2024年度のFIT制度【太陽光】企業の屋根区分を新設

法制度 更新日: 2023.04.20

2023年1月31日に行われた調達価格等算定委員会において、2024年度のFIT制度の買取価格案が示されました。
2023年度の価格がほぼ継続される一方で、10kW以上の屋根設置区分の新設が提案され、地上設置型よりも高い価格が設定される見通しです。詳細と論点についてまとめます。

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FIT制度(固定価格買取制度)とは?

まず初めに、FIT制度について簡単におさらいいたします。FIT制度とは「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(Feed-in Tariff)」の略で、再生可能エネルギーの普及促進のために2012年に運用が開始されました。太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーで発電された電力を、電力会社が一定の固定価格で買い取ることを定めた法律です。
太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電、バイオマス発電の5つのエネルギーが対象です。

火力発電や原子力発電などの他電源に比べ市場での価格競争力がまだ弱く、技術的にも成長段階にある再生可能エネルギーの電力を固定価格で買い取ることで、再エネ発電所を持つ発電事業者は市場での取引を回避でき、かつ長期の収支計画が立てられ、安定した事業運営が可能となります。

FIT制度下で太陽光発電の導入が加速

FIT制度が始まった2012年度の太陽光発電の累計導入量は911万kWでしたが、5年後の2017年には5倍の4,773万kW、2020年には7倍の6,476万kWと、FIT制度を契機として普及が大きく進展しました。今では、日本の太陽光発電の導入量は中国(1億5,364万kW)、アメリカ(9,549万kW)に次ぐ世界第3位を誇ります。(2020年)

一方で、単年度の導入量で見ると、FIT制度の買取価格が低下した関係で2014年をピークに減少、近年は横ばい傾向にあります。政府が掲げる2050年カーボンニュートラルの達成に向けては、さらなる導入拡大の必要がありますので、今後の太陽光発電の導入促進策が期待される状況です。

太陽光発電の累計導入量(出典)エネルギー白書2022:資源エネルギー庁、IEA公開資料より作成

太陽光発電の単年度導入量(出典)エネルギー白書2022:資源エネルギー庁、IEA公開資料より作成

太陽光発電のFIT制度は卒FIT・FIPの自立路線へ

FIT制度の恩恵を受け太陽光発電は急速に普及しました。普及とともにコストも低減され、発電時のコストは火力発電や原子力発電を下回り、最もコストの安い電力にもなりました。これを受け、数年前から政府の太陽光発電の方針は、FIT制度におんぶにだっこの状態から脱却し、徐々に市場での取引へ移行させる路線に転換しています。

住宅用FIT太陽光発電は、買取期間の10年が過ぎた物件も出始めており、FITが終了した太陽光発電の電力の買取サービスとして「卒FIT」が注目されています。自家消費し切れず余った電力を買い取るサービスが、大手電力会社や大手新電力会社から展開されています。

10kW以上の事業用、特に高圧以上の大きな設備については、新たにFIP制度が適用されるようになりました。FIP制度では、FIT制度同様に一定の買取価格水準は保証されていますが、FITよりも割安で、市場での取引結果が買取価格に反映される仕組みになっています。

このように、太陽光発電におけるFIT制度は、ある種の保護から自立へと移行段階にあります。

(参考)制度の概要|FIT・FIP制度|なっとく!再生可能エネルギー:経済産業省資源エネルギー庁
(参考)エネルギー白書2022:経済産業省
(参考)買取価格・期間等|FIT・FIP制度|なっとく!再生可能エネルギー:経済産業省資源エネルギー庁

 

2024年度のFIT買取価格(暫定案)

2023年1月31日に開催された、FIT制度の買取価格等を議論する調達価格等算定委員会において、2024年度における各電力の買取価格が提案されました。正式な決定ではない暫定案ではありますが、例年は変更なく採用されています。

ここでは、太陽光発電の買取価格について取り上げます。

10kW未満(住宅用)は16円で据え置き

2024年度の10kW未満太陽光発電のFIT買取価格案(出典)令和5年度以降(2023年度以降)の調達価格等について 別紙:経済産業省資源エネルギー庁 第84回調達価格等算定委員会

10kW未満(住宅用)太陽光発電の買取価格(FIT調達価格)は、2023年度の16円/kWhを据え置きます。余剰売電比率も変わらず70%(自家消費比率30%)のままです。

住宅への太陽光発電の導入は下落傾向にありながら、システム費用やランニングコストには目立ったコスト低下が見られないため、買取価格にも変化はありません。

事業用低圧は据え置き10円と事業用250kW未満は9.2円

2023年度と2024年度の事業用太陽光発電のIFT買取価格(出典)令和5年度以降(2023年度以降)の調達価格等について 別紙:経済産業省資源エネルギー庁 第84回調達価格等算定委員会

10kW以上(事業用)太陽光発電の2024年度FIT買取価格は、地上設置型の10kW以上50kW未満の低圧区分は10円/kWhに据え置きます。50kW以上250kW未満では9.2円/kWhと0.3円低下します。2023年度に記載のある自家消費率50%の要件が、2024年度分は記載がありませんが、地域活用要件(自家消費率および災害時自立運転機能等)が継続して適用されますので、自家消費が前提の認定となります。
システム費用は2023年度と同等か多少コスト減としていますが、土地造成費が大幅に増加したため2023年度価格の据え置き、また若干の低下となりました。

また新たに、屋根設置の区分が設けられ、10kW以上屋根設置で12円/kWhが設定されます。2024年に限らず、2023年度下半期にも適用されます。
地上設置型に比べ土地造成費はかからないものの、屋根特有の事情を考慮しシステム費用は高めに見積もられています。

地上設置、屋根設置の区分によらず10kW以上50kW未満については、原則、自家消費型の地域活用要件が適用されます。災害時に地域に電源供与ができるように、自立運転が可能な設備と体制を整える必要があります。

高圧250kW以上はFIP入札制に統一

2023年度2024年度の250kW以上太陽光のFIT・FIP買取価格(出典)令和5年度以降(2023年度以降)の調達価格等について 別紙:経済産業省資源エネルギー庁 第84回調達価格等算定委員会

250kW以上では、2024年度はFIPの入札制のみ対象となります。2023年度の500kW未満までであれば、FIT入札制かFIP基準価格9.5円のどちらかを選択できましたが、2024年度からは250kW以上はFIP入札制に統一されます。2023年度の入札制における上限価格も公開されています。

(参照)令和5年度以降(2023年度以降)の調達価格等について 別紙:経済産業省資源エネルギー庁 第84回調達価格等算定委員会

 

2024年度のFIT制度|法人向け屋根区分を新設

2024年度からは企業の工場や倉庫の屋根への設置を想定した、10kW以上屋根置き区分が新設されます。地上設置型とは異なり、容量での区別はなく、10kW以上で一律のFIT買取価格となります。こちらは30%以上の自家消費要件が付与されますので、余剰売電型となります。

また、2023年度下半期の申請においても、屋根設置型であれば2024年度の買取価格が適用されるとしています。上半期は2023年度の買取価格が適用されます。

企業の屋根置き区分新設の背景

背景には、政府が掲げる2050年カーボンニュートラルの達成、さらに近い目標では2030年での温室効果ガス46%削減(2013年比)および2030年エネルギーミックスの再エネ比率36~38%という導入目標があります。この2030年目標の達成に向けては、現状の導入ペースでは達成不可能であることがすでに判明しており、さらに導入拡大を促すために屋根設置型の太陽光発電の区分が設けられました。

また、昨今の電気代高騰への対応もあろうかと思います。太陽光発電の導入によって、電力会社から購入する電力量をできるだけ少なく抑え、企業における電力コストを低減し経営への圧迫を解消することができます。

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企業で想定される活用場面|活用のメリットはあるか

2024年度から従来よりも高めのFIT買取価格で屋根置き区分が追加されることで、活用を検討する企業もあるかと思います。しかし、昨今の電気料金が高騰している状況下では、FITを用いて売る電気よりも電力会社から買う電気の方が高額なため、基本的には太陽光発電で発電した電気はFITで売るよりも自社で使った方がお得です。

企業における太陽光発電の導入で、もっとも経済的な活用例が完全自家消費であることに変わりはありません。完全自家消費とは、太陽光発電で発電した電気をすべて自社で使い切ることを指し、系統に流すことはしません。

ただ、以下の条件に当てはまる工場や倉庫、店舗、施設の場合は、FIT余剰売電のメリットが出る可能性があります

  • 電力消費量が少ない
  • 屋根スペースが広い
  • 電力消費に決まったパターンがある
  • 夜中に電力を消費し、日中はあまり消費しない

太陽光発電の完全自家消費にあまり向かない事業所に有効

上記で挙げた4つは、いずれも太陽光発電の自家消費モデルとあまりマッチしない業態です。現在主流の自家消費型太陽光発電のシステムでは、自家消費率が低いあるいは一定せず、電気代削減につながりにくく、消費し切れない余剰分が発生してしまいます。

しかし、その余剰を逆手に取り、FIT売電することで売電収入を得ることができます。kWhあたり12円という価格設定は決して高くはありませんが、屋根に十分なスペースがあり、容量の大きな太陽光発電システムを設置できれば十分に採算が取れます。

自家消費モデルの経済性が低い場合に検討すべし

企業が導入する太陽光発電では、まず自家消費に重きを置いた自家消費モデルが最も経済性のある導入になりますが、前述のような事業所では、そのメリットは限定されます。その場合の次の導入手法として、今回新設される屋根置きFIT余剰売電の検討が良いでしょう。

 

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国民負担が増大の可能性

近年のFIT認定は、買取価格の低下や自家消費型への移行によって減少傾向が続いていますが、2024年度は屋根置き区分の新設によって、昨年比で増加することも考えられます。一方で、FITの財源は、電気料金に含まれる再生可能エネルギー促進賦課金であるため、FIT認定の増加に伴って再エネ賦課金の増額、国民負担のさらなる増大につながる可能性があります。

再エネ賦課金の増額は今回の件に限らず、毎年増額されていくことは元々決定していますが、電気料金の高騰が続いている中で、さらにその負担を増大させる政策展開となります。広く理解を得られるような説明と再エネ比率の増加という数字での成果が期待されます。

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