。日露英・蘭の4社が出資する(していた)サハリン州北東部沿岸の石油および天然ガス複合開発プロジェクトは、今回のロシアによるウクライナ侵攻を受けて、2022年2月28日に英蘭シェル社が撤退を表明しました。日本からは三井物産と三菱商事が出資をしており、国家間の複雑な問題をはらむため今後の動向が注視されています。

本記事では、サハリン2だけでは終わらない、ウクライナ侵攻で生じている日本のエネルギー問題、とりわけ安全保障への影響、今後の方向性を考えます。

 

 

サハリン2とは

サハリン2とは、日露英・蘭の4社が出資する(していた)サハリン州北東部沿岸の石油および天然ガス複合開発プロジェクトです。プロジェクトのオペレーターはサハリン・エナジーが務めます。日本からは三井物産、三菱商事、英蘭はシェル社、ロシアは国営ガス会社のガスプロム社が出資をしており株主構成は以下の通りです。

  • ガスプロム社:50%+1株
  • シェル社:27.5%-1株
  • 三井物産:12.5%
  • 三菱商事:10%

サハリン2プロジェクトはロシア初のLNG(液化天然ガス)開発プロジェクトで、2009年から出荷を始めました。年1,000万トンの生産量があり、そのうちの約6割は日本向けに輸出され、日本のLNG調達の大部分を占めます。

 

日本企業はサハリン2から撤退しない見通し

ロシアのウクライナへの侵攻を受けて2022年2月28日に英蘭シェル社が、サハリン2プロジェクトの全事業からの撤退を表明しました。これを受けて日本から参画している三井物産および三菱商事の2社、そして日本政府、経済団体の動向が注目されていますが、現在まで撤退の動きは見られません。

3月3日|三村明夫日本商工会議所会頭

「(日本企業は)すぐに『右へならえ』でやるべきだとは思わない。じっくり考慮して結論を出してもらいたい」「三井物産や三菱商事の単独の問題ではなく、背景には(石油や天然ガスを)使っている日本のガス会社や電力会社がいる」「(日本が撤退した場合)LNGは中国に行くのではないか。ロシアを困らすことにはならず、日本のユーザーが大変なことになる」と述べています。

3月7日|経団連十倉雅和会長

「各国とも基本理念としては制裁を加えるが、エネルギー安全保障をみながら現実的にやっている」と述べています。

3月9日|萩生田経済産業大臣

「日本が撤退してロシアがダメージを受けるなら制裁になるが、撤退してもダメージを与えられなければ塩を送ることにもなってしまう」と述べています。

 

日本企業がサハリン2から撤退しないわけ

ロシアへの対抗策として西側諸国が経済制裁を強めている中、日本も同調していくつかの制裁を行っています。しかし、サハリン2については、上記の関係者からの見解にもあるように、英国やサハリン1から撤退したエクソンモービルの米国と同調した撤退には慎重な姿勢を取っています。
その理由は国内への影響とエネルギー安全保障の観点の2つがあります。

石油・天然ガス関連商品の高騰への懸念

報道でもよく取り上げられるガソリン価格は、ウクライナ侵攻以前から高止まり傾向にあり、1月末から価格を押し下げる補助金を開始する異例の対応を取ってきました。ウクライナ侵攻後の3月4日には、補助金を上限額である25円に引き上げる追加政策を表明しました。
すでに現行で最大の補助を展開している中、サハリン2から撤退するとLNGの供給がストップし、さらにガソリン価格が上昇する可能性があります。
また、ガソリン以外にも電気料金の上昇などが考えられ、我々の生活に少なくない影響が及びます。

エネルギー安全保障の問題

周知の事実で、日本はエネルギー需要の7割を化石燃料で賄っていますが、国内に化石燃料資源は乏しいため海外からの輸入に大きく依存しています。ロシア以外からは中東諸国から多く輸入していますが、こちらも周知の通り、中東は常に不安定な情勢というリスクがつきまとっており、輸入先を中東にほぼ限定してしまうことは大きなリスクを負います。そのため、比較的安定しているロシアのルートをなかなか手放せないのです。
加えて、三村商工会議所会頭や萩生田経産相の言葉にもあるように、日本企業が撤退したとしても、その穴を埋めるのはロシアと近い関係にある中国であろうということです。サハリン2からの撤退は、日本のエネルギー調達をさらに困難にするだけでなく、ロシアと中国をより強力にしてしまう安全保障上の重大な懸念があります。

撤退した英蘭シェル社は、日本がサハリン2で産出されたLNGを日本国内に供給しているのに対し、自国へ輸送するのではなく極東アジア地域への供給を主軸としていることから、日本に比べて撤退により生じる影響は小さいと考えられ、ロシアのウクライナ侵攻から1週間足らずという早い段階で撤退という判断が取れたと想定できます。

 

国産再生可能エネルギーへの転換を

ウクライナ侵攻により改めて日本のエネルギー安全保障の脆弱性が露呈されました。過去、大きな契機となったのは1970年代のオイルショックで、戦後最大のエネルギー安全保障の危機が発生しました。これを受けて、調達する燃料を石油だけでなく石炭、天然ガスへ多角化を行い、調達先も中東依存度を低下させました。

しかしながら、結局のところ、化石燃料は輸入に頼らざるを得ず、本質的な安全保障という観点では自国産エネルギーの自給率を上げることが根本的な解決策です。そこで取り組んだ施策が原子力発電でした。ただ、原発にしても自給率を大きく引き上げるまでには至らず、3.11以降、原発を組み込んだエネルギー施策には懐疑的な意見も多く上がっています。

化石燃料に乏しく、原発も信頼性に欠けるとなると、日本のエネルギー安全保障の問題は今後も長く続いていく課題に間違いありませんが、一つの朗報は、脱炭素への転換に舵を切り始めたことです。

再生可能エネルギーは日本の国土で生産される純国産のエネルギーで、太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱と発電方法および発電所の設置場所には、火力発電や原発にはない柔軟性があり、おおよそ日本のどこでもいずれかの再生可能エネルギーの生産が可能です。現在、脱炭素・気候変動対策の観点から再生可能エネルギーの導入が推進されていますが、安全保障の観点からも多大なメリットがあります。

ロシアのウクライナ侵攻に端を発したサハリン2からの撤退の是非をきっかけに、再び日本のエネルギー安全保障が議論されていますが、過去のオイルショックのようにこれを契機として、再生可能エネルギーの導入がさらに加速することを期待します。

 

2022年2月末にロシアがウクライナに侵攻して以降、多数の犠牲者、被災者、難民が発生し、国際法で定められたウクライナの主権と領土は理不尽にも蹂躙されています。どのような理由であれ、何の罪もない一般市民が戦闘に巻き込まれ命を落としている時点で、その行為と理由には一切の正当性も生じません。一刻も早く、ウクライナの人々に平穏な日々が戻ることを願います。

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