2030年エネルギーミックスの再エネ比率を36~38%で調整中

法制度 更新日: 2022.10.27

経済産業省は7月21日、同日に開催されたエネルギーの基本政策を討議する総合資源エネルギー調査会基本政策分科会においてエネルギー基本計画の素案を公表しました。素案において、2050年カーボンニュートラル実現のために、さらに近い目標では2030年までに温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減するために、総発電量に占める再生可能エネルギーの比率を「36~38%」とする方向で調整に入りました。

近く、この素案をもとに政府案がまとめられ、パブリックコメントの意見募集が始まるものと思われます。

再生可能エネルギーの比率を2030年に36~38%とする第6次エネルギー基本計画が閣議決定されました


2021年第6次エネルギー基本計画が閣議決定|再生可能エネルギーの比率は36~38%

2021年第6次エネルギー基本計画が閣議決定|再生可能エネルギーの比率は36~38%

エネルギー政策の基本的な方向性を示すエネルギー基本計画が、先月の10月22日に閣議決定されました。第5次計画が2018年ですので、前回から3年経過しての第6次計画となります。


 

2030年電源構成(エネルギーミックス)案

今回素案が公表された新たなエネルギー基本計画は、2050年カーボンニュートラルおよび2030年の温室効果ガス排出量46%削減、さらに50%の高みを目指して挑戦を続ける新たな削減目標の実現に向けたエネルギー政策の道筋を示すことがテーマとされています。

主題は①東電福島第一の事故後10年の歩み②2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と対応③2050年を見据えた2030年に向けた政策対応の3つです。今回は③の2030年電源構成(エネルギーミックス)案について取り上げます。

再生可能エネルギーの比率を大幅に引き上げ

今回公表されたエネルギー基本計画の素案において、総発電量に占める再生可能エネルギーの比率は「36〜38%」とされ、現行目標値の「22〜24%」から10ポイント以上の引き上げとなります。しかしながら、再エネ推進で日本を先行する欧州や米国の50〜70%という目標に比べれば、見劣りしてしまいます。

再エネ電力の導入目安は3,300〜3,500億kWh

2019年度時点での導入実績値は1,853億kWhで、2019年度末からこれまでの約1年半でどれだけ導入が進んだかはデータが探し出せず不明ですが、仮に現時点で2,000億kWhまで積み上げられていたとしても、2030年までの残り9年で1,500億kWh積み上げる必要があります。これまで積み上げた量の実に75%を9年で導入する必要があります。

さらなる再エネ導入の見通し

①系統増強等を通じた風力の導入拡大

洋上風力発電の適地である東北や北海道から本州の大消費地への送電を可能とする長距離海底直流送電システムによる系統増強や、蓄電池の導入拡大による調整力の確保などを加速させ、2030年時点において北海道を中心とした風力発電の導入拡大を図る。(4GW程度

②地域共生型再エネ導入の推進

「地域共生型再エネの推進」によって4.1GW、加えて改正温対法および農山漁村再エネ法に基づくさらなる促進地域の設定を通じ、再エネ導入を推進する。

③民間企業による自家消費促進

環境省を中心として、関係省庁とも連携して実効性のある施策の具体化を図ることにより、民間企業による自家消費の導入拡大を図る。

自家消費型太陽光発電についてはこちらの資料をご参考ください!


④現行エネルギーミックスの達成に向けた施策強化

現行のエネルギーミックスの導入水準に達していない電源(地熱、中小水力等)について、施策・取り組みの強化で現行エネルギーミックス水準の達成を目指す。
例として、地熱発電は地上から人工的に注水することで、蒸気量を増加・安定化させる技術の確立・横展開により、設備利用率の向上を図る。

再エネ以外の「脱炭素電源」と省エネの強化

再エネの導入を目安の数値までさらに拡大したとしても、2030年46%削減の目標には届きません。そこで再エネ以外の「脱炭素電源」として原発、水素・アンモニアの強化、そして全体の消費エネルギー量を削減する省エネも同じく強化していくとしています。

原発は現行の「20〜22%」を維持

原子力発電は現行エネルギーミックスと同じ「20〜22%」が維持される方向性で、引き続き原子力が主力電源の1つとして考えられていることを示しています。しかしながら、これまでに再稼働した原子炉は10基で、20〜22%という水準を達成するためには未稼働の17基をあわせた、原子力規制委員会に再稼働を申請した27基全基を稼働させるばかりでなく、これまでの実績を大きく上回る80%という高い設備利用率(福島原発事故前10年の平均は67.8%)の実現を念頭に置くこととなります。

周知の通り、原発の再稼働に対して世論は依然として不信感を持っており、加えて原子力規制委員会が定める安全対策には多大なリソースと期間が必要で、2030年まで9年というリードタイムでの実現には疑問符が付きます。

水素・アンモニアで「1%」

燃料自動車としても注目される水素は、脱炭素時代において新たな資源として位置づけられ、社会全体への実装を加速させていきます。

大量の水素需要が見込める発電部門では、2030年までにガス火力への30%水素混焼や水素専焼、石炭火力への20%アンモニア混焼の導入・普及を目標に、混焼・専焼の実証の推進や非化石価値の適切な評価をできる環境整備を行なっていくとしています。また、2030年のエネルギーミックスでは、水素・アンモニアを1%と位置付けています。(現行は0%)

省エネ目標は現行の1.2倍

省エネは現行目標の5,030万klから約1.2倍となる、約6,200万klを目標に設定します。2019年度実績は1,655万klであるため、こちらも高い目標と言えます。

原発の比率が目標よりも低くなることが予想される中、再エネの比率が36〜38%を達成できるのであれば、省エネでエネルギー量を1割削減できるとしたら、2030年の46%削減目標は達成できると考えられます。

2030年までに2013年度比46%削減を達成するために

今回公表された素案でエネルギーミックス案として再エネを36〜38%、原発を20〜22%、水素・アンモニアを1%、省エネで1割削減という目標を示しましたが、ここまで触れてきたように原発の水準達成は非常に困難であると見込まれます。そうなると、FIT開始以降、導入が進んできた再エネのさらなる拡大と普及に頼ることとなります。政府が近年推進する洋上風力は大きなポテンシャルを秘めていますが、まだまだ発展途上で今すぐに普及が進むとは考えづらいです。他、地熱も全国に点在する開発ポテンシャルに対してわずか1%程度しか導入が進んでいません。その要因は、開発用地のほとんどが国立公園であり開発が困難であるためです。近年はその規制も徐々に緩和され始めてきているようですが、地元住民の理解を得る段階にはまだ至っていない案件が大半のようです。

となると、やはり46%削減目標を達成するためには、太陽光発電が本丸となってきます。他の再エネ電源に先行して普及が進んできた関係で、平らで日当たりの良い適地は数少なくなり、近年は地域住民とのトラブルや自然災害に関連した事故等のニュースも見かけるようになり、開発余地と世論の風当たりが厳しくなってきました。これら以外にも様々な課題がありますが、それでも太陽光発電は、すでに確立された技術で競争力のある安価な電源です。2030年まで9年となった現在においては、開発から発電開始までのリードタイムが短い電源であることも魅力的です。

今後の太陽光発電は、企業や住宅の屋根への様々な形態での設置、長年耕作されていない耕作放棄地の有効活用などを進めていくこととなります。政府の規制改革も議論の真っ只中にあり、政策上の支援が今後も拡充されていくと考えられます。

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