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電気代の約3割を占める託送料金とは?

電気料金 更新日: 2024.04.18

電気代の仕組みと聞くと、「基本料金」や「従量料金「再エネ賦課金」を想像する方が多いかと思いますが、「託送料金」が電気代の約3割を占めていることはご存知でしょうか。

今回ご紹介する託送料金は、基本料金や従量料金単価に深く関わっています。さらに託送料金は、2023年度から仕組みが変更され、2024年度には託送料金の改定により電気代が影響を受けました。あまり聞き馴染みのない託送料金ですが、電気料金を決定する要素として重要な託送料金の算定の仕組みやその背景、目的についてご紹介します。


託送料金とは

託送料金とは、一般送配電事業者へ支払う電気を送る際の送配電網の利用料金のことを指します。
2023年度までは、電気を販売する小売電気事業者が、送配電網を管理する一般送配電網事業者へ販売する量に応じた託送料金をすべて支払っていました。しかし、2024年度からは発電事業者側にも発電した電力に応じて託送料金の一部を支払う発電側課金制度が開始されました。

一般送配電事業者は、発電された電力を離れた需要地へ送るために送電網の整備を行っており、系統を利用する発電事業者と小売電気事業者に対して課金されています。この一般送配電事業者へ支払っている託送料金が、電気を利用する私たちに託送料金相当額として、転嫁されています。

一般送配電事業者とは

一般送配電事業者は、発電された電気を使用場所まで送り届ける事業者のことを指します。
一般送配電事業を営むには、経済産業省からの認可が必要で、日本には10社の一般送配電事業者が存在し、日本の供給区域10区域にそれぞれが配備されています。

一般送配電事業者

  • 北海道電力ネットワーク
  • 東北電力ネットワーク
  • 東京電力パワーグリッド
  • 中部電力パワーグリッド
  • 北陸電力送配電
  • 関西電力送配電
  • 中国電力ネットワーク
  • 四国電力送配電
  • 九州電力送配電
  • 沖縄電力

託送料金の仕組み

一般送配電事業者へ支払われている託送料金には、送配電に関わる諸費用に加えて、電源開発促進税や賠償負担金、廃炉円滑負担金が含まれています。これらの税額が相当額として小売電気事業者や需要家に転嫁されます。
電気料金設定の仕組み
(出典)料金設定の仕組みとは?|資源エネルギー庁

電源開発促進税

電源開発促進税とは、一般送配電事業者が納める税金のことを指します。
この税金は、原子力発電施設、水力発電施設、地熱発電施設等の設置の促進と運転の円滑化、発電施設の利用の促進と安全の確保、電気の供給の円滑化を目的に利用される税金とされています。この税金は販売する電力量に応じて、一般送配電事業者が納める必要があります。需要家には電源開発促進税相当額として転嫁されます。

賠償負担金

賠償負担金とは、福島第一原発の事故前に確保されておくべきであった賠償への備えの不足分の一部の約2.4兆円が、2020年以降託送料金として年間600億円程度をが40年間にわたって回収するとして、託送料金の一部に加えられます。これが需要家に賠償負担金相当額として徴収されます。

廃炉円滑負担金

「エネルギー基本計画(2018年7月閣議決定)」で示されている原発依存度の低減というエネルギー政策の基本方針の下、円滑な廃炉を促すために原子力発電所の廃炉に必要な費用を託送料金の仕組みを利用して需要家から回収するものです。

従来の託送料金の計算方式「統括原価方式」

2022年度末までの託送料金の計算方法は「統括原価方式」と呼ばれるものでした。統括原価方式とは、電気を安定的に供給するために必要な燃料費や購入電力料金、人件費などの原価に加えて、事業報酬を加えた額を原価として、電気料金の収入と等しくなるように料金を設定する方法です。公共性の高いサービスで採用されていることが多く、社会の基盤となる公益性の高い事業で用いられます。
託送料金設定の仕組み
(出典)料金設定の仕組みとは?|資源エネルギー庁
統括原価方式では、電力会社の実際の運営コストを基に料金を設定するため、安定的に電力の供給ができ、長期的に予測可能な収益を確保できるため投資計画を立てやすくなります。
一方で、事業報酬があらかじめ設定されているため、コスト削減などの企業努力が行われにくいということが言えます。
統括原価方式による託送料金の設定方法
(出典)料金設定の仕組みとは?|資源エネルギー庁

2023年度から導入されたレベニューキャップ制度

統括原価方式をとっていた託送料金制度ですが、2023年度からレベニューキャップ制度の導入が開始されました。
レベニューキャップとは「収入上限」を意味します。この新しい託送料金制度では、一般送配電事業者が一定期間ごとに収入上限について国からの承認を受け、その範囲で柔軟に料金を設定できることとされています。
レベニューキャップ制度とは
(出典)一般送配電事業者を取り巻く情勢と今後の費用回収の在り方について|資源エネルギー庁

レベニューキャップ制度の導入による効果

レベニューキャップ制度の導入による効果は以下の3つになります。

一般送配電事業者のコスト効率化

レベニューキャップ制度により、一般送配電事業者の収入上限内であれば利益を全て受けることができるため、送配電費用の効率化やコスト削減に努めることが見込まれます。

投資に必要な資金の確保

レベニューキャップ制度では、5年分の事業計画を提出し、収入上限の承認を受ける必要があります。しかし、異常気象や災害などによる突発的な支出が発生した場合、その費用を翌期の収入上限に加えることができます。そのため、緊急事態に陥っても経営悪化に陥ることなく投資資金を確保できます。

託送料金の需要家負担の軽減

一般送配電事業者は収入上限内での利益最大化のため、コスト効率化に努めます。効率化により削減したコストは翌期の収入上限からは差し引いた形で反映されます。これを繰り返していくことで、送配電コストの効率化が進み需要家への負担が軽減されることが期待されます。

レベニューキャップ制度導入の背景

制度導入の背景には、一般送配電事業者における必要な投資の確保とコスト効率化を通じた、再エネ主力電源化やレジリエンス強化があります。

再エネ主力電源化

2030年時点の電力需要は、人口減少や省エネルギーの進展などにより、2013年度とほぼ同レベルと見込まれています。系統電力需要が減少している一方で、脱炭素化の推進に伴い、再生可能エネルギーの接続容量は増加を続けています。脱炭素化社会の実現には、送配電網の増強が不可欠となっています。

レジリエンス強化

送配電網の強化に加えて、今後は既設の送配電網の修繕や更新に多額の費用が必要になると見込まれています。今ある送配電網の多くは1970年前後の高度経済成長期に整備された鉄塔で、経年劣化が進んでいます。こういった老朽化が進んだ設備の更新だけでなく、自然災害に備えたさらなる強化が必要となっています。
一般送配電事業者を取り巻く情勢と今後の費用回収の在り方
(出典)一般送配電事業者を取り巻く情勢と今後の費用回収の在り方について
こうした背景からレベニューキャップ制度が導入され、計画的な投資計画の策定と事業者に効率化を促すためのインセンティブの仕組みが取り入れられ、必要な投資の実施とコスト効率化の両立を目指しています。

2024年度から見直される託送料金

こうした経緯から、2023年から2027年の事業計画を基に2024年度の4月から託送料金が改定されます。以下の表は発電事業者または、小売電気事業者が一般送配電事業者へ支払う平均単価になります。

託送料金の電圧別平均単価の概要

低圧 高圧 特別高圧
円/kWh 改定率 円/kWh 改定率 円/kWh 改定率
北海道電力NW 10.02 8.3% 4.81 14.1% 2.83 4.7%
東北電力NW 10.75 10.1% 4.83 3.6% 2.32 2.7%
東京電力PG 9.02 2.2% 4.24 8.4% 2.40 6.0%
中部電力PG 9.51 4.6% 3.91 12.7% 2.07 7.8%
北陸電力送配電 8.98 14.4% 4.57 17.2% 2.35 20.5%
関西電力送配電 8.20 3.5% 4.85 17.2% 2.38 3.4%
中国電力NW 9.63 16.2% 4.75 17.5% 2.07 11.8%
四国電力送配電 9.72 10.6% 4.81 13.2% 2.38 3.9%
九州電力送配電 9.68 10.8% 4.60 15.3% 2.62 7.8%
沖縄電力 11.88 13.3% 6.73 16.8% 4.21 15.0%

託送料金の算定における 費用配賦、レートメークの審査についてより一部編集して作成

これらの託送料金の値上げにより、需要側にも以下のように影響します。
需要側料金1kWhあたりの平均単価の変動額
需要側料金1kWhあたりの平均単価の変動額
託送料金見直しの当社電気料金への反映について | 東京電力
託送料金の改定により、需要側においても値上がりの影響を受けることになります。一般家庭で想定すると1ヶ月あたり200円前後の値上がりが予想されます。

まとめ

従来の託送料金は、統括原価方式と呼ばれる、一般送配電事業者の安定的な運営に必要なコストに加えて、固定された利益を上乗せした金額が電気料金の収入と同じ形になるように設定されていました。
安定的な収入の予測がつきやすく、長期的な事業計画がつきやすい一方で、企業による送配電の効率化やコスト削減などの経営努力が収益に反映されないという一面もありました。
脱炭素化や異常気象などの災害への対策として、送配電網の強化が必要な中で、必要な投資とコスト効率化の両立を進めるため、レベニューキャップ制度という新たな託送料金制度が始まりました。
レベニューキャップ制度の導入初期は、先述した投資費用を事業計画の中に計上するため、託送料金が値上がりします。
しかし、こうした投資と企業努力によって、一般送配電事業者がコスト削減や、効率化に成功すれば将来的に託送料金が安くなり、需要家である私たちに還元されることが考えられます。

自家消費型太陽光発電で電気代を削減

今回は、電気料金を構成する要素の1つとして託送料金についてご紹介しました。託送料金は、電力会社を通して電気を利用する全ての需要家に託送料金相当額として転嫁されます。

電気料金は、こうした国内環境や、世界情勢のさまざまな要素による影響を受けて変動します。こうした変動リスクを抑えるには、自社で発電設備を持つことが1番です。自社の屋根や敷地内に太陽光発電を設置し、発電した電力をそのまま自社で使用することで、その分は電力会社から買わずに済み、変動リスクを減らすことができます。

また、自家消費型太陽光発電には、環境省や経済産業省、国土交通省そして自治体から導入の際に利用できる補助金が用意されており、費用を抑えながら導入できる可能性があります。以下からは太陽光発電の導入で活用できる最新の補助金資料を無料でダウンロードいただけます。お手にとってぜひ太陽光発電の導入のご検討にご利用ください。


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