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全国で発生した太陽光発電の出力制御|なぜ出力制御が起きたのか?

太陽光発電 更新日: 2023.06.29

近年、再生可能エネルギーの利用がますます普及しており、その中でも太陽光発電は注目を集めています。社会全体で太陽光発電の普及が進む一方で、電力の供給過多により再エネ電力の出力制御が行われることがあります。

再エネの普及が進んだ当初は、滅多に起こらないとされていた出力制御も、2018年10月に九州電力で初めての出力制御が実施され、九州電力内で毎年発生していました。その他のエリアでは、発生していなかった出力制御も2022年度には、北海道・東北・中国・四国・沖縄と多くのエリアでの実施が記録されました。そして、2023年4月の中部電力内の出力制御に加え、北陸電力・関西電力においても出力制御を記録し、東京電力を除くすべてのエリアで出力制御が実施されました。
この記事では、なぜ出力制御が発生するのか、その要因や対象範囲、影響について解説します。
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出力制御とは

出力制御とは、電力の需要と供給を一致させるために、発電事業者へ電力の供給(出力)を一時的に制御することを指します。出力制御は電力会社が発電事業者に対して要請します。
電気は基本的に貯めることができないため、発電と同時に消費が行われる必要があります。つまり、電力消費量と電力供給量を常に一致させ続ける必要があります。この電気をつくる量と電気の消費量が、同じ時に同じ量になっていることを「同時同量」といい、これらの量が常に一致していないと、周波数が乱れてしまい、電気の供給が正常にできなくなってしまいます。

なぜ出力制御は発生するのか

出力制御には、① 需給バランスによるものと、② 送電線の容量(電力系統の安定性を含む)によるものがあります。それぞれの要因について詳しくみていきましょう。

需給バランス制約による出力制御

電気の需要と供給を一致させるためには、需要に合わせて市場で取引された電源等を動かすとともに、常時変動する需要に合わせて、電気の安定供給に必要な電源を調整することで需給バランスを維持しています。
この常時変動する需要に対応するための制御が「需給バランス制約による出力制御」です。

近年では、再生可能エネルギーの導入が進んだことにより、需要が少ない時期などには、火力発電の出力の抑制や地域間連系線の活用等により需給バランスを調整した上で、それでもなお電気が余るおそれがある場合に再生可能エネルギーの出力制御が実施されます。

送電容量制約による出力制御

送電線・変圧器に流すことのできる電気の量には上限があり、これを超過して電源を接続した場合には、日々の運用において上限を超える場合に電源の出力制御が必要になります。これを「送電容量制約による出力制御」といいます。
発電事業を始めるにあたり、発電した電気を送るための送電容量を確保するため、一般送配電事業者又は配電事業者に接続契約を申し込む必要があります。
送電容量確保の順番は、公平性や透明性を保つために全電源において接続契約申込み順に確保するという考え方となっています。これを「先着優先ルール」と言います。仮に空き容量が無くなっている系統に、現時点で流れている電気が少ないと言う理由で別の事業者を接続させると、既に送電容量を確保している事業者が運転を開始する時点で送電容量が不足し、送電が出来なくなるなど事業予見性に影響が出ることになります。
先着優先ルール

出典:なるほどグリッド(資源エネルギー庁)

出力制御の対象となる発電所は?

電力系統における需要と供給のバランスが崩れてしまうと、周波数に乱れが生じ、電子機器の故障や最悪の場合大規模停電が発生します。そのため、系統に電気を送る全ての発電所が出力制御の対象となります。
供給量を調整する際には、法令などであらかじめ決められた以下の「優先給電ルール」に基づいた優先順位で出力制御がされます。

火力発電>バイオマス発電>太陽光・風力発電>水力・原子力・地熱発電

優先給電ルール

出典:なるほどグリッド(資源エネルギー庁)

電気の発電量がエリアの需要量を上回る場合、まず火力発電の出力の抑制、揚水発電のくみ上げ運転による需要創出、地域間連系線を活用した他エリアへの送電を行います。それでもなお発電量が需要量を上回る場合には、バイオマス発電の出力の制御の後に、太陽光発電、風力発電の出力制御を行います。
この制御の順番には各発電の発電コストや技術的特性が関係しています。水力・原子力・地熱は「長期固定電源」と呼ばれ、出力を短時間で小刻みに調整することが技術的に難しく、一度出力を低下させるとすぐに元に戻すことができないため、最後に抑制することとされています。発電量をコントロールしやすい火力から順番に出力制御がされていきます。
出力制御の順番

出力制御による補償ルール

出力制御が発生した間は発電することができないため、投資としてFIT制度で売電している発電事業者は、その間売電収入が減ってしまいます。しかし、出力制御は再エネ特借法で定められており、これに同意することがFIT認定の前提条件となっているため、必ず対応しなければなりません。FIT制度が導入された当時(2012年〜2015年)はこの出力制御は滅多に起こらないものと言われていたため、当初のFIT制度は出力制御をさほど考慮していませんでした。しかし、再エネの導入量が増え次第に出力制御の必要性が出てくると、何度もルールの変更が行われ複雑になっています。
出力制度におけるルールは3つあり、旧ルール、新ルール、指定ルールの3つのルールに分類されます。それぞれ「無保証での出力制御上限」と「出力制御機器の設置義務」が異なります。どのルールが適用されるかは「発電所の運転開始時期」または「電力系統の接続可能量」によって決定されます。
それぞれについて詳しくみていきましょう。

旧ルール:運転開始時期が2012年〜2015年頃

旧ルールは、30日ルールとも呼ばれ対象となるのは、FIT制度が導入初期の2012年〜2015年に運転を開始した発電所です。出力制御を要請できる日数は年間30日で、対象となる発電所も500kW以上の発電所に限られ、オンラインで出力制御に対応したパワコンの設置義務は不要となっています。

新ルール:運転開始時期が2015年1月26日以降

FIT制度の後押しで太陽光発電が拡大したことにより、旧ルールだけでは需給バランスの調整が困難になってきたことを受けて、2015年に再エネ特借法が改正されました。新ルールは360時間ルールとも呼ばれ、対象は2015年1月26日以降に運転を開始した発電所(一部例外あり)です。従来の出力制御の要請が年間30日から年間360時間分に変更されました。また、オンラインで出力制御が可能なパワコンの設置が義務付けられました。

指定ルール:電力系統の接続可能量を上回った時点以降に接続申し込みを行った発電所

新ルールの適用後も太陽光発電所数は増加を続け、電力系統の接続可能量を超える接続申込量を受けて、国は新たなルールを設けました。それは、「電力系統への接続申込量が接続可能量を上回った時点から、それ以降に接続申込をした発電所の出力制御は日数に上限を設けずに要請できる」というもので、国から指定を受けた電力会社だけが対象となるため「指定ルール」と言われています。
この再エネ特借法が改正された時点で、北海道電力、東北電力、九州電力は接続申込量が接続可能量を上回っていたため、旧ルールから指定ルールに以降しました。そのほかの電力会社も徐々に接続可能量を上回り始め、指定ルールへの移行が進み、現在では全ての電力会社で指定ルールが適用されています。

2022年4月1日施行された再エネ特借法の改正内容

さらに旧ルールで出力制御の対象外であった、10kW以上500kW未満の発電所も出力制御の対象に含まれるようになりました。これらをまとめると無保証での出力制御上限について以下のような表になります。
詳細については各電力会社のHPをご覧ください。

出力制御区分 旧ルール 新ルール 指定ルール
500kW〜 年間30日 年間360時間 無制限
10kW〜500kW 年間30日(new)
10kW未満 当面の間、出力制御実施対象外
オンライン制御対応のパワコン設置義務 不要(オンライン可) 必要 必要

電力会社ごとの出力制御の実施状況

各電力会社の出力制御実績
九州エリアでしか実施されてこなかった出力制御も、2022年度にはエリアを大きく広げて実施され、2023年4月に中部エリアで初めて出力制御が実施されました。2023年06月時点で東京電力エリアを除いた全てのエリアで出力制御の発生を記録しています。

中部エリアの再エネ導入状況は2023年3月末時点で、1,156万kW(太陽光1,120万kW、風力36万kW)となり、2013年3月末から年平均24%の伸び率で再エネが拡大しました。その結果優先給電ルールに基づく対策を実施した後も、エリア供給力がエリア需要などを上回る見通しであったため、中部エリアで初めての再エネ電力の出力制御が発生しました。

出力制御が起きやすい時期

出力制御は、電力供給量が需要を上回る際に実施されます。電力供給において発電量が変動的な太陽光発電の発電量が多い時期と、需要が少ない時期が出力制御が起きやすい時期と言えるでしょう。
太陽光発電にとって、雨が少なく、気温が高すぎず、低すぎない環境の5月が最も発電量が大きくなります。しかし、5月は全国的に過ごしやすい気候であるためエアコンの使用がなく電気消費量が一番少ない時期になります。そのため出力制御が起こりやすい時期になります。

自家消費型太陽光発電なら出力制御は起きない

出力制御は、系統を流れる全ての発電所が対象となります。これまで出力制御と聞くと、九州エリアでの発生がイメージされますが、今後は全国エリアが対象になってきます。今後も出力制御が起きることが予想される中で、発電した電力のメリットを最大限に享受するには、発電した電力を系統に流さずにそのまま自社で消費することが1番です。

現在は、FITの売電価格が電力会社から購入する電気料金よりも安くなったため、太陽光発電で発電した電気は売るよりも自社で自家消費して、電力会社から購入する量を減らした方がお得です。

自家消費型太陽光発電を導入することで電気代の削減だけでなく、脱炭素の推進や非常用電源としての活用などさまざまなメリットがあります。

以上、太陽光発電の出力制御が起きる要因や適用されるルールについてご紹介しました。
電気の性質上、需要と供給を一致させ続ける必要がある中で、太陽光発電の性質である変動的な発電量によって出力制御が実施されてしまうのは仕方ないこととも言えます。
出力制御は、全国で実施された実績がありますが、そのほとんどは春先に発生します。出力制御が起きても、一時的な停止や抑制となるので大きな損失になることは考えにくいでしょう。出力制御の対象は、系統に電気を流すすべての発電所が対象となるのでオフサイトPPAによって発電された電気も対象となります。電気代の削減のために太陽光発電を導入する際にも系統を伝わって消費する場合は、出力制御の対象となるので注意が必要です。


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