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太陽光発電にメンテナンスが必須なワケを解説!

太陽光発電 更新日: 2023.08.30

太陽光発電の導入を検討している方の中には、維持費用が気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか?太陽光発電を導入すると、メンテナンスも必要になります。メンテナンスを怠ると、経済産業省からの指導対象となったり、FIT売電を行っている場合、認定取り消しなどの厳しい処罰の対象となりかねません。太陽光発電にメンテナンスが必須な理由や内容、行う頻度や費用についてご紹介します。


太陽光発電のメンテナンスの種類

太陽光発電のメンテナンスには、「メンテナンス」と「保守点検」の2種類があります。
保守点検は、太陽光発電設備において破損や故障がないか、性能に著しい低下がないか、などを目視または、専門機器を用いて測定を行ったりします。
メンテナンスは、太陽光パネルの清掃や、パワーコンディショナの交換などを指します。

太陽光発電にメンテナンスが必須な理由

太陽光発電にメンテナンスが必要な理由は大きく分けて3つあります。

  1. 一部を除くすべての太陽光発電設備においてメンテナンスが法律によって義務化されているから。
  2. メンテナンスを怠ると、発電効率の低下や機器の故障を引き起こす可能性があるため。
  3. 自然災害による事故や火災を未然に防ぐため。

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

メンテナンスが法律によって義務化されているため

ほとんどの太陽光発電設備は、「電気事業法」または「再生可能エネルギー特別措置法(通称:再エネ特借法)」によってメンテナンスが義務づけられています。

電気事業法において、出力が50kW以上の設備、または高圧設備と電気的に接続している太陽光発電設備は「自家用電気工作物」に該当するため、以下の義務が発生します。

・経済産業省令で定める技術基準に適合するように電気工作物を維持する義務。(法第39条)
・電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安を確保するため、保安規程を定めて届け出る義務。(法第42条)
・電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督をさせるために、電気主任技術者を選任して届け出る義務。(法第43条)
出典:経済産業省:太陽電池発電設備を設置する場合の手引き

再エネ特借法では、FIT認定の条件に、メンテナンスを実施する必要があることが明記されています。そのため、FITを利用する太陽光発電設備は出力量に関わらず、すべての発電所がメンテナンスの義務化の対象となります。

“再エネ特措法においては、適切な保守点検及び維持管理を行う事業計画となっていることが認定の条件となっている。そのため、認定申請時に保守点検及び維持管理計画並びに保守点検及び維持管理に係る実施体制図を提出する必要がある。また、太陽光発電事業者自身も事業実施期間にわたって当該保守点検及び維持管理計画を保管し、適宜参照しながら事業を実施することが望ましい。”
引用:資源エネルギー庁:事業策定ガイドライン(太陽光発電)

つまり、メンテナンスの義務が対象外となるのは、非FITで高圧設備と接続していない、50kW未満の太陽光発電設備となります。

発電効率の低下や機器の故障を防ぐため

太陽光発電は屋外に設置される設備で、ほこりや鳥のフンなどによって汚れが付着することがあります。パネルに汚れなどが付着すると、その箇所が発熱することでパネルの故障を引き起こしてしまいます。
そのほかにも、メンテナンスを怠ると機器や異常の発見が遅れてしまい、発電量が低下してしまいます。発電が停止したり、発電量が低下するとその間売電ができなかったり、電気代削減効果が低下してしまいます。

事故を未然に防ぐため

太陽光発電設備を固定しているボルトなどの部品が劣化していくことで、自然災害によってパネルが飛散したり、落下する危険性が高くなります。パネルが飛ばされることで、第三者へ損害を与えてしまうかもしれません。そういった事故を防ぐためにも点検は欠かさず行う必要があります。

太陽光発電のメンテナンスを行う頻度はどれくらい?

太陽光発電のメンテナンスにも、定期点検(年次点検)と日常点検の2つがあります。
定期点検は、設置時期に応じて必要な点検を実施し、機器が正常に動作していることを確認するとともに、日常点検では確認できない機器の性能や安全性を専任の技術者が確認します。
日常点検は、システムの異常及び不具合を早期に発見し、安全を確保するとともに故障などを未然に防止するための日常巡視のことを指します。

定期点検

定期点検では、機器の異常や電圧の異常が無いか専門機器を用いて点検を実施するほか、架台やその部品に緩みが無いかなどを確認します。具体的な頻度については、資源エネルギー庁の事業策定ガイドラインには明記されていませんが、太陽光発電協会で公開されている太陽光発電システム保守点検ガイドラインによると6ヶ月に1回の定期点検と記載されています。

日常点検

日常点検では、パネルやPCSなどの汚れや破損の有無を確認したり、発電量に異常がないかなどを目視で点検などを行います。必ずやる必要はありませんが、定期的に目視で点検することで異常の早期発見につながります。

点検の時期と目的

引用:太陽光発電協会 | 太陽光発電システム保守点検ガイドライン

No 推奨点検実施者 目的
1 専門技術者 発電開始後1年目を目途に、機器、部材及びシステムの初期的な不具合を見つけ、必要な補修作業を行う。特にこの時期に、施工上の不具合やシステムの初期不良を発見することが長期間の運転を維持するうえで重要である。
2 専門技術者 発電開始後5年目を目途に、機器又は部材の劣化、破損の状況を確認し、必要な補修作業を行う。また、機器メーカによって精密点検が設定されている場合は別途実施すること。
3 専門技術者 ・ 発電開始後9年目以降は4年毎を目途に、機器又は部材の劣化、破損の状況を確認し、必要な補修作業を行う。・ 機器又は部材の保証期間を確認し、機能の確認又は消耗部品(メーカが指定する部品)の交換などを行う。・ 設備更新時期の検討を行う。
4 専門技術者 ・ 発電開始後20年目以降は4年毎を目途に、機器又は部材の劣化、破損の状況を確認し、必要な補修作業を行う。・ 点検内容を確認し,設備更新時期の検討を行う。
5 システム所有者又は専門技術者など 一般的なサイト目視検査を行う。※ 異常が認められた場合は定期点検要領例に記載の点検を点検専門業者に依頼する。

遠隔監視で発電量を確認することも重要

太陽光発電設備を導入する際に遠隔監視システムを導入していれば、インターネット上で発電量を確認することができます。スマートフォンやパソコンなどで発電量を確認することで太陽光発電の異常を検知することができます。

業者によっては、「発電量や発電状況に異常が無いか」などを日々監視してもらえるサービスを提供している場合もあります。そういったサービスを導入することで、異常の早期発見につながる体制づくりも大切です。

太陽光発電のメンテナンスの内容

電気事業法・再エネ特借法においても、太陽光発電のメンテナンスは義務づけられていますが、メンテナンスの内容は「経済産業省が定める技術基準に適合するように維持する必要がある。」ということで、実際の内容については詳しく掲載されていません。

太陽光発電協会では、「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」が公開されており各点検の項目や頻度が明記されています。

メンテナンスの対象機器

以下では、太陽光発電協会で公開されている「太陽光発電システム保守点検ガイドライン」の対象機器や内容の一部をご紹介いたします。

屋根

破損、雨漏りの痕跡、排水路のつまりが無いかの確認。

太陽光発電設備

著しい汚れ・傷・破損がないか確認。
フレームの破損や変形、腐食が無いかの確認。
架台の固定強度に問題がないか。ボルト・ナットの緩みの確認。
影や鳥の巣、樹木、電柱などによる性能への著しい影響がない。

集電箱

外箱の破損や腐食がないか、扉の開閉に異常がないか、内部への雨水などの侵入がないか。
固定ボルトが確実に取り付けられているか。
配線に傷がないか。
内部のヒューズや電線との接続部、接地線に破損や異常がない。
接地抵抗の測定、絶縁抵抗測定、開放電圧の測定等々。

パワーコンディショナ

外箱の腐食や破損、固定ボルトに緩みがないか。
配線に傷や破損がない。
異常音や異臭、過熱がないかなど。
接地抵抗・絶縁抵抗、交流電圧の測定、停電時の動作確認など。
自立運転機能がある場合の機能試験。

データ収集装置・遠隔監視装置

損傷や腐食、変形がないか。
正常に運転しているか。遠隔操作・制御が正しい状態であるか。

ご紹介した項目は一部となっています。また、設置場所によって周囲の環境の確認も必要となります。

太陽光発電のメンテナンスの費用相場

太陽光発電設備のメンテナンス費用は発電所の規模ごとに異なります。
50kW未満の産業用太陽光発電設備は年間10万円〜15万円で、50kW以上は容量によりますが、年間100万円〜と言われています。実際の金額は、エリアや設置形態、パネル容量などによって異なります。ご検討の場合は、施工会社などに相談してみましょう。

自家消費型は場合によっては追加費用もかかる

自家消費型などの屋根上に設置しており、屋根に上ることが困難または、屋根の上で作業することが困難な場合は足場を設置する必要があります。そうした場合、メンテナンスとは別に足場の費用などもかかってくる場合があります。

機器類の修理・交換費用

パネルとパワコンについて

パネルやパワコンは家電設備と同様に電気設備でもあるため、定期的なメンテナンスを実施していたとしても、予期せぬ不具合や故障が発生する可能性があります。
修理や交換を必要とする事態が発生した場合、メーカーの製品保証期間内かつ故意ではない台風などの自然要因であれば、無償で修理・交換ができますが、保証期間終了後は費用が発生します。
保証期間はメーカーによって様々ですが、パネルもパワコンも一般的に10年が基本保証として付随しています。パワコンは、有料オプションで15年や20年に延長できるメーカーもあります。
一方、パネルには製品保証以外にも出力保証があります。パネルの出力を補償するもので、故障を補償するものではないため注意が必要ですが、25年〜30年の補償が用意されています。
修理・交換費用はパネルが5万~10万、パワコンが15万~パワコンの機種によっては100万を超えることも想定されます。
製品保証のオプション費用は、そこまで大きな金額ではないので、予期せぬリスクの回避に重点を置くのであれば延長保証は無難な選択肢です。メガクラスのように発電規模が大きくなればなるほど、定期的なメンテナンスと同様に保証の重要性は高まります。

メンテナンスを行わないことのリスク

冒頭でも紹介した通り、太陽光発電設備を適切な状態で維持することは発電事業者の義務として法律で定められています。技術基準に適合していない場合は、経済産業省から指導対象となったり、FIT認定の取り消し、設備の停止が求められる可能性があります。
また、メンテナンスを行うことで機器の故障の発見にもつながります。
機器の不具合を早期発見できれば、部品交換程度の軽微な対応で済んだり、何より発電システムを正常な状態に戻し、発電量の損失をできるだけ小さく抑えるという面で大きな効果を発揮します。
太陽光発電を導入してから、パワーコンディショナの経年劣化などにより、交換が一度は訪れるとされています。そういった異変に早期に気づくためにもメンテナンスは太陽光発電には必須といえるでしょう。

まとめ

メンテナンスを行うことで、発電効率の低下や故障の早期発見につながり、電気代削減効果や売電事業を最大限に享受できます。
また、導入後初めての点検は特に重要となります。機器、部材、システムなどの初期不良を発見し、修繕などの対応をすることでより長期的な稼働につながります。
日常点検は、必ず行う必要はありませんが、台風や地震などの自然災害が起こったあとは設備に破損や異常の有無や周囲の状況を確認するために実施した方がいいと言えます。また、遠隔監視システムを導入しているならスマートフォンなどで毎日発電できているかの確認をするだけでも効果的です。

太陽光発電設備は設置してから末長く付き合っていくものです。太陽光発電によって手に入れた電源を自社で消費したり、売電を行うことで投資額を抑えることができます。そのため発電設備の性能を高い状態に維持することに越したことはありません。定期的なメンテナンスを行い、より長い期間太陽光発電を活用しましょう。


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