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  • IPCC第6次評価報告書第1作業部会ポイント解説

    IPCC第6次評価報告書の第1作業部会ポイント解説|人為的な気候変動は疑う余地がない

    気候変動に関する科学的知見を集約する国連機関「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、第6次評価報告書を2021年8月9日に発表しました。発表されたのは、自然科学的根拠を提示する第1作業部会による報告書と要約で、人為的な気候変動は疑う余地がない、というこれまで以上の強い表現が使われ、地球温暖化の要因とそれに起因する数々の自然災害などが、人間の活動が原因であることは紛れもない事実であることを改めて強調しました。

    本記事は、第6次評価報告書第1作業部会の「政策決定者向け要約」をポイント解説します。記事内の挿入画像はクリックで拡大表示されます。

     

     

    IPCCとは?

    まずIPCCとは、国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)の略で、1988年に国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)により設立された組織です。人為起源による気候変動とその影響、対応策に関して、科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的としています。

    IPCC自身が研究をするのではなく、世界中の科学者が発表する論文や研究データを集約し、科学的な分析のほか社会経済への影響や、気候変動への対応策などをレビューします。IPCCとして主張することはなく、あくまで科学に則した中立で俯瞰的な知見を提供します。

    評価報告書

    5〜7年ごとに最新の知見を評価し、評価報告書にまとめて公表します。評価報告書は自然科学的根拠を示す第1作業部会(WG1)、影響・適応・脆弱性を示す第2作業部会(WG2)、気候変動緩和策を示す第3作業部会(WG3)、そして3つの報告書を統合した統合報告書の4つから構成されています。
    3つの作業部会の報告書は、それぞれ「政策決定者向け要約」と、より専門的で詳細な情報が記載されている「技術要約」とで成り立っています。

    これまで公表された評価報告書は以下の通りです。

    • 1990年:第1次報告書
    • 1995年:第2次報告書
    • 2001年:第3次報告書
    • 2007年:第4次報告書
    • 2013年:第5次報告書
    • 2021年:第6次報告書(※2021年9月時点では第1作業部会のみ)

    今回の評価報告書とこれまでとの違い -「気候感度」の評価精度が向上

    今回の報告書では、研究データの蓄積やコンピューターシミュレーションの精度向上などの結果、大気中の温室効果ガスの濃度を2倍にした場合、地球の気温が何度上がるかを示す「気候感度」の推定幅が狭まり、温室効果ガスの排出が実際にどれだけの気温上昇をもたらすのか、という全体的な評価の根本が強化されました。

    そのため、これまでの報告書に比べてより断定的な表現、より確信度の高い評価を下す内容に至っています。

     

    地球温暖化の現状

    A.1「人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない。大気、海洋、雪氷圏及び生物圏において、広範囲かつ急速な変化が現れている。」

    A.2「気候システム全般にわたる最近の変化の規模と、気候システムの側面の現在の状態は、何世紀も何千年もの間、前例のなかったものである。」

    A.3「人為起源の気候変動は、世界中の全ての地域で、多くの気象及び気候の極端現象に既に影響を及ぼしている。熱波、大雨、干ばつ、熱帯低気圧のような極端現象について観測された変化に関する証拠、及び、特にそれら変化を人間の影響によるとする原因特定に関する証拠は、AR5(2013年第5次報告書)以降、強化されている。 」

    ※引用:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

    人為的な温暖化現象は紛れもない事実である

    IPCCには科学的な知見を表明するための独自の確信度を表す表現があり、2013年までの5回にわたる報告を振り返ると、地球温暖化が人間活動に起因するという評価の確信度が毎回上昇してきていることがわかります。そして今回の報告で、科学的に紛れもない事実であることを「疑う余地がない」という表現で断言し、さらに強い評価を下しています。

    過去の報告書における人間活動が及ぼす影響についての評価に関する記載内容
    第1次報告書気温上昇を生じさせるだろう
    人為起源の温室効果ガスは気候変化を生じさせる恐れがある。
    第2次報告書影響が全地域の気候に表れている
    識別可能な人為的影響が全球の気候に表れている。
    第3次報告書可能性が高い(66%以上)
    過去50年に観測された温暖化の大部分は、温室効果ガスの濃度の増加によるものだった可能性が高い。
    第4次報告書可能性が非常に高い(90%以上)
    温暖化には疑う余地がない。20世紀半ば以降の温暖化のほとんどは、人為起源の温室効果ガス濃度の増加による可能性が非常に高い。
    第5次報告書可能性が極めて高い(95%以上)
    温暖化には疑う余地がない。20世紀半ば以降の温暖化の主な要因は、人間の影響の可能性が極めて高い。

    ※参照:IPCC第1~5次報告書より作成

    世界の気温変化の歴史と近年の昇温の原因

    世界の気温変化の歴史と近年の昇温の原因 ※出典:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

    a)世界平均気温(10年平均)の変化 ※左側のグラフ

    古気候記録から復元した世界平均気温の変化(灰色の実線、西暦1~2000年)と、最近の観測による世界平均気温の変化(黒色の実線、1850~2020年)を重ねて表現しています。いずれも1850~1900年の値を基準とし、10年単位の平均値をグラフ化しています。
    グラフ外の灰色の縦棒は、過去10万年間で最も温暖だった数世紀の推定気温を表しています。

    • 産業革命以降の約180年間で、2000年という短期間で見ても前例のない気温上昇が見てとれる。
    • 平均気温は1970年以降、少なくとも過去2000年間にわたり、他のどの50年間にも経験したことのない速度で上昇した(確信度が高い)
    • 気温上昇後の平均気温は、過去10万年間で最も温暖だった数世紀の推定気温と同等。
    • 西暦1000年から1700年頃までの気温は下降傾向にあったが、その後の観測値は急激に上昇している。

    b)世界平均気温(年平均)の変化 ※右側のグラフ

    過去170年間に観測された世界平均気温の変化(黒線)を、1850~1900年の値を基準としてシミュレーション推定したグラフです。茶色が人為起源と自然起源の両方の駆動要因を考慮した気温で、緑色が自然起源の駆動要因(太陽活動および火山活動)のみを考慮した気温です。

    • 1920年まではほぼ一致。以降徐々に人為的な作用が働き始め、1970年から大幅に上昇している。
    • 人為起源を加味しなかった場合、気温上昇は発生していないと推定される。

    2010年代に観測された昇温への寄与の評価

    1850~1900年を基準とした2010~2019年の観測された昇温への寄与の評価 ※出典:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

    a)観測された地球温暖化 ※左側のグラフ

    現時点で、1850~1900年と比較し平均して1.0℃の上昇が推定され、最大で1.3℃までの上昇幅が観測されています。

    • 1850~1900年から2010~2019年までの人為的な世界平均気温上昇は0.8℃~1.3℃の可能性が高く、最良推定値は1.07℃である。

    ※引用:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

    b)昇温の要因 ※中央のグラフ

    人間活動から排出される温室効果ガスによる昇温が1.5℃(最大2℃)で、人間活動によるエアロゾルの抑制が0.0℃ほどから0.8℃くらいまで観測されており、合計して人間活動による昇温が1.0℃~1.3℃ほどと評価されています。人間活動以外での気温への影響は昇温・降温いずれにも微々たるものです。

    • よく混合されたGHG(温室効果ガス)は1.0℃~2.0℃の温暖化に寄与。
    • その他の人為起源の駆動要因(主にエアロゾル)は0.0℃~0.8℃の冷却に寄与。
    • 自然起源の駆動要因は世界平均気温を-0.1℃~0.1℃変化させ、内部変動は-0.2℃~0.2℃変化させた可能性が高い。
    • 1979年以降の対流圏の温暖化の主要な駆動要因は、よく混合されたGHG(温室効果ガス)である可能性が非常に高く、1979年から1990年代半ばまでの下部成層圏の冷却の主要な駆動要因は、人為的な成層圏オゾン層の破壊である可能性が極めて高い。

    ※引用:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)
    ※エアロゾル(エーロゾル):化石燃料を燃焼した際に生じる微粒子。光を反射ないし吸収することで地表へ届く太陽光を減少させる直接的な効果と、雲の性質を変化させる間接的なものとがあり、どちらも温暖化を抑制する効果がある。ただしその効果は限定的で、グラフからも明らかなようにエアロゾルによる降温を温室効果ガスによる昇温が上回っている。

    c)個々の構成要素による気温変化 ※右側のグラフ

    昇温の要因では二酸化炭素とメタンが大きく影響していることがわかります。エアロゾルによる降温では、二酸化硫黄の影響が大きいです。

    • 2019年の大気中のCO₂濃度は、少なくとも過去200万年間のどの時点よりも高かった(確信度が高い)
    • 同じく2019年のCH₄(メタン)およびN₂O(亜酸化窒素)の濃度も、少なくとも過去80万年間のどの時点よりも高かった(確信度が非常に高い)
    • 1750年以降のCO₂濃度の増加(47%)とCH₄濃度の増加(156%)は、少なくとも過去80万年間にわたる氷期から間氷期間の数千年の自然変動をはるかに超えており、N₂O濃度の増加(23%)はこの変動と同程度である(確信度が非常に高い)。
    • 1750年頃以降に観測された、よく混合された温室効果ガス(GHG)の濃度増加は、人間活動によって引き起こされたことに疑う余地がない。

    ※引用:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

     

    気候変動により現出している気象・気候の変化

    ここからは、地球温暖化によりすでに影響が目に見える形で生じている気候変動を紹介していきます。気候変動はすでに我々が暮らす世界中のすべての地域に影響を及ぼしており、人間活動の影響は、気象や気候の極端現象に多大な変化をもたらしています。

    極端な高温

    極端な高温が観測された変化の評価およびその変化における人間活動の影響の確信度の合成図 ※出典:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

    この図は、1950年以降の世界中の地域において観測された極端な高温に対する評価と、その観測された変化に対する人間活動の影響に関する確信度を合成して表しています。赤色の六角形は、その地域における極端な高温の増加の確信度が中程度以上であることを示しています。

    世界中のほとんどの地域が赤く、1950年以降に全世界規模で極端な高温の観測が増加したことがわかります。データ不十分の地域や変化への見解の不一致(白ないしグレー)が、圧倒的に少ないことも印象的です。
    また、人間活動の影響に関する確信度が六角形の中に「点(・)」の数で表されており、ユーラシア大陸、オセアニア、アフリカ大陸の地域はほとんどが「確信度が高い」ことを表す点3つです。アメリカ大陸においても、点2つ以上で他地域ほどではないものの確信度が中程度にあるという評価です。

    この図から、地球全体で極端な高温が観測されており、これら観測された変化は人間活動の影響による可能性が、地球上のほぼすべての地域で高いことが見受けられます。

    • 最近40年間のうちどの10年間でも、それに先立つ1850年以降のどの10年間よりも高温が続いた
    • 21世紀最初の20年間(2001~2020年)における世界平均気温は、1850~1900年の気温よりも0.99[0.84~1.10]℃高かった
    • 2011~2020年の世界平均気温は、1850~1900年の気温よりも1.09[0.95~1.20]℃高かった
    • 海上(0.88[0.68~1.01]℃)よりも陸域(1.59[1.34~1.83]℃)の昇温の方が大きかった。
    • AR5以降、世界平均気温について推定された上昇は、主に2003~2012年以降の更なる温暖化(+0.19[0.16~0.22]℃)によるものである。
    • 世界全体の海洋(0~700m)が1970年代以降昇温していることはほぼ確実であり、人間の影響が主要な駆動要因である可能性が極めて高い。
    • 極端な高温(熱波を含む)が、1950年代以降、ほとんどの陸域で頻度および強度が増大してきた一方、極端な低温(寒波を含む)の頻度と厳しさが低下してきたことはほぼ確実であり、人為起源の気候変動がこれらの変化の主要な駆動要因であることの確信度は高い。
    • 過去10年に観測された最近の極端な高温の一部は、気候システムに対する人間の影響なしには発生した可能性が極めて低いだろう。
    • 海洋熱波の頻度は、1980年代以降ほぼ倍増しており(確信度が高い)、人間の影響は、少なくとも2006年以降の多くの海洋熱波に寄与していた可能性が非常に高い。

    ※引用:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

    大雨

    世界中の地域で大雨が観測された変化の評価とその変化における人間活動の影響の確信度の合成図 ※出典:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

    次に大雨に関する観測の評価です。極端な高温の図と同様に1950年代から現在までを時間軸とし、緑色の六角形は大雨の増加の確信度が中程度以上であること、六角形内の点(・)は人間活動を起因とする変化の確信度を示しています。

    ユーラシア大陸ではほぼすべての地域で大雨の増加が観測されていることがわかります。他の地域では、アフリカの南端部と北米の東部、オーストラリア北端部、南米の南東部で観測されています。
    人間活動による変化の確信度では、唯一北欧が高いと評価されており、他の地域では見解の一致度が低いため低いと評価されています。

    アフリカや南米ではデータや文献が限定的であり、確信度の評価においても見解の不一致が目立つなど、高温に比べ検証、評価は不十分と感じられます。しかしながら、北半球では大雨が増加していることは確かなようです。

    • 世界全体の陸域における平均降水量は1950年以降増加している可能性が高く、1980 年代以降はその増加率が加速している(確信度は中程度)
    • 20世紀半ば以降に観測された降水変化パターンには、人間の影響が寄与していた可能性が高く、観測された海面付近の塩分の変化パターンに人間の影響が寄与していた可能性が極めて高い。
    • 両半球における中緯度のストーム・トラック*は、1980年代以降、極方向(より北極寄りないしより南極寄り)へ移動した可能性が高く、その長期変化傾向には顕著な季節性がある(確信度が中程度)。
    • 大雨の頻度と強度は、変化傾向の解析に十分な観測データのある陸域のほとんどで、1950 年代以降増加しており(確信度が高い)、人為起源の気候変動が主要な駆動要因である可能性が高い
    • 強い熱帯低気圧(カテゴリー3~5*)の発生の割合は過去40年間で増加しており、北西太平洋の熱帯低気圧がその強度のピークに達する緯度が北に遷移している可能性が高い。これらの変化は内部変動だけでは説明できない(確信度が中程度)。全てのカテゴリーの熱帯低気圧の頻度に長期(数十年から百年)変化傾向があることの確信度は低い。
    • イベント・アトリビューション研究と物理的な理解は、人為起源の気候変動は熱帯低気圧に伴う大雨を増加させることを示すが(確信度が高い)、データが限られているため、世界的なスケールで過去の変化傾向を明瞭に検出することは困難である。

    ※引用:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)
    ※ストーム・トラック:熱帯低気圧や移動性高気圧の活動度が強い領域を指す。
    ※カテゴリー3~5:1分間平均の最大風速に基づき定義された熱帯低気圧の強さ。カテゴリー1は33~42m/s、2は43~49m/s、3は50~57m/s、4は58~69m/s、5は70m/s以上。日本における台風の強さは10分間平均の最大風速に基づき定義されており、「強い」は33~<44 m/s、「非常に強い」は44~<54m/s、「猛烈な」は54m/s 以上。→「猛烈」と表現される台風が40年間で増加しており、その強度のピークが段々と北方向に遷移してきている。

    農業および生態学的干ばつ

    世界中の地域における農業および生態学的な干ばつが観測された変化の評価とその変化における人間活動の影響に関する確信度の合成図 ※出典:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

    こちらは農業および生態学的干ばつに関する図です。図の見方は上記2つと同様です。

    全体的に白く表されており、変化に対する見解の一致度が低いことが読み取れます。その一方で、アジア中部や地中海地域、欧州中・西部、アフリカ西・南部、北米西部などで農業ないし干ばつの増加が観測されています。
    人間活動による影響の確信度は全体的にさほど高くないものの、データや文献が他地域よりも豊富であることが予想される地中海地域と北米西部において、中程度の確信度が評価されています。
    オーストラリアの北部では、唯一減少、プラスの変化が観測されています。

    • 人為起源の気候変動は、陸域の蒸発散量*の増加により、一部の地域で農業干ばつおよび生態学的干ばつの増加に寄与している(確信度が中程度)。

    ※引用:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)
    ※蒸発散量:地球の表面を構成する海水面、氷面、露出土壌および植生から、大気へ還元される水蒸気の量。

    そのほか氷河融解や海水面上昇など

    • 人間の影響は、1990年代以降の世界的な氷河の後退と1979~1988年と2010~2019年との間の北極域の海氷面積の減少(9月は約40%、3月は約10%の減少)の主要な駆動要因である可能性が非常に高い。
    • 人間の影響は、1950年以降の北半球における春の積雪面積の減少に寄与した可能性が非常に高い。
    • 人間の影響は、過去20年間において観測されたグリーランド氷床の表面融解に寄与した可能性が非常に高いが、南極氷床の質量減少に対する人間の影響については、証拠が限定的で、見解一致度は中程度である。
    • 世界平均海面水位は、1901~2018年の間に0.20[0.15~0.25]m 上昇した。その平均上昇率は、1901~1971年の間は1.3[0.6~2.1]mm/年だったが、1971~2006年の間は1.9[0.8~2.9]mm/年に増大し、2006~2018年の間には3.7[3.2~4.2]mm/年に更に増大した(確信度が高い)。
    • 少なくとも1971年以降に観測された世界平均海面水位の上昇の主要な駆動要因は、人間の影響であった可能性が非常に高い。
    • 世界平均海面水位は、1900 年以降、少なくとも過去3千年間のどの百年よりも急速に上昇している(確信度が高い)
    • 世界全体の海洋は、最終氷期の終末期(約1万1千年前頃)より、過去百年間の方が急速に昇温している(確信度が中程度)。
    • 2011~2020年の北極域の年平均海氷面積は、少なくとも1850年以降で最小規模に達した(確信度が高い)。晩夏の北極域の海氷面積は、少なくとも過去千年間のどの時期よりも小さかった(確信度が中程度)。
    • 1950年代以降、世界のほとんど全ての氷河が同調的に後退するという地球全体の氷河後退の特徴は、少なくとも過去2000年の間に前例がなかったものである(確信度が中程度)
    • 1970年以降、陸域の生物圏の変化は地球温暖化に連動している。つまり、両半球では気候帯が極方向に移動し、北半球の中高緯度帯では、1950年代以降、生長期が平均して10年あたり最大で2日長くなった(確信度が高い)。

    ※引用:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

     

    気候変動の5つのシナリオ

    今回の第6次報告書では、第5次報告書で評価したよりも広範囲の温室効果ガス(GHG)、土地利用及び大気汚染物質の将来に対する気候の応答を評価するため、5つの新しい例示的な排出シナリオのセットを一貫して考慮しています。この一連のシナリオにより、気候モデルによる気候システムの変化に関する将来起こり得る予測を行っています。

    5つの例示的なシナリオにおけるCO2及び一部の主要な非CO2駆動要因の将来の年間排出量 ※出典:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

    5つのシナリオで考慮されている温室効果ガス(GHG)の排出量は、社会経済的な仮定や気候変動緩和の程度、エアロゾルと非メタンのオゾン前駆体(オゾン生成の元)については大気汚染対策により、シナリオごとに異なります。

    • SSP1-1.9:CO₂排出量が現時点から減少に向かい、今世紀半ばに排出量がゼロとなるシナリオ
    • SSP1-2.6:CO₂排出量が現時点から減少に向かい、今世紀後半に排出量がゼロとなるシナリオ
    • SSP2-4.5:CO₂排出量が今世紀半ばまで現在の水準で推移し、その後減少するシナリオ
    • SSP3-7.0:CO₂排出量が2100年までに現在の2倍になるシナリオ
    • SSP5-8.5:CO₂排出量が2050年までに現在の2倍になるシナリオ

    各シナリオにおける気温上昇の予測

    5つの排出シナリオにおける2021年から2100までの世界平均気温の変化

    1850~1900年を基準とした世界平均気温の変化 ※出典:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

    今世紀の世界平均気温は、5つのシナリオすべてで少なくとも今世紀半ばまでは上昇を続けることが予測されています。今後数十年の間に、CO₂や他の温室効果ガスが劇的に減少しない限り、今世紀中に地球温暖化は産業革命直後と比較して1.5℃さらには2℃を超えると予測されます。

    現在の水準を維持した場合でも、2040年までに1.5℃、2060年までに2.0℃、今世紀末には3.0℃近い気温上昇が予測されており、パリ協定の1.5℃ないし2.0℃目標達成のためには、現在の取り組みを維持するだけでは不十分であることがわかります。パリ協定の目標である今世紀後半における気温上昇を2.0℃までに止めるためには、今すぐに温室効果ガスの排出量削減に取り組み、少なくとも2050年までに現在毎年40Gt排出しているCO₂の排出量を、20Gtまで半減させる必要があり、これが1.5℃となると2050年までにゼロとする必要があると示されています。

    気象・気候の極端現象は、地球温暖化が進むと頻度・強度が増す

    地球温暖化がさらに進行すると、気候システムに直接的に多くの変化を与え拡大していくことは、近年の高温や大雨ですでに実感してしまっているところではないでしょうか。気候システムの変化には極端な高温や大雨の頻度および強度の増加だけでなく、農業および生態学的干ばつの増加、強い熱帯低気圧の割合の増加、そして北極域の海氷、積雪および永久凍土の縮小を含みます。

    これらの頻度と強度は、地球温暖化が0.5℃進むごとにより強化されていくと予測され、地球温暖化の進行を抑えなければ、我々も極端な高温の常態化、豪雨の頻発による災害の増加などと現実的な脅威として直面しなければなりません。すでに他人事ではない状況です。

    高温 

    地球温暖化による極端な高温の頻度および強度の増加 ※出典:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

    現在ですでに産業革命直後に比べ平均気温は1.0℃上昇しており、同時期と比べ10年に1回の極端な高温は2.8倍、50年に1回の現象は4.8倍、それぞれ発生する確率が高くなっています。パリ協定の1.5℃・2.0℃に抑えた場合(シナリオ:SSP1-1.9・SSP1-2.6)でも、10年に1回は約4~6倍、50年に1回は約9~14倍の頻度で発生すると予測されます。気温も1~3℃弱まで増加が予測されており、今後の気候変動対策が目標通りに達成された場合でも、今以上の高温は覚悟しなければならないようです。

    • 最も暑い日々の気温の上昇は、いくつかの中緯度及び半乾燥地域並びに南米モンスーン地域において最も大きくなると予測され、その速度は地球温暖化の約1.5~2倍になる(確信度が高い)。
    • 最も寒い日々の気温の上昇は、北極域において最も大きくなると予測され、その速度は地球温暖化の約3倍になる(確信度が高い)。
    • 地球温暖化が進行するにつれて海洋熱波の頻度は増加し続け(確信度が高い)、特に熱帯と北極域で顕著である(確信度が中程度)。

    ※引用:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

    大雨 

    地球温暖化による大雨の頻度および強度の増加 ※出典:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

    大雨に関しては現時点で、産業革命直後に比べ発生確率が1.3倍上昇、強度は6.7%増加しています。頻度については1.5℃、2.0℃(シナリオ:SSP1-1.9・SSP1-2.6)であっても1.5~1.7倍と高温ほど発生確率は高まらないように見受けられますが、強度は実際の肌感覚でも強まったと感じられるレベルでしょう。4℃は考えたくもありません。

    ちなみに、最近よくニュースで聞かれる「数十年に一度の大雨」は「大雨特別警報」として2013年から運用が開始され、現在(2021年9月時点)まで62回発令されています。数十年に一度とは?資料の見方が悪いのでしょうか。(※参照:気象庁HP 特別警報・警報・注意報検索(大雨特別警報))

    • 地球温暖化の進行に伴い、大雨は多くの地域で強く、より頻繁になる可能性が非常に高い。
    • 地球規模では、日降水量で見た極端な降水は、地球温暖化が1℃進行するごとに約7%強まると予測されている(確信度が高い)。
    • SSP2-4.5、SSP3-7.0、SSP5-8.5のシナリオにおいて、エルニーニョ・南方振動に関連する降雨の変動が21世紀後半までに増幅すると予測される可能性が非常に高い。

    ※引用:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

    農業および生態学的干ばつ 

    地球温暖化による干ばつの頻度および強度の増加 ※出典:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

    農業および生態学的な干ばつにおいては、現時点で1.7倍発生する確率が高く、標準偏差として0.3厳しい状況におかれています。ここでの強度は、年平均した土壌水分量の標準偏差に対する比較を表しています。なお、対象地域は北米中・西部、中米北・南部、地中海地域など、乾燥地域において農業および干ばつの増加が中程度以上の確信度があると評価された地域を対象としています。

    年平均鉛直精算土壌水分量の変化(標準偏差) ※出典:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

    この図は土壌水分量の変化を表しており、茶色が濃くなるほど干ばつが厳しく、青緑色が濃くなるほど土壌水分量が多くなることを示しています。気温が上昇するほど乾燥地域と湿潤な地域の差が激しくなっていくと予測されています。

    • 温暖化した気候では、洪水又は干ばつに対する影響を伴うような極端に湿潤または乾燥した気象・気候現象及び季節が強まるが(確信度が高い)、これらの現象の場所と頻度は、モンスーンや中緯度ストーム・トラックを含む地域的な大気循環の予測される変化に依拠する。

    ※引用:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

    熱帯低気圧 

    • 非常に強い熱帯低気圧(カテゴリー4~5)の割合と大部分の非常に強い熱帯低気圧のピーク時の風速は、地球規模では、地球温暖化の進行に伴い増加すると予測されている(確信度が高い)。

    ※引用:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

    海氷・積雪・永久凍土 

    9月の北極海の海氷面積
    ※出典:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

    北極の氷が減少していることは周知の事実ですが、気温上昇を1.5℃・2.0℃に抑制した場合でも氷の減少は続いていくようです。SSP1-2.6およびSSP3-7.0については、可能性が非常に高い範囲を示しています。そして、温室効果ガスの排出が現状のまま推移以上の3つのシナリオ(SSP2-4.5・SSP3-7.0・SSP5-8.5)では、今世紀半ば以降、9月には北極から氷がなくなると予測されています。

    • 温暖化の進行は、永久凍土の融解並びに季節的な積雪、陸氷及び北極域の海氷の消失を更に拡大すると予測される(確信度が高い)。
    • 北極域では、本報告書で考慮されている5つの例示的なシナリオにおいて、2050年までに少なくとも1回、9月に実質的に海氷のない状態となる可能性が高く、その発生頻度は温暖化の水準が高まるほど高くなる。
    • 南極の海氷に予測される減少については、確信度が低い。
    • 山岳や極域の氷河は、数十年または数百年にわたって融解し続けることが避けられない(確信度が非常に高い)。
    • 永久凍土の融解に伴う永久凍土に含まれる炭素の放出は、数百年の時間スケールで不可逆的である(確信度が高い)。
    • グリーンランド氷床は21世紀を通して減少し続けることがほぼ確実であり、南極氷床は21世紀を通して減少し続ける可能性が高い。
    • グリーンランド氷床の総氷量の減少が、炭素の放出が累積することに伴い更に大きくなることは確信度が高い。

    ※引用:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

    海面ph値 

    世界全体の海面付近のph(酸性度の尺度)

    ※出典:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

    現在は約8と中性から弱アルカリ性寄りですが、温室効果ガス排出量増加により海洋の吸収量が増加することで、酸性化するとされています。SSP1-
    2.6およびSSP3-7.0については、可能性が非常に高い範囲を示しています。

    海洋が酸性化することにより炭酸イオンが減少し、サンゴや貝が成長するために必要な炭酸カルシウムを作りにくくなり、サンゴや貝や減少するとされています。現在でも水深1,000m付近では約7.4というph値ですが、温室効果ガスの排出が進めば、海面付近もこれに近い値となります。

    ※参照:気象庁

    • 複数の証拠に基づけば、海洋表層の成層化(ほぼ確実)、海洋酸性化(ほぼ確実)、海洋貧酸素化(確信度が高い)は、将来の排出に応じた速度で、21世紀の間、進行し続けるだろう。
    • 海水温の上昇(確信度が非常に高い)、海洋深層の酸性化(確信度が非常に高い)及び貧酸素化(確信度が中程度)は、数百年から数千年の時間スケールで不可逆的である。

    ※引用:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

    海面水位 

    1900年を基準とした世界平均海面水位の変化 ※出典:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

    1.5℃・2.0℃に抑えた場合、現在の上昇比率と同程度で推移し、2100年時に1900年からは約0.5m、現在からは約0.3mの上昇がシミュレーションされています。最も温室効果ガスの排出量が多いシナリオSSP5-8.5では、1900年から約0.9mとされていますが、可能性が低いとはいえ約1.7mまで上昇する潜在的な影響も予測されています。SSP1-2.6およびSSP3-7.0については、可能性が非常に高い範囲を示しています。

    海面上昇の影響ですでに、フィジー諸島、ツバル、マーシャル諸島など海抜の低い多くの島国では、高潮による被害が大きくなり、潮が満ちると海水が住宅や道路に入り込んでいます。さらに、海水が田畑や井戸に入り込み作物が育たない、飲み水が塩水となるなど生活に大きな影響が出ています。平均海抜が1.5mしかないツバルでは、2002年7月からニュージーランドへの移民も始まっています。海面上昇の影響は日本においても及んでいます。沖縄でサンゴ礁の消失が発生しており、今後海面が1mまで上昇することがあれば、日本の砂浜の約9割が失われるとされています。

    ※参照:国立環境研究所 地球環境研究センター
    ※参照:全国地球温暖化防止活動推進センター

    • 世界平均海面水位が21世紀の間、上昇し続けることは、ほぼ確実である。
    • 長期的には、海洋深部の温暖化と氷床の融解が続くため、海面水位は数百年から数千年にわたり上昇することは避けられず、また数千年にわたり海面水位が上昇した状態が継続する(確信度が高い)
    • 今後2千年にわたり、世界の平均海面水位は、温暖化が1.5℃に抑えられた場合は約2~3m、2℃に抑えられた場合は2~6m、5℃の温暖化では19~22m上昇し、その後も数千年にわたり上昇し続ける(確信度が低い)。
    • この数千年にわたる世界平均海面水位上昇の予測は、過去の温暖な気候の期間から復元される水準と一致している。世界の気温が1850~1900年と比べて0.5~1.5℃高かった可能性が非常に高い12万5千年前頃には、海面水位が現在よりも5~10m高かった可能性が高く、世界の気温が2.5~4℃高かった約300万年前には、海面水位が5~25m 高かった可能性が非常に高い(確信度が中程度)。

    ※引用:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

     

    気候変動を抑制するための残余カーボンバジェット

    ここまでは人為起源による気候変動が気候システムに与えてきた影響、そして今後想定される影響について触れてきました。そして今後想定される極端な高温や大雨、干ばつ、海氷減少、海面水位の上昇などの気候システムの変化は、パリ協定の目標を達成したとしても、今よりも悪化することは避けられないことが5つのシナリオで示されました。

    この章では、避けられない気候システムの変化による脅威の増大を、少しでも抑制するために、我々に残された排出可能なCO₂排出量を紹介します。

    カーボンバジェットとは?

    カーボンバジェットとは、地球温暖化をある一定の水準に抑えようとした際の、世界全体での人為的な累積CO₂排出量の最大値を意味します。カーボンバジェットには以下2つの指標があります。

    • 総カーボンバジェット:産業革命以前を起点とした現在までのもの
    • 残余カーボンバジェット:最近のある時期を起点としたもの

    総カーボンバジェットは過去の累積CO₂排出量を表し、残余カーボンバジェットは温暖化を特定の水準まで抑えようとした場合に、あとどれだけCO₂を排出できるのかを示します。

    温暖化抑制のためには少なくともCO₂ゼロ排出を達成すること

    累積CO₂排出量の関数としての1850~1900年以降の世界平均気温の上昇 ※出典:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

    上の折れ線グラフの図は、黒い細線が産業革命以降に観測された世界平均気温の上昇を表しています。中心線を含む灰色の範囲は、CO₂累積排出量に対応した人為起源による昇温の推定値を示しています。

    着色域は、5つのシナリオ(SSP1-1.9・SSP1-2.6・SSP2-4.5・SSP3-7.0・SSP5-8.5)における可能性が非常に高いと評価された世界平均気温の予測される範囲を示し、中央の着色戦は2020~2050年の累積CO₂排出量から推測される中央値を示しています。

    下の棒グラフは、それぞれのシナリオにおける過去(薄灰色)と予測される(着色)累積CO₂排出量を表しています。

    これまで見てきた5つのシナリオにおける今後予想される気温上昇でも明らかなように、パリ協定の1.5℃目標達成のためには最もCO₂排出量を抑制したシナリオSSP1-1.9、2.0℃目標では次に排出量を抑えたSSP1-2.6に沿う必要があり、現行推移を維持するSSP2-4.5ではパリ協定の目標には届きません。パリ協定の目標値に限らず地球温暖化を制限するためには、CO₂の排出量を制限し、少なくともCO₂ゼロ排出を実現し、温室効果ガスも大幅に削減する必要があります。温室効果ガス全体の排出削減は温暖化抑制だけでなく、大気の改善も期待できます。

    • 本報告書は、人為的な累積CO₂排出量とそれらが引き起こす地球温暖化との間にほぼ線形の関係があるというAR5(2013年第5次報告書)の知見を再確認する(確信度が高い)。
    • 累積CO₂排出量が1,000GtCO₂増えるごとに、世界平均気温が0.27~0.63℃上昇する可能性が高いと評価されており、最良推定値は0.45℃である。この幅はAR5やSR1.5(1.5℃特別報告書)に比べて狭い。→確実性が高まった。
    • この関係が示唆するところは、世界的な人為的気温上昇をいかなる水準でも安定させるためには、人為的なCO₂排出量を正味ゼロにする必要があり、世界全体の気温上昇を特定の水準に抑えるためには、累積CO₂排出量をそれに応じたカーボンバジェットの範囲内に抑えることを示唆するであろうということである。

    ※引用:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

    現在のCO₂排出ペースでは2045年頃に1.5℃に達する

    過去のCO₂排出量および残余カーボンバジェット推定値 ※出典:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

    上の表は産業革命以降から現在までの総カーボンバジェットを示し、下の表は2020年初頭からの気温上昇を、1.5℃・1.7℃・2.0℃までに抑えるための残余カーボンバジェットの推定値を示しています。

    残余カーボンバジェットの推定値には、5段階の可能性が示されており、1.5℃に抑えるために追加排出可能なCO₂は300~900GtCO₂、五分五分の可能性では500GtCO₂2.0℃に抑えるには900~2,300GtCO₂、五分五分では1,350GtCO₂と推定されています。

    2018年の世界のCO₂排出量335億t(33.5GtCO₂)を例にすると、この排出ペースを維持した場合、1.5℃上昇には14.9年(500GtCO₂換算)、2.0℃には40.3年(1,350GtCO₂換算)で到達する計算です。もちろん、温室効果ガスの排出による地球温暖化には、前セクションの折れ線グラフの図で着色して表現されているように予測範囲があり、またカーボンバジェットの推定値にも幅があるように、あくまで予測、概算の域を出ませんが、急ぎ対処する状況であることは明白です。

    ※参照:EDMC/エネルギー・経済統計要覧2021年版

    二酸化炭素除去およびカーボンニュートラル達成後の評価

    • 人為的な二酸化炭素除去(CDR)は、大気中からCO₂を除去し、貯蔵庫に持続的に貯蔵する潜在的可能性がある(確信度が高い)
    • CDR技術には、生物地球化学的循環や気候に広範囲にわたり影響を与える可能性があり、このことでCO₂を除去し温暖化を抑制するこれらの技術の潜在的可能性を弱めることも強めることもありうるほか、水の利用可能性や水質、食料生産や生物多様性にも影響を与えうる(確信度が高い)
    • 世界全体でCO₂の正味負の排出が達成され、持続した場合、CO₂による世界平均気温の上昇は徐々に下降に向かうだろうが、その他の気候変動は数十年から数千年の間、現在の方向性を継続するだろう(確信度が高い)
    • 例えばCO₂排出量が大幅に正味負となった場合でも、界平均海面水位が下降に転じるには数世紀から数千年かかるだろう(確信度が高い)
    • CO₂に起因する世界平均気温上昇を安定化させるためには、人為的なCO₂排出量と人為的なCO₂除去量が均衡することにより、世界全体で正味ゼロのCO₂排出量を達成することが必要条件である。

    ※引用:IPCC第6次評価報告書 第1作業部会報告書 政策決定者向け要約(SPM)

     

    各方面からのコメント

    今回のIPCC第6次評価報告書第1作業部会の公表にあたっては、世界中の各方面からコメントや意見が述べられています。その中からいくつかご紹介します。

    ジェシカ・ティアニー氏

    米アリゾナ大学 気候学者 IPCC報告書共同執筆者

    「世界の二酸化炭素排出量の約3分の2を占める国々が、今世紀半ばまでに排出量をゼロにすることを約束しており、これらの国が約束を果たし、他の開発途上国も追随するならば、気温の上昇は1.5~2℃に十分おさまります。私たちはまだ、より良い道を選べるのです。」

    アントニオ・グテーレス氏

    第9代(現)国連事務総長

    「人類にとっての非常事態」

    「石炭や化石燃料が地球を破壊する前に、人類に死の警鐘を鳴らさなくてはいけなくなります。」

    木本昌秀氏

    国立環境研究所理事長 査読:IPCC第6次報告書

    「人間の活動による温暖化は疑う余地がありません。」

    グレタ・トゥーンベリ氏

    環境活動家

    「新しいIPCC報告書にはサプライズは含まれていません。これまでの多くの研究や報告で、私たちはすでにわかっていましたし、緊急事態にいるということです。」

    「この報告書は私たちに何をすべきかは伝えていません。私たちには勇気を持って、これらの報告書が示す科学的な証拠に基づいた決断を下すことが求められています。私たちはまだ最悪の結果を避けることができますが、今日のような状態を続けていては無理ですし、危機を危機として扱わなければなりません。」

     

    正しい認識を持った決断を

    今回のIPCC報告書でも強い語気で示されたように、人為起源による地球温暖化は紛れもない事実で、人類史上例のないスピードで進行しています。そしてその影響もすでに体感できる形で現れており、今すぐに温室効果ガスの排出を削減しなければ高温や大雨、干ばつ、海氷減少、海水面上昇の増加および強化は深刻なレベルとなり、生物の多様性や人間の生活にも甚大な損害をもたらすこととなります。

    日本における気候変動の議論は世界から大分遅れており、国主導の取り組みや気候変動対策事業のビジネス展開など、欧米に比べて未熟で十分整備されているは言えません。日本だけでどうにかなる問題ではありませんが、人為起源による地球温暖化は科学のゴールドスタンダード、という純然たる事実に基づいた行動を、高い意志を持って実行していくことが求められています。まだ、最悪のシナリオは避けられるのです。

  • 今さら聞けない「電気代の仕組み」と今後の推移

     

    電気代の仕組み

    電気代は大きくわけて3つの料金から構成されます。

    基本料金

    電力量料金

    再エネ賦課金

    月々の電気料金は、契約容量で決まる基本料金と、使用電力量に応じて変化する電力量料金に、再生可能エネルギー発電促進賦課金を加えた合計です。
    次のような図になります。
    出典:資源エネルギー庁ウェブサイト(https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/fee/stracture/spec.html)

    基本料金とは

    基本料金は契約A(アンペア)に応じて決められている料金のことを指します。
    家庭1軒当たりの平均A(アンペア)は34.88Aとなっています。(2015年末時点)
    出典:東京電力ホールディングスウェブサイト

    平均的には、30A契約の基本料金または40A契約の基本料金が毎月かかっているということになります。では、いったいどのくらいの料金がかかっているのでしょうか

    電力会社5社の各契約A(アンペア)ごとの料金をもとに計算したところ(従量電灯Bの料金形態)、契約Aによる基本料金の平均は30Aで957円、40Aで1,276円となっていることがわかりました。(2021年7月時点)
    一人暮らし等の電力の使用量が少ないご家庭なら30A、電化製品の利用が日常的にあるなら40Aのように、電化製品の利用量に応じて契約Aを考えることができます。

    使う電化製品から契約A(アンペア)を予想する

    家電製品消費電力
    エアコン 10畳用冷房:5.8A 暖房:6.6A
    掃除機(強)10A
    ドライヤー12A
    電子レンジ 30Lクラス15A
    炊飯器 5.5合炊飯時13A
    ドラム式洗濯乾燥機洗濯時:2A 乾燥時:13A

    電力使用量が少なければ、30A~40Aで問題なく暮らせそうです。
    しかし、エアコンを各部屋でつけていたり電子レンジを使いながらドライヤーを使っていたりすると契約Aを超えてしまいます。
    ブレーカーが頻繁に落ちるようなら契約Aを見直した方が良いかもしれません。

    電力量料金とは

    電力量料金とは、使用電力量に応じて変化する料金で、月に使った電気の量(従量料金(kwh)×料金単価(円))によって計算されます。そこから「燃料費調整額」を燃料費の変動に応じて加算あるいは差し引いて計算します。では、平均的に毎月どのくらい電気を利用しているのでしょうか

    二人以上世帯の平均電力消費量(kwh)

    2010年2011年2012年2013年2014年
    1月547.8557.1558.6567.9561.2
    2月559.8593.9596.9578.7575.9
    3月523.2529.4561.4543.0560.6
    4月499.4486.2512.4456.7475.1
    5月452.6418.9433.4410.4396.6
    6月374.3356.7355.1344.3342.8
    7月378.2369.1342.3353.6332.3
    8月467.7408.4412.7424.1392.0
    9月519.5434.5439.5444.0391.8
    10月432.9386.2380.6373.9352.3
    11月384.2356.7364.8371.7349.2
    12月426.7409.3444.1425.8408.1
    平均463.9442.2450.2441.2428.2

    総務省統計局の家計調査データをもとに作成

    従量料金平均単価

    以下の表は、電力会社5社の電力量ごとの従量料金単価の平均をもとに作成した従量料金平均単価表です。(従量電灯Bの料金形態、2021年7月時点)

    使用電力量従量料金単価

    ~120kwhまで18.97円
    120kwh~300kwh24.30円
    300kwh~27.60円

    参考までにですが、これらのデータを組み合わせて考えてみると

    332.3kwh × 27.60円 = 9,171円
    が電力量料金となります。(電力量は2014年7月と想定)

    燃料費調整単価とは?

    燃料費調整制度は、事業者の効率化努力のおよばない燃料価格や為替レートの影響を外部化することにより、事業者の経営効率化の成果を明確にし、経済情勢の変化を出来る限り迅速に料金に反映させると同時に、事業者の経営環境の安定を図ることを目的とし、平成8年1月に導入されました。

    燃料費は為替レートや原油価格等の経済情勢の影響を大きく受けます。その影響を外部化、つまり皆で燃料費を負担し、安くなれば電気代も安くなるというイメージです。

    下の表は2019年までの電気料金の変化です。
    緑色の点線が原油価格となっていて、この原油価格に比例する形で燃料費調整単価が上下します。

    出典:資源エネルギー庁ウェブサイト(https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/energy2019/html/002/)

    燃料費調整単価は、毎月電力会社のHPで確認できます。

    再エネ賦課金とは

    再エネ賦課金とは再生可能エネルギー発電促進賦課金の略です。

    再生可能エネルギー(太陽光発電や風力発電など)を普及させるために、電力会社がこれらの再エネで発電した電力を買い取っています。
    この買取りに要する費用を電気料金に上乗せする形で電気を使用する家庭や企業が負担しています。この負担金および制度が再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)です。
    端的に言えば、再エネ導入のためにみんなが負っている負担金です。
    再エネ賦課金はkwhあたりの単価設定で、電気の使用量に応じて毎月の金額が決定します。

    出典:資源エネルギー庁ウェブサイト(https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/surcharge.html)

     

    電気代の推移

    電気代は2つの要因から今後も上がり続けると考えられます。

    要因1:再エネ賦課金の高騰

    再エネ賦課金単価の推移をご紹介します。制度が施行された2012年から、単価は一度も下落することなく上昇し続けています。
    上昇の要因としては、再生可能エネルギーの固定価格買取制度を使用した再生可能エネルギーの導入が進んでいるためです。導入が進めば、それだけ電力会社が買い取る再エネの量は増え、その負担額も増大していくからです。

    出典:資源エネルギー庁ウェブサイト (https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/energy2020/002/)

    詳しくはこちら

    毎年上昇を続ける再エネ賦課金。家庭では毎年1万円以上の負担?

    要因2:電気料金単価の上昇

    電気料金平均単価の推移をご紹介します。
    東日本大震災以降、電気料金は上昇しています。原油価格の下落などにより2014年~2016年度は低下しましたが、再び上昇傾向にあります

    出典:資源エネルギー庁ウェブサイト(https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/energy2019/html/002/)

    これら2つの要因から、今後も電気代は上がり続けると考えられます。
    では、電気代を安くするにはどうしたら良いでしょうか。

     

    電気代を安くするには

    1. 電力会社を切り替える
    2. 電気料金プランを切り替える
    3. 太陽光発電を取り入れる

    電力会社を切り替える

    2016年(平成28年)4月1日以降は、電気の小売業への参入が全面自由化されることにより、家庭や商店も含む全ての消費者が、電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになりました。
    これによって、それぞれのニーズに合わせた電力会社を選択することで、電気代の削減ができるようになりました。電気だけでなく、すでに契約しているガス会社や通信会社が電力プランを取り扱っていれば、「セット割」として割引を受けられることがあります。また、請求先をひとつにまとめられるのもメリットです。

    出典:資源エネルギー庁ウェブサイト(https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/fee/stracture/liberalization.html)

    電気料金プランを切り替える

    電力自由化により、契約している電力会社でも様々な料金プランを選べるようになりました。
    それぞれの電力量に合わせた料金プランを選択することで、電気代の削減につながります。

    1. 基本料金が0円のプラン
      基本料金が0円で、使った分だけの料金がかかる料金プランです。電気をたくさん利用する(契約Aの高い)ご家庭は基本料金が高くなってしまいがちです。
      毎月たくさんの電気を使うご家庭や、電気の使用状況に波がある方に適したプランといえます。
    2. 従量料金単価が一定のプラン
      大手の電力会社では、たくさんの電気を使うと、従量料金単価(電気の使用量によって変動する部分の単価。〇〇円/kwhで表されていることが多い)が高くなる仕組みになっているのが一般的です。
      従量料金単価が一定のプランなら、電気をたくさん使っても電気料金が跳ね上がることがないので、ご家庭の消費電力が多くなりがちなファミリー世帯などにおすすめといえます。
    3. 時間帯によって電気料金が変わるプラン
      電気を使用する時間帯によって料金が変動するプランもあります。多くの場合、早朝・深夜の電気料金が安くなっているので、早朝から活動しているご家庭や、深夜にたくさんの電気を使うライフスタイルの方に向いています。

    太陽光発電を取り入れる

    電気代を節約するには、電気を使わない(電力会社から電気を買わない)ことが一番です。

    太陽光発電を取り入れることで、電力会社から電気を買う量を減らすことができます。
    電気を買う量が減れば、使用電力量を減らすことにつながり、電力量料金を安くすることができます。

    その他にも、太陽光発電のメリットとして、売電収入を得られます。
    経済産業省の資料によると、平均的には住宅用太陽光発電がつくった電気のうち、自家消費されるのは約3割、売電が約7割です。
    つまり、太陽光発電を設置することによって収入を得られるということになります。

    今後さらなる値上がりが予想される電気代を、少しでも安く抑えるためにも、今から方法を探った方がいいかもしれませんね。電気代の削減は早ければ早いほど、当然ですが削減できる電気代は大きくなり、メリットも大きくなります。

     

    参考

    月々の電気料金の内訳
    https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/fee/stracture/spec.html
    燃料費調整制度について
    https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/fee/fuel_cost_adjustment_001/
    日本のエネルギー 2019年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」
    https://www.enecho.meti.go.jp/about/pamphlet/energy2019/html/002/
    電力自由化で料金設定はどうなったの?
    https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/fee/stracture/liberalization.html
    なっとく!再生可能エネルギー
    https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/surcharge.html

  • 2030年エネルギーミックスの素案を公表|再エネ比率は36〜38%

    2030年エネルギーミックスの再エネ比率を36~38%で調整中

    経済産業省は7月21日、同日に開催されたエネルギーの基本政策を討議する総合資源エネルギー調査会基本政策分科会においてエネルギー基本計画の素案を公表しました。素案において、2050年カーボンニュートラル実現のために、さらに近い目標では2030年までに温室効果ガス排出量を2013年度比で46%削減するために、総発電量に占める再生可能エネルギーの比率を「36~38%」とする方向で調整に入りました。

    近く、この素案をもとに政府案がまとめられ、パブリックコメントの意見募集が始まるものと思われます。

     

2030年電源構成(エネルギーミックス)案

今回素案が公表された新たなエネルギー基本計画は、2050年カーボンニュートラルおよび2030年の温室効果ガス排出量46%削減、さらに50%の高みを目指して挑戦を続ける新たな削減目標の実現に向けたエネルギー政策の道筋を示すことがテーマとされています。

主題は①東電福島第一の事故後10年の歩み②2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と対応③2050年を見据えた2030年に向けた政策対応の3つです。今回は③の2030年電源構成(エネルギーミックス)案について取り上げます。

再生可能エネルギーの比率を大幅に引き上げ

今回公表されたエネルギー基本計画の素案において、総発電量に占める再生可能エネルギーの比率は「36〜38%」とされ、現行目標値の「22〜24%」から10ポイント以上の引き上げとなります。しかしながら、再エネ推進で日本を先行する欧州や米国の50〜70%という目標に比べれば、見劣りしてしまいます。

再エネ電力の導入目安は3,300〜3,500億kWh

2019年度時点での導入実績値は1,853億kWhで、2019年度末からこれまでの約1年半でどれだけ導入が進んだかはデータが探し出せず不明ですが、仮に現時点で2,000億kWhまで積み上げられていたとしても、2030年までの残り9年で1,500億kWh積み上げる必要があります。これまで積み上げた量の実に75%を9年で導入する必要があります。

さらなる再エネ導入の見通し

①系統増強等を通じた風力の導入拡大

洋上風力発電の適地である東北や北海道から本州の大消費地への送電を可能とする長距離海底直流送電システムによる系統増強や、蓄電池の導入拡大による調整力の確保などを加速させ、2030年時点において北海道を中心とした風力発電の導入拡大を図る。(4GW程度

②地域共生型再エネ導入の推進

「地域共生型再エネの推進」によって4.1GW、加えて改正温対法および農山漁村再エネ法に基づくさらなる促進地域の設定を通じ、再エネ導入を推進する。

③民間企業による自家消費促進

環境省を中心として、関係省庁とも連携して実効性のある施策の具体化を図ることにより、民間企業による自家消費の導入拡大を図る。

④現行エネルギーミックスの達成に向けた施策強化

現行のエネルギーミックスの導入水準に達していない電源(地熱、中小水力等)について、施策・取り組みの強化で現行エネルギーミックス水準の達成を目指す。
例として、地熱発電は地上から人工的に注水することで、蒸気量を増加・安定化させる技術の確立・横展開により、設備利用率の向上を図る。

再エネ以外の「脱炭素電源」と省エネの強化

再エネの導入を目安の数値までさらに拡大したとしても、2030年46%削減の目標には届きません。そこで再エネ以外の「脱炭素電源」として原発、水素・アンモニアの強化、そして全体の消費エネルギー量を削減する省エネも同じく強化していくとしています。

原発は現行の「20〜22%」を維持

原子力発電は現行エネルギーミックスと同じ「20〜22%」が維持される方向性で、引き続き原子力が主力電源の1つとして考えられていることを示しています。しかしながら、これまでに再稼働した原子炉は10基で、20〜22%という水準を達成するためには未稼働の17基をあわせた、原子力規制委員会に再稼働を申請した27基全基を稼働させるばかりでなく、これまでの実績を大きく上回る80%という高い設備利用率(福島原発事故前10年の平均は67.8%)の実現を念頭に置くこととなります。

周知の通り、原発の再稼働に対して世論は依然として不信感を持っており、加えて原子力規制委員会が定める安全対策には多大なリソースと期間が必要で、2030年まで9年というリードタイムでの実現には疑問符が付きます。

水素・アンモニアで「1%」

燃料自動車としても注目される水素は、脱炭素時代において新たな資源として位置づけられ、社会全体への実装を加速させていきます。

大量の水素需要が見込める発電部門では、2030年までにガス火力への30%水素混焼や水素専焼、石炭火力への20%アンモニア混焼の導入・普及を目標に、混焼・専焼の実証の推進や非化石価値の適切な評価をできる環境整備を行なっていくとしています。また、2030年のエネルギーミックスでは、水素・アンモニアを1%と位置付けています。(現行は0%)

省エネ目標は現行の1.2倍

省エネは現行目標の5,030万klから約1.2倍となる、約6,200万klを目標に設定します。2019年度実績は1,655万klであるため、こちらも高い目標と言えます。

原発の比率が目標よりも低くなることが予想される中、再エネの比率が36〜38%を達成できるのであれば、省エネでエネルギー量を1割削減できるとしたら、2030年の46%削減目標は達成できると考えられます。

2030年までに2013年度比46%削減を達成するために

今回公表された素案でエネルギーミックス案として再エネを36〜38%、原発を20〜22%、水素・アンモニアを1%、省エネで1割削減という目標を示しましたが、ここまで触れてきたように原発の水準達成は非常に困難であると見込まれます。そうなると、FIT開始以降、導入が進んできた再エネのさらなる拡大と普及に頼ることとなります。政府が近年推進する洋上風力は大きなポテンシャルを秘めていますが、まだまだ発展途上で今すぐに普及が進むとは考えづらいです。他、地熱も全国に点在する開発ポテンシャルに対してわずか1%程度しか導入が進んでいません。その要因は、開発用地のほとんどが国立公園であり開発が困難であるためです。近年はその規制も徐々に緩和され始めてきているようですが、地元住民の理解を得る段階にはまだ至っていない案件が大半のようです。

となると、やはり46%削減目標を達成するためには、太陽光発電が本丸となってきます。他の再エネ電源に先行して普及が進んできた関係で、平らで日当たりの良い適地は数少なくなり、近年は地域住民とのトラブルや自然災害に関連した事故等のニュースも見かけるようになり、開発余地と世論の風当たりが厳しくなってきました。これら以外にも様々な課題がありますが、それでも太陽光発電は、すでに確立された技術で競争力のある安価な電源です。2030年まで9年となった現在においては、開発から発電開始までのリードタイムが短い電源であることも魅力的です。

今後の太陽光発電は、企業や住宅の屋根への様々な形態での設置、長年耕作されていない耕作放棄地の有効活用などを進めていくこととなります。政府の規制改革も議論の真っ只中にあり、政策上の支援が今後も拡充されていくと考えられます。

  • 改正温対法を解説します

    2021年改正温対法の3つのポイントを解説|地球温暖化対策の切り札

    国内における地球温暖化対策を推進する地球温暖化対策推進法(通称温対法)の改正案が2021年3月2日に閣議決定され、同年5月26日に参議院において可決、これにより改正温対法が成立しました。2020年10月に菅首相が宣言した「2050年までのカーボンニュートラルの実現」を初めて法律に明記したことで、政府目標の裏付けができた形です。今後、地球温暖化対策の政策継続性が一層高まり、国や自治体、企業、個人が一体となって脱炭素化、地球温暖化対策を推進していくこととなります。

    施行は基本理念の新設が公布日である2021年6月2日と同日、地方自治体や企業の地球温暖化対策の推進策の策定に関わる条文については公布日から起算して1年以内とされています。

     

     

    改正温対法の3つのポイント

    今回の改正は大きく3つのポイントに分けられます。「基本理念の新設」「地域の脱炭素化の促進」「企業の脱炭素化の促進」です。法律として明確な目標が定められ、地球温暖化対策のための脱炭素社会の実現や温室効果ガスの排出削減といった政策の確実性が担保されたという点において意義のある改正です。

    1.パリ協定およびカーボンニュートラル宣言を反映した基本理念の新設

    前回の法改正(2016年5月公布)以降、世界ではパリ協定の締結やIPCCによる1.5度特別報告書の公表、そして国内における2050年カーボンニュートラル宣言など地球温暖化対策をめぐる状況が大きく変化してきています。こうした世界の潮流に適合しつつ国だけでなく地方自治体や事業者、企業、個人が連携した地球温暖化対策および脱炭素化への取り組みを促進するために、以下の条文が新たに加えられました。

    地球温暖化対策の推進は、パリ協定第二条1(a)において世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏二度高い水準を十分に下回るものに抑えること及び世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏一・五度高い水準までのものに制限するための努力を継続することとされていることを踏まえ、環境の保全と経済及び社会の発展を統合的に推進しつつ、我が国における二千五十年までの脱炭素社会(人の活動に伴って発生する温室効果ガスの排出量と吸収作用の保全及び強化により吸収される温室効果ガスの吸収量との間の均衡が保たれた社会をいう。)の実現を旨として、国民並びに国、地方公共団体、事業者及び民間の団体等の密接な連携の下に行われなければならないものとすること
    1. パリ協定の2℃および1.5℃目標を踏まえた環境の保全と経済および社会の発展の統合的推進
    2. 2050年までの脱炭素社会の実現
    3. 国民・国・地方公共団体・事業者・民間団体等の密接な連携

    パリ協定およびカーボンニュートラル宣言を法律に明記することにより、政権交代による政策の一貫性欠如が防止できます。地球温暖化対策は全世界規模のオペレーションであり、国だけのオペレーションによって達成できるものではありません。地方自治体や民間の事業者、企業、そして個人が相互に連携して取り組んでいく必要があり、今回の改正温対法によって法律上の確実性を得られたことにより、各々が主体となるオペレーションに見通しが立てられ、その取り組みとイノベーションが加速していくと予想されます。

    2.地域の脱炭素化を推進する事業促進計画・認定制度の創設

    地方公共団体は温対法に基づき地域における地球温暖化対策を推進するために「地方公共団体実行計画」を策定するものとされています。しかしながら、実行計画で定める再エネの利用促進などの施策についてはその実施目標の設定までは求められていません。今後、ゼロカーボンシティを含めた地域の脱炭素化を実現していくためには、再エネの活用が需要であり、その施策実施の目標を追加するなどの実行計画制度の拡充が図られます。また、再エネの導入に際した地域の合意形成を円滑化し、地域脱炭素化促進事業を推進する仕組みを創設します。

    これらが法律に明記されたことで、地方自治体も実効性を伴った脱炭素化や地球温暖化対策の計画を策定し、その目標達成に責任を持ってチャレンジする必要性が生まれました。

    また、2025年度までに地方公共団体実行計画の策定率を100%となるように目指します(2019年度で約30%)。全国1,718自治体で期限を設けて脱炭素宣言をしている自治体は420で、全体の約24%です(2021年7月9日時点)。

    1.都道府県の実行計画制度の拡充

    1. 実行計画の実効性を高めるため、都道府県・政令市・中核市の実行計画において、再エネ利用促進等の施策(①再エネの利用促進②事業者・住民の削減活動促進③地域環境の整備④循環型社会の形成)に関する事項に加え、施策の実施に関する目標を追加する(第21条第3項)。
    2. 都道府県の実行計画において、地域の自然的社会的条件に応じた環境の保全に配慮し、省令で定めるところにより、(地域脱炭素化促進事業について市町村が定める)促進区域の設定に関する基準を定めることができる。(第21条第6項及び第7項

    2.市町村による実行計画の策定

    1. 市町村(指定都市等は除く。)は、実行計画において、その区域の自然的社会的条件に応じて再エネ利用促進等の施策と、施策の実施目標を定めるよう努めることとする(第21条第4項)。
    2. 市町村は1.の場合において、協議会も活用しつつ、地域脱炭素化促進事業の促進に関する事項として、促進区域地域の環境の保全のための取組地域の経済及び社会の持続的発展に資する取組等を定めるよう努めることとする(第21条第5項)。

    3.地域脱炭素化促進事業の認定

    1. 地域脱炭素化促進事業を行おうとする者は、事業計画を作成し、地方公共団体実行計画に適合すること等について市町村の認定を受けることができる(第22条の2)。
    2. 1.の認定を受けた認定事業者が認定事業計画に従って行う地域脱炭素化促進施設の整備に関しては、関係許可等手続のワンストップ化や、環境影響評価法に基づく事業計画の立案段階における配慮書手続の省略も可能といった特例を受けることができる。(第22条の5〜第22条の11)。

    以上の条文にあるように、各自治体が目標や実施施策を設定しその達成と取り組みに努めることが求められます。また、既存の地方公共団体実行計画制度を拡充する形で地域脱炭素化促進事業計画の認定制度が導入され、この認定を受け地域脱炭素化促進事業を行う事業者は、自然公園法・温泉法・廃棄物処理法・農地法・森林法・河川法の関連手続きをワンストップで受けられ、手続きの円滑化と効率化を図れます。

    3.企業の温室効果ガス排出量情報のデジタル化とオープンデータベース化

    今回の改正以前から、全ての事業所の原油換算エネルギー使用量合計が年間1,500kl以上となる事業者、また温室効果ガスごとに全ての事業所の排出量合計が年間3,000t以上となる事業者について、事業者自身が温室効果ガスの排出量を算定し報告する義務があります。しかし、現状は紙媒体中心の報告であるため、報告から公表まで約2年を要し、公表される情報も企業単位であり、事業所単位の情報は開示請求手続きを踏まなければ開示されない仕組みです。

    日本全体での脱炭素化の実現のために、地域企業の脱炭素経営の支援を推進していくことも併せて重要で、企業の脱炭素化に向けた取り組み状況の見える化や、地域企業への支援策を講じることで企業の脱炭素経営を促進していきます。

    1.温室効果ガス排出量の算定報告公表制度のデジタル化

    今回の改正により、企業の温室効果ガス排出量削減に向けた取り組み状況は、原則として電子システムによって報告するものとし、これにより報告から公表までの期間が短縮されるだけでなく開示請求なしで情報を閲覧でき、企業の排出量などの情報がより迅速かつ透明性の高い形で見える化されることが期待されます。ESG評価の上でも極めて重要な要素であり、迅速かつ透明性のある情報開示がステークホルダーや投資家からの信用と信頼を獲得することにつながります。

    2.事業者向けの啓発・広報活動の明記

    また、地域地球温暖化防止活動推進センターの事務として、温室効果ガスの排出量削減のための事業者向け啓発・広報活動が追加されます。

     

     

    改正温対法の背景

    今回の2021年度改正の背景には、ここまで触れてきたようにパリ協定の2℃・1.5℃目標および2020年10月の「2050年カーボンニュートラル宣言」が挙げられます。世界の潮流が数年前から環境保全やサステナビリティに流れていく中、日本はパリ協定の批准に遅れ、カーボンニュートラルの宣言にも遅れ、エネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの比率も低いまま、国としての国際的な競争力の維持・強化とイニシアチブの形成に後手を踏んできました。2020年のカーボンニュートラルの宣言でようやく土俵に上がり、今回の改正温対法で達成への道筋を示したと言えます。

    地域においては、国のカーボンニュートラル宣言に先立って「ゼロカーボンシティ」を宣言する自治体が現れ、早くからカーボンニュートラルに取り組む自治体も存在しました。こうした自治体は増加傾向にあり、実効性を伴った形でさらに促進させるべく、今回の改正では地方自治体に対する目標と目標を達成するための施策の設定に重きが置かれた印象です。

    企業においては、ESGの観点から気候変動に関する事業活動の情報開示や目標設定などの重要性が高まっているだけでなく、SBTTCFDRE100などといった国際イニシアチブに参画する企業数が日本は世界的にも高い水準にあり、企業での取り組みでは世界をリードしています。

    TCFD賛同機関数 ※2021年6月25日時点

    気候関連の財務情報を開示するタスクフォース。

    世界2,271機関(うち日本428機関)
    →世界第1位(アジア第1位)

    SBT認定企業数 ※2021年5月31日時点

    パリ協定が求める水準と科学的に適合した、5年〜15年先を目標年として企業が設定する温室効果ガス排出削減目標。

    世界729社(うち日本102社)
    →世界第2位(アジア第1位)

    RE100参加企業数 ※2021年7月21日時点

    企業の事業活動におけるエネルギーをすべて再生可能エネルギーで賄うとする国際イニシアチブ。

    世界320社(うち日本58社)
    →世界第2位(アジア第1位)

    RE Action参加団体数 ※2021年7月27日時点

    日本独自のRE100プラットフォーム。中小企業や地方自治体などが参加でき、RE100同様に再エネ100%を目指す。

    157団体

    改正温対法の意義

    パリ協定および2050年カーボンニュートラル宣言を法律の基本理念に新設したことは画期的で、今後、政権交代によって政治動向が変化した場合でも、政策レベルでの影響を緩和し、温室効果ガス排出削減という政策が継続していくという確実性が高まりました。企業や地方自治体にとっては、政権交代や政府の方針転換が事業収益や自治体運営に決して小さくない影響を及ぼすため、今回の改正で地球温暖化対策という点においては今後の予見可能性を得られ、大胆な事業拡大や新規事業開拓、イノベーションの促進が期待できます。

    また、地方自治体レベルに再エネ促進の目標と目標達成の施策を設けることを課したことも重要です。これまでは、全国の地方公共団体のうち30%しか実行計画を策定していないことからもわかるように実効性に欠ける計画でした。目標達成にコミットする必要性と再エネ推進策の裁量を拡大したことで、自治体の実効性ある施策が期待されます。

    新設された基本理念に「国民」が含まれたことも前例のないことです。国や地方自治体、企業だけでなく、一個人としても脱炭素社会の実現に向けて連携して取り組んでいくことを求めています。

    環境省は、基本理念の創設は、政策の方向性や継続性を明確に示すことで、あらゆる主体(国民、地方協団体、事業者等)に対し、予見可能性を与え、取り組みやイノベーションを促進するとしています。地球温暖化という難題に総力を挙げて取り組む政府の意思を示しました。我々もすでに傍観者ではなく、当事者として向き合っていかなければなりません。

  • 締切迫る!【補助率2/3】工場・事務所の省エネ化を補助する令和3年度省エネ促進補助金

    今月6月30日に締め切りが迫った「令和3年度先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金」の公募要領と採択されるコツをご紹介します。

    対象事業

    先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金は、法人および個人事業主の省エネ対策を補助する補助金制度です。対象となる事業は以下の4つです。

    A.先進事業

    高い技術力や省エネ性能を有し、今後、導入ポテンシャルの拡大等が見込める先進的な省エネ設備等の導入を行う省エネ投資への支援

    B.オーダーメイド型事業

    個別に設計が必要な設備等の導入を含む設備更新や、プロセス改修による省エネ取り組みに対しての支援

    C.指定設備導入事業

    省エネ性能の高い特定のユーティリティ設備、生産設備等への更新の支援(より多くの事業者を採択するために定額補助性をとる)

    D.エネマネ事業

    エネマネ事業者とエネルギー管理支援サービスを締結し、EMSの制御効果と運用改善効果による、より効果的な省エネ取り組みについての支援

    補助対象者

    企業規模を問わない日本国内の法人(規模により補助率の違い有り)および青色申告をしている個人事業主

    申請手順

    手順1.導入予定設備の確認と省エネ計画作成

    対象設備aは対象事業A、bはBのように、対象設備は同じアルファベットの対象事業の申請要件を満たして申請します。設備は単独が基本ですが、複数設備を組み合わせて申請することもできます。

    a.先進設備・システム

    SII(一般社団法人環境共創イニシアチブ:事務局)がホームページで先進設備・システムとして公表した補助対象設備

    b.オーダーメイド型設備

    機械設計を伴う設備または事業者の使用目的に合わせて設計・製造する設備等で、設計図書等の納品物があるもの

    c.指定設備

    SIIがあらかじめ定めたエネルギー消費効率等の基準を満たし、SIIが補助対象設備として登録および公表したもの
    ユーティリティ設備:高効率空調、産業ヒートポンプ、業務用給湯器、高性能ボイラ、冷凍冷蔵設備 等計10設備
    生産設備:工作機械、プラスチック加工機械、プレス機械、印刷機械、ダイカストマシン

    d.EMS機器

    SIIが補助対象設備として公表したエネルギーマネジメントシステム

     


    補助金採択のコツを資料と動画で解説します!

    ダウンロードは以下から↓


    手順2.省エネ効果の合算

    dを除くa~cの省エネ効果を合算します。

    手順3.省エネ効果の該当要件確認・事業区分選択

    「事業要件」および手順2で算出した省エネ効果がA・B・Cのどの「省エネルギー効果の要件」を満たすか確認し、申請する事業区分を選択します。

    事業区分A.先進事業B.オーダーメイド型事業C.指定設備導入事業
    事業要件資源エネルギー庁に設置された「先進的省エネルギー技術等に係る技術評価委員会」において決定した審査項目に則り、SIIが設置した外部審査委員会で審査・採択した先進設備・システムを導入する事業機会設計が伴う設備または事業者の使用目的や用途に合わせて設計・製造する設備等(オーダーメイド型設備)を導入する事業SIIがあらかじめ定めたエネルギー消費効率等の基準を満たし、SIIが補助対象設備として登録および公表した指定設備を導入する事業
    省エネルギー効果の要件申請単位において、原油換算量ベースで以下いずれかの要件を満たす事業
    ①省エネ率:30%以上
    ②省エネ量:1,000kj以上
    ③エネルギー消費原単位改善率:15%以上
    申請単位において、原油換算量ベースで以下いずれかの要件を満たす事業
    ①省エネ率:10%以上
    ②省エネ量:700kj以上
    ③エネルギー消費原単位改善率:7%以上
    SIIがあらかじめ定めたエネルギー消費効率等の基準を満たす設備を導入すること
    補助対象経費設計費、設備費、工事費設計費、設備費、工事費設備
    補助率中小企業者・個人事業主2/3以内1/2以内
    ※投資回収年数7年未満の事業は1/3以内
    設備種別・性能(能力等)毎に設定する定額の補助
    大企業1/2以内1/3以内
    ※投資回収年数7年未満の事業は1/4以内
    補助金限度額【上限額】15億円/年度
    【下限額】100万円/年度
    【上限額】15億円/年度
    【下限額】100万円/年度
    【上限額】1億円/年度
    【下限額】30万円/年度
    D.エネマネ事業
    SIIに登録されたエネマネ事業者と「エネルギー管理支援サービス」を契約し、SIIに登録されたEMSを用いて、より効果的に省エネルギー化を図る事業
    申請単位で、「EMSの制御効果と省エネ診断等による運用改善効果」により、原油換算量ベースで省エネルギー率2%以上を達成する事業
    設計費、設備費、工事費
    1/2以内
    1/3以内
    【上限額】1億円/年度
    【下限額】100万円/年度

    スケジュール

    公募期間

    2021年5月26日(水)~2021年6月30日(水)

    申請は、申請に必要となる証憑書類を準備し、WEB上の補助事業ポータルへ入力します。その後、申請書類等の必要書類を提出します。

    交付決定

    2021年8月下旬(予定)

    事業期間

    交付決定日~2022年1月31日(月)

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    資料ダウンロードは以下から↓

     

    (参考)

    • SII告知ページ:https://sii.or.jp/cutback03/overview.html
    • 事業概要パンフレット:https://sii.or.jp/cutback03/uploads/k01_panflet_gaiyou.pdf
    • 公募要領:https://sii.or.jp/cutback03/uploads/k05_kouboyouryou.pdf
    • 交付規程:https://sii.or.jp/cutback03/uploads/k06_koufukitei.pdf

  • 工場立地法とは?太陽光発電施設は環境施設として見なされる

    工場立地法の意外な対策方法とは?太陽光発電は「環境施設」として認められる!

    工場経営者であれば遵守しなければならない「工場立地法」について、その概略と対策方法としての「太陽光発電施設」の活用を解説します。

     

     

    工場立地法とは

    「工場立地法」は、工場立地が環境の保全を図りつつ適正に行われるよう、工場立地に関する準則等を公表するなどし、もって、国民経済の健全な発展と国民の福祉の向上に寄与することを目的としています(法第1条)。

    この法律は2017年4月に施行され、環境保全に考慮した工場立地を行うために、工場を建てる際に守らなければならない条件を定めています。

    「特定工場」と呼ばれる一定規模以上の工場や事業場を設置する際などに、届出などが義務付けられています。

    届出の対象 特定工場の定義

    • 敷地面積9,000㎡以上
    • 敷地内の建築物の建築面積の合計が3,000㎡以上 ※1

    のいずれかの条件を満たすこと。

    また、業種として

    • 製造業(物品の加工修理業を含む)※2
    • 電気供給業(水力発電所、地熱発電所、太陽光発電施設を除く)※3
    • ガス供給業
    • 熱供給業

    のいずれかである工場が法規制の対象となります。

    ※1.工場のほか、事務所や倉庫といった全ての建築物を含みます。また建築面積は水平投影面積を指します。
    ※2.農業生産物の出荷場(選別、洗浄、包装などを行う事業所や植物工場=業種が“農業”に分類される)は、原則対象外ですが、加工場の場合は届出対象となる場合があります(事業が規制対象業種である“製造業”と判断される場合、例えばでんぷん製造業など)。

    ※3.電気供給業でない特定工場内に設置された太陽光発電施設は、後述する「環境施設」として届出の対象となります。

    届出の期日

    届出の期日は、原則工事着工の90日前ですが、都道府県(弊社がある静岡県など)によっては届出と同時に着工までの期間を短縮したい旨を申請すれば、市町村と協議のうえ、期間を短縮することができます。

    届出の際重要となるの規制内容は、「生産施設面積率」と本法律の肝である「環境保全」の基準となる「緑地面積率」「環境施設面積率」です。この3点について順に説明いたします。

    生産施設面積率

    生産施設とは工場(機械や設備が設置してある建物)やプラント類を指します。事務所棟や倉庫、研究所棟など、工場棟から独立した建築物は生産施設に含まれません。太陽光・風力発電による自家発電施設、変電所・受電設備、工業用水施設なども生産設備には含まれませんが、太陽光・風力以外の自家発電設備、ボイラー、コンプレッサーなどは生産施設に含まれるため注意が必要です。

    生産施設面積率の規制は工場の業種によって異なり、

    生産施設面積率業種の区分
    30%
    • アンモニア製造業および尿素製造業
    • 石油精製業
    • コークス製造業
    • ボイラ、原動機製造業
    40%
    • 伸鉄業
    45%
    • 窯業・土石製品製造業
      (板ガラス製造業、陶磁器・同関連製品製造業、ほうろう鉄器製造業、七宝製品製造業及び人造宝石製造業を除く。)
    50%
    • 鋼管製造業
    • 電気供給業
    55%
    • でんぷん製造業
    • 冷間ロール成型形鋼製造業
    60%
    • 石油製品・石炭製品製造業
      (石油精製業、潤滑油・グリース製造業(石油精製業によらないもの)及びコークス製造業を除く。)
    • 高炉による製鉄業
    65%
    • その他の製造業
    • ガス供給業
    • 熱供給業

    以上のように定められています。

    緑地面積率・環境施設面積率

    特定工場は、業種に関わらず、工場敷地面積あたり20%以上の緑地ならびに25%以上の環境施設を設けなければなりません。

    ただし、この割合は立地する都道府県によっては、条例により緩和されている場合もあります。例えば弊社が所在する静岡県では、県内の清水町、函南町、小川町を除く町部においては次のように緩和されています。

    区域
    (都市計画法)

    要件

    第1種第2種第3種第4種
    住宅地域
    商業地域
    準工業地域工業地域
    工業専用地域
    その他、用途指定がない混在地域
    緑地面積率20%以上15%以上10%以上20%以上
    環境施設面積率25%以上20%以上15%以上25%以上

    また、緑地面積率・環境施設面積率それぞれの算出方法は

    • 緑地面積率=緑地面積/敷地面積×100[%]
    • 環境施設面積率=(緑地面積+緑地面積以外の環境施設面積)/敷地面積×100[%]

    と定められています。ここで注意したいことは、環境施設面積が緑地面積を含む点です。例えば敷地面積の20%にあたる緑地を持つ場合、必要な環境施設面積は25%-20%=5%だけとなります。

    緑地の定義と緑地以外の環境施設

    工場立地法の規則第3条にて、緑地は以下のように定義されています。

    緑地は、次の各号に掲げる土地又は施設(建築物その他の施設(以下「建築物等施設」という。)に設けられるものであって、当該建築物等施設の屋上その他の屋外に設けられるものに限る。以下「建築物屋上等緑化施設」という。)とする。

    1. 樹木が生育する区画された土地又は建築物屋上等緑化施設であって、工場又は事業場の周辺の地域の生活環境の保持に寄与するもの
    2. 低木又は芝その他の地被植物(除草等の手入れがなされているものに限る。)で表面が被われている土地又は建築物屋上等緑化施設

    容易に移設できず、良好な状態に維持管理されていれば、花壇や苔、さらには雑草地も緑地として認められるとされています。しかし、人工芝や野菜畑、温室、ビニールハウスは緑地として認められません。

    一方、緑化駐車場やパイプ下の芝生など(「緑地以外の環境施設」以外の施設と重複する土地)は重複緑地と呼ばれ、屋上や壁面の緑地とともに工場立地法の緑地として認められます。ただしその算入上限は、緑地面積率の1/4までと定められています。また、面積の計算方法は、傾斜面については水平投影面積、垂直壁面については壁面の長さ×1 mと定められています。

    「緑地以外の環境施設」の判断基準

    1. オープンスペースであり、かつ、美観等の面で公園的に整備されている
    2. 一般の利用に供するよう管理されること等により、周辺の地域住民等の健康の維持増進または教養文化の向上が図られる
    3. 災害時の避難場所等となることにより防災対策等が推進される
    4. 雨水等の流出水を浸透させる等により地下水の涵養が図られる
    5. 太陽光発電施設(生産施設に該当するものを除く。)については、実際に発電の用に供される

    具体例

    修景施設噴水、水流、池、滝、つき山、飛び石、灯籠、東屋等
    屋外運動場野球場、サッカー場、テニスコート、屋外プール等(これらに付属する観覧席等を含む)
    広場簡単な運動や集会が可能で、明確に区分されたオープンスペースで公園的に整備されているところ
    屋内運動施設体育館、屋内プール等(これらに付属する観覧席等を含む)
    教養文化施設企業博物館(製造業に関し、歴史的・文化的価値ある資料を収集・保存・展示している施設)、美術館等
    雨水浸透施設浸透管、浸透ます、浸透側溝、透水性舗装地等(雨樋のように雨水を通すだけのものを除く)
    太陽光発電施設生産施設ではないこと

     

    環境施設としての太陽光発電施設

    上記の環境施設の定義にもあるように、太陽光発電施設は緑地以外の環境施設として明確に認められています

    他の環境施設は景観の整備やストレスの発散という利点がある一方、経済的なメリットは期待できませんが、太陽光発電施設は電気料金の削減により直接的に工場経営に還元されます。また、CSR・SDGs活動の一環としてアピールできるほか、停電時の非常用電源として活用できBCP(事業継続計画)対策にもなります。

    太陽光発電施設が環境施設として認められたのは2012年のことで、同じ年には再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT法)がスタートしています。太陽光発電を始めとした再生可能エネルギーの導入拡大を目指す政府の方針から、太陽光発電施設が環境施設として認められたことがうかがえます。

    太陽光発電施設導入のメリット

    それでは、環境施設として太陽光発電施設を導入するメリットをご紹介します。

    電気代削減効果

    太陽光発電で発電した電気を自社の工場で使用すれば、その分だけ電力会社から買う電気量が削減できるため、電気代を削減できます。さらに、昨今の太陽光発電の導入費用は年々下落するなか、電気料金は継続的な値上がり傾向にあり、電気は電力会社から調達よりも、太陽光発電で発電する方が安く調達できるようになりました。

    電力会社から買う量を減らせるだけでなく、より安く調達できることで電気代を削減できるメリットは、他の噴水や運動場などの環境施設にはない太陽光発電施設だけの経済的なメリットです。

    工場敷地の有効活用

    太陽光発電施設は基本的に屋根に設置するタイプであるため、運動場のように敷地内に環境施設用のスペースを確保する必要がありません。環境施設専用のスペースを確保する必要がないということは、それだけ工場などの建屋に使える敷地を確保できるということで、建屋を拡張できたり、より広く建てたりすることができます。

    脱炭素化と企業価値の向上

    RE100やSBT、ESG投資、SDGsなどに代表されるように、世界の潮流はCO2からの脱却、脱炭素化です。菅首相が2020年の10月に、2050年までに日本国内の脱炭素社会を実現すると宣言するなど、日本においても脱炭素の波が押し寄せています。日本のCO2排出は、企業の活動による生産部門が8割を占めており、日本の脱炭素化には企業努力が欠かせません。

    そして、こうした脱炭素化や自社で消費するエネルギーを再生可能エネルギー由来に切り替えていく取り組みは、今後企業の経済活動に関わってくることも見逃せません。化石燃料由来の電気を使い続ける企業は、ESG投資の観点から投資先としての評価が下落していき、RE100やSBTに取り組む企業からは、取り引きから外されていきます

    太陽光発電施設を導入し、発電した電気を自社で使えば、自ずと再生可能エネルギーの使用量が増え、化石燃料由来の電気の使用量は減っていくため、脱炭素化を進めることができます。同時に環境先進企業としての企業価値が上がっていき、新規取り引き先や新規案件を獲得していくことができます。

    補助金と税制優遇が使える

    太陽光発電の導入には、太陽光パネルやその設置工事、また蓄電池の導入にかかる費用に補助金が出ています。また、中小企業経営強化税制を活用した100%即時償却または10%(企業規模によっては7%)の税額控除による節税ができます。うまく活用することで、初期費用を抑えた導入が可能です。

    BCP対策に有効

    近年多発する大型台風や記録的な大雨、そしてパンデミックなどから、緊急事態への直面を想定した事前の備えは、企業においても急速に対策が進んでいます。太陽光発電施設は、太陽が出ていれば発電できることで停電時でも電気が使えるというメリットがあり、BCP対策によく組み込まれています。蓄電池を併設し、あらかじめ電気を貯めておけば、太陽光発電が発電できない夜間や雨天時にも対応でき、緊急事態時のスマホやパソコン、テレビなどを使った情報収集、従業員や家族の安否確認などに役立ちます

    太陽光発電施設の活用場面

    おすすめの企業様、活用場面をご紹介します。

    • 工場敷地を有効活用したい
    • 新たに建屋を建てたい・拡張したいがスペースがない(既存の環境施設に建てるほかない
    • コストを削減したい
    • 親会社や取り引き先から、再エネ化を要請されている
    • 今年度利益が出たため節税したい
    • 停電で大損害を被った経験がある(また、その可能性がある)
    • BCPを策定中あるいは検討している

    太陽光発電施設導入のデメリットと注意点

    電気代が削減でき、工場敷地も有効活用できる太陽光発電施設ですが、導入の際のデメリットも考慮しておく必要があります。

    初期費用およびランニングコストがかかる

    太陽光発電施設の大きさによって異なりますが、導入時には1,000万円~3,000万円ほどの費用がかかります。メンテナンスや遠隔監視などのランニングコストが発生することにも留意しておく必要があります。

    ただ、前述のように太陽光発電施設は他の環境施設とは異なり、電気代削減による経済的なメリットがあります。電気代の削減で換算すると初期費用はおよそ10年で回収でき、補助金や税制優遇を活用すれば5年や6年での回収も見込めます

    稼働率は天候に左右される

    太陽光発電施設は太陽が出ていないと発電できないため、その稼働率は天候に左右されます。導入の際には、業者からどれだけ発電するのかというシミュレーションが提案されますが、どういった計算がされているかや、シミュレーション値の根拠、近場の発電所の実績値を確認すると良いでしょう。

    屋根貸しなど第三者の管理下にある場合

    太陽光発電施設を屋根貸しによって設置している場合、またPPA・TPOモデルを用いて導入しているような、施設が第三者の管理下にある場合は注意が必要です。

    太陽光発電施設に何かしらの変更などを加える際に、工場側がその変更を行えれば環境施設として見なされますが、第三者に管理権限があって、工場側で太陽光発電施設を管理下に置けない状況だと、環境施設としては見なされません

     

    まとめ

    工場立地法の概要と環境施設としての太陽光発電施設をご紹介しました。工場立地法は、工場を建てる際には必ず検討する必要がある法律で、工場側には緑化や環境施設も考慮した建設が求められます。自治体によって届出の期日や手続き方法が多少異なることも注意が必要です。

    限られた敷地をできるだけ建屋として活用したい、電気代コストが目に見える課題としてある場合は、環境施設に太陽光発電を検討すると良いかもしれません。下記では、無料で電気代削減のシミュレーションを行っています。お気軽に実施ください。

     

     

    出典
    ・「工場立地法について」静岡県WEサイト
    ・「静岡県 工場緑化ガイドライン~「質の高い」工場緑化を目指して~」静岡県資料
    ・「工場立地法 よくある質問」愛知県安城市資料
    ・「工場立地法運用例規集」経済産業省資料
    ・「工場立地法FAQ集(第2.0版)」経済産業省資料
    ・「特定工場届出の手引」静岡県資料

  • 2021年の再エネ賦課金は3.36円。家庭では1万円を超える負担に

    2021年度再エネ賦課金は3.36円|家庭では年間1万円超えの負担

    経済産業省は2021年3月24日に、電気の使用量に応じて需要家が負担する再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)の2021年度単価が、前年の2020年度の2.98円/kWhより0.38円高い3.36円/kWhとなることを公表しました。

    この増額によって、一般的な家庭(1ヶ月あたりの電気使用量260kWh)では年間10,476円の負担となる見通しで、再エネ賦課金が適用された2012年から初めて1万円を超えました。
    企業の負担は業種や業態によって大きくばらつきがありますが、例として事業所の1ヶ月あたりの電気使用量を1,700kWhとすると、年間7万円弱の負担となります。

    この2021年度の再エネ賦課金単価は、2021年5月の検針分から2022年4月の検針分まで適用されます。

     

    |再エネ賦課金単価のこれまでの推移

    【2021年版】再エネ賦課金単価の推移

    出典:資源エネルギー庁資料より作成

    直近2年間は数%の上昇範囲で横ばいでしたが、2021年度は前年度から約13%の上昇となり、3円を超えました。

    |なぜ3.36円なのか

    2021年度再エネ賦課金単価算定根拠

    出典:資源エネルギー庁資料

    再エネ賦課金の単価は、再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT法)で年間に買い取る電力量の想定(買取費用)から回避可能費用を差し引いた差額を、当年度に想定される総需要電力量(販売電力量)で割ることで算定します。回避可能費用とは、電力会社が買い取るFIT再エネ電力量分を、自社で保有する火力発電所などでの調達に置き換えた際に要するコストで、電力会社にとっては自社で調達せずに支出を免れた費用です。その差額をわれわれ国民が電気料金で負担しています。

    FIT再エネで3兆8,434億円かけて調達する電力量を、東電や中電が火力発電などで調達する場合は1兆1,448億円で済むから、その差額の2兆6,986億円は再エネ導入拡大のためのコストとしてみんなで払おうね、ということです。

    近年の横ばい傾向から10%以上賦課金単価が値上がりした要因は、回避可能費用等が前年度から3,300億円も減ったためだと読み取れます。2020年から2021年の年末年始にかけて発生した、電力市場価格の異常な高騰が大きく影響していると予想されます。

  • エネルギーマネジメント

    エネルギーマネジメントとは|コロナ時代を生き抜く企業の省エネ施策

    東日本大震災以降、電力供給への不安や電気料金の高騰が発生し、「エネルギーマネジメント」という省エネなど電力の効率的な使用を促す活動が注目されるようになりました。

    そしてその9年後の新型コロナウイルスによって、またも日常生活や企業の経済活動は変化を余儀なくされ、エネルギーの省エネだけではない、企業活動そのものを変革させる意味合いをも持つようになってきました。

    混同しやすいEMSとの違いにも触れながら、企業が取り組むべき最新のエネルギーマネジメントをご紹介します。

     

    エネルギーマネジメントとは

    エネルギーマネジメントとは会社の事務所やビル、工場、住宅、地域などのエネルギー使用を見える化し、効率的に使用するための企業や個人、地域の活動を指します。

    具体的にはEMSを導入することによるエネルギー使用の見える化であったり、太陽光発電で発電した電気を事務所などで使う自家消費であったり、高効率な機器への入れ替えによる省エネだったりです。

    エネルギーマネジメントを縮めて「エネマネ」とも呼びます。

    EMSとの違い

    EMSはEnergy Management System(エネルギーマネジメントシステム)の略で「エムズ」と呼びます。エネルギーの使用状況を見える化し、制御できるシステムです。

    エネルギーマネジメントとEMSの違いは、エネルギーマネジメントが省エネ活動全体を指し、EMSはその活動の一部だという点です。EMSは現在のエネルギー使用を把握できるため、エネルギーマネジメントではまず最初に導入すべきシステムと言えます。

    EMSには導入する設備や場所により、BEMSやHEMS、FEMSなどと呼ばれます。BEMSは企業の事務所やビル(Building)、HEMSは住宅(Home)、FEMSは工場(Factory)に導入するEMSを指します。他にはCEMS(Community:地域)、MEMS(Mansion:マンション)などがあります。

     

    エネルギーマネジメントの実施-効果的なサイクル

    エネルギーマネジメントの取り組みは、EMSによる現状の見える化→分析→改善施策立案→太陽光発電や蓄電池の導入→見える化による実施施策の効果測定→分析→改善施策立案…というPDCAのような一連のサイクルで回っています。

    見える化

    EMSによるエネルギー使用の見える化を図ります。EMSがないと電気やガス、水道などのエネルギーがどこでどれだけ使われているのかがわからず、省エネをしようにも改善すべき箇所がわかりません。そのため、現状把握に必須のシステムです。また、改善策実施後の効果測定にも欠かせず、エネルギーマネジメントによる省エネの実現はEMSの導入が大前提です。

    分析

    見える化により得られたデータを分析します。省エネを妨げている要因はどこなのか、改善策による効果がどの程度あったのかを効果測定します。

    改善策立案

    分析により得られた結果から、改善計画を立案します。

    実行

    立案した改善策を実行します。実行した後は再び、見える化→分析…という一連のサイクルを絶えず実行していきます。

     

    エネルギーマネジメントが必要な理由-なぜ必要か

    EMSによるエネルギーの見える化から始まるエネルギーマネジメントですが、なぜ今注目され、企業に必要とされているのでしょうか。

    理由はこれまでの省エネという価値に加え、昨今のRE100やRE Action、SDGsといった環境や社会を巻き込んだビジネスの潮流を受け、エネルギーマネジメントにも新たな付加価値が見出されたためです。

    経済的なメリット

    まずは経済的なメリットです。

    エネルギーマネジメントに取り組めば、割高な電気の使用量を抑えることができます。
    無駄なエネルギーを省く省エネ効果が得られ、電気代などのコストを削減し企業の利益体質を改善できます。

    コスト削減は企業経営において普遍的な課題ですが、なぜ今またエネルギーマネジメントの省エネなのでしょうか。

    ポイントは3つです。

    • 電気料金の高騰
    • 太陽光発電設備の値下がり
    • 売る電気よりも買う電気の方が高い→自社で使った方が経済的

    |電気料金の高騰


    出典:資源エネルギー庁資料より作成

    東日本大震災による甚大な被害が1つの要因となり、電気料金は2011年から値上がり傾向にあります。確認の取れた直近データとして、2019年度の17.0円は相当高い水準です。そしてこの高騰は、今後も高水準で推移していくことが予想されます。

    再生可能エネルギー導入拡大のための賦課金の増大、東日本大震災により発生した賠償金負担および廃炉費用負担、容量市場の約定額負担が今後発生してくる、物によってはもうすでに発生しているためです。

    こうしたすでに明らかになっている今後の上昇要因をできるだけ回避するために、省エネ、また買う電気をできるだけ減らす取り組みが必要なのです。

    |太陽光発電設備の値下がり

    太陽光発電は固定価格買取(FIT)制度下において、最も導入の進んだ再生可能エネルギーです。業者間の好意的な競争のおかげで、コストは10年前からは80%、5年前からは60%、3年前からは10%下落し、低コスト化が進んでいます。


    出典:資源エネルギー庁資料より作成

    太陽光発電の構造は半永久的に発電でき、効果的に発電できる期間はおよそ30年と言われています。

    低コスト化が進んだことで、FIT価格の下落が進む現在でも10年程での投資回収が可能で、補助金や税制優遇を使えばさらに回収を早めることが可能です。少なくとも20年間は、電気代削減効果が期待できるのです。

    |売る電気よりも買う電気の方が高い→自社で使った方が経済的

    FIT価格(売電単価)の下落、そして電気料金の高騰から、太陽光発電で発電した電気の売電収入と電気を買う買電費用の逆転が数年前から発生しています。

    つまり、発電した電気を売るのではなく自社で使う方が経済的なメリットがある、ということです。


    出典:資源エネルギー庁資料より作成 ※2020年以降の電気料金は予測値

    自社で使うことを「自家消費」と呼んでいますが、自家消費することで買う電気よりも安い電気を使えるだけでなく、その分の電気の購入量をおのずと削減することにもなるため、二重の電気代削減効果を得られます。

     

    企業も再エネ導入を経営戦略とする時代

    続いて、最近になって見出された新たな付加価値です。

    RE100やRE Action、SDGsに代表される環境・社会・経済を相互連携させ、より良いものにしていく国際的なイニシアチブは、日本でも大企業を中心に取り組みが広がり、近年は中小企業や地方自治体においてもその波が押し寄せています。

    コロナ禍からの復興を環境への投資で成し遂げようとする「グリーンリカバリー」が、合言葉のように叫ばれるようにもなりました。2020年以降を生きる企業の環境や社会への活動は、これまでのCSRのような責任という範囲に留まるものではなく、コロナにより痛みを伴ってもたらせたニューノーマルな世界のスタンダードになりつつあります。

    |2050年カーボンニュートラル宣言

    2020年10月に菅首相は、2050年までに日本国内での温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を宣言しました。「温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」ということは、消費電力量のすべてを再生可能エネルギーに置き換え、CO2などの温室効果ガスを全く排出しない、ということではありません。森林やCO2回収技術などを駆使し、温室効果ガスの排出と吸収をニュートラルな状態にすることを指します。

    政府が全世界に向けてこのような宣言をしたことで、日本国民一人一人がこの目標を達成するべく行動する必要も発生しました。

    事務所屋根などを活用した太陽光発電が必要

    カーボンニュートラルを実現するためには、再生可能エネルギーのさらなる導入が欠かせません。再生可能エネルギーの導入または脱炭素化を経営戦略に組み込んでいる企業は増加傾向にはありますが、さらに環境への意識を強めていく必要があります。

    なぜかというと、カーボンニュートラルを実現するためには、再生可能エネルギーの本丸である太陽光発電を300GW以上導入する必要がある(出典:一般社団法人太陽光発電協会)ためです。300GWは、現在の導入量の5倍に相当する数字ですが、それ以上に導入を進めていかなければなりません。

    この300GWのうち、企業の事務所や工場などの屋根あるいは空いている用地への導入量は約64GW、約20%を企業において導入することが想定されています。


    出典:一般社団法人太陽光発電協会

    CO2の排出は約9割が企業によるもの

    カーボンニュートラルの実現には再生可能エネルギーの導入拡大に加え、省エネや先進技術の導入によりCO2の排出を抑制する電力消費量の削減もカギとなります。

    2018年度の日本国内のCO2排出量は約11億3,800万トン(出典:温室効果ガスインベントリオフィス)で、その約86%が産業部門つまりは企業からの排出です。

    部門別で見ると鉄鋼業が2位以下に大きく差をつけトップ、その下には化学工業、乗用車、貨物自動車、窯業・土石製品製造業、農林水産業と続きます。これら産業に限った話ではありませんが、特にCO2排出の多い産業ではカーボンニュートラルを実現するために、ドラスティックな変化が求められています。

    2035年までに新車販売の100%EV化は、到底一企業で通り組める目標ではありませんが、電力使用の見直しや太陽光発電の導入によるCO2排出の削減は、一企業で十分取り組むことができ、今後重要度を増していく経営戦略です。


    出典:三菱UFJリサ―チ&コンサルティング・温室効果ガスインベントリ資料より作成


    出典:三菱UFJリサ―チ&コンサルティング・温室効果ガスインベントリ

    |サプライチェーンまでを含めた100%再エネ化の波

    RE100という企業活動で消費するエネルギーをすべて再生可能エネルギーで賄う国際的な環境イニシアチブは、全世界で290社を超える企業が加盟し、日本からは50社が加盟しています(2021年3月時点)

    RE100に加盟することは脱炭素化および再生可能エネルギーの普及に貢献していること内外にアピールできるだけでなく、昨今のESGを重要視するマーケットの側面からも無視できない評価基準となっています。加盟できるのは限られた世界的な大企業であるため、そうした意味でも一種のステータスとも言えます。


    出典:JCLPウェブサイトより作成

    RE100で求められている再生可能エネルギー100%は、加盟する自社だけの目標ではないことも特徴です。

    加盟する企業のグループ会社や部品などを供給するサプライチェーンも、再生可能エネルギー100%を達成する必要があります(※条件あり)。自社は加盟していなくても、ある日突然、親会社や川上の取引先からの要請で、太陽光発電を導入したり再生可能エネルギー由来の電力を買ったりなどで、比率を上げていく必要が出て来るやもしれません。

    例えば、Appleは2018年に全世界にある同社の施設すべてにおいてRE100を達成しました。同時に、2015年に立ち上げた「サプライヤー・クリーン・エネルギー・プログラム」において、日本を含めた全世界のサプライヤーに対して、同社に供給する部品製造などを行う生産活動で2030年までにRE100を達成することを求めています。

    すなわち、再生可能エネルギー100%でなければ、もはやAppleとは取引できないということです。

    こうした動きは、全世界の加盟企業290社のうち50社を日本が占めていることからも無関係の話ではなく、中小企業であっても、自社は加盟していなくとも、RE100を達成する必要が必ず発生してきます。そうした時に、太陽光発電の導入や再生可能エネルギーを取り扱っている新電力会社プランへの切り替えなどのエネルギーマネジメントは、再エネ比率を高めるための有力な選択肢となります。

     

    BCP:災害やパンデミックなどの緊急事態への対応

    新型コロナウイルスによって、我々は、未来は予見できない不確実なものであることを痛感しました。近年多発する豪雨や大型台風による被害、そして東日本大震災とどれも記憶に新しい出来事で、いつ起こるかわからない非常事態の頻度は以前よりも明らかに上昇しています。

    企業がこうした緊急事態に直面した際に、できるだけ被害を最小限に抑え、迅速に事業を再開するために事前に対応方法などをまとめた計画をBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)と呼び、近年、非常に注目されています。

    このBCPという観点からも、エネルギーマネジメントは重要な役割を果たします。

    太陽光発電と蓄電池があれば、インフラが寸断された停電下でも電気が使え、スマホやPCを使った家族や社員との連絡が取れます。また、一刻を争う事態には、重要な判断を下す場面が多々発生しますが、その際に欠かせない情報収集も可能となります。

    どんな活動にも電気は欠かせないインフラであり、緊急事態時でも電気を使えることが、迅速な事業再開を可能とするための最低条件と言えます。以上から、太陽光発電と蓄電池の導入というエネルギーマネジメントは、BCPにおいても重要視されています。


    出典:帝国データバンク資料より作成

    いま、エネルギーマネジメントに取り組む意義

    |取り組まないという経営判断は重大なリスクと同義

    ここまで紹介してきたように、経済的なメリット企業の再エネ化の波、そしてBCP策定があり、エネルギーマネジメントが注目されています。

    電気料金の高騰やFIT価格の下落、カーボンニュートラルやRE100などは、どれも外的な要因に思えてしまいますが、今行動を起こさなければ電気代のコストは上昇し続け、再エネ化の波に乗れず取引先から除外されてしまいます。

    エネルギーマネジメントに取り組まないことは、企業にとって重大なリスクを負うことと同義なのです。

    |企業価値が上がり、新規案件の引き合いや優秀な人材を獲得できる

    逆にエネルギーマネジメントに取り組めば、電気代を削減でき省エネとコストダウンが実現。

    脱炭素や再生可能エネルギーへの貢献が評価され、円滑な資金繰りや新規案件の引き合い、優秀な人材をリクルートできる。

    地震や大規模停電などの緊急事態に直面した際も、いち早く事業を再開できる。

    企業価値が上がり、持続可能な企業の創造につながる。これこそが、いまエネルギーマネジメントに取り組む意義です。

     

    中小企業ができるエネルギーマネジメント実践例

    EMSの導入

    現状の電力使用だけでなく、改善策実行後の効果も測定する「見える化」ツールのEMSは、エネルギーマネジメントを実施する上で欠かせません。上述したように、EMSは導入する場所や用途によって様々な呼ばれ方があり、それぞれにメーカーや商社から商品展開がされています。

    まずは、自社のどこにEMSを導入したいのか、事業所なのか工場なのか店舗なのか。通常は最も電力使用量の多い場所に導入することが、最も効果的な省エネとなるはずです。

    導入場所の目星がついたら、その場所に適したEMSを提供しているメーカーや商社に問い合わせてみましょう。
    色々なEMSのおさらい:EMS(一般的には事業所)・BEMS(ビル)・HEMS(住宅)・FEMS(工場)・CEMS(地域)・MEMS(マンション)

    |EMSを使った省エネ効果

    一元化した管理システムの構築

    企業の生産活動において、電力を消費するデバイス・機械は数多くあります。特に工場などの大規模な需要場所ではなおさらで、それらデバイスや機械の電力消費量のデータは、それぞれが独立して管理されているケースがあります。EMSによってこのデータを一つにまとめ、工場全体を管理する統一されたシステムを構築します。

    コストをかけない省エネ

    改善策の実行は、必ずしも効率の良い機器への買い替えや太陽光発電の導入だけではありません。EMSによって電力使用が見えるようになれば、エアコンの温度を調整したりアイドリングを止めたりすることだけでも、省エネができていることを実感できます。

    太陽光発電の導入

    太陽光発電は2012年から始まった固定価格買取(FIT)制度によって急速に普及してきましたが、これまでの太陽光発電はほとんどが「売電型」と呼ばれる、発電した電気の一部あるいは全量を売るモデルでした。しかしながら、上述のように近年の電気料金の高騰およびFIT価格の下落から、売るよりも使った方がお得になるため「自家消費型」が注目されています。

    太陽光発電を導入することで、割高な電気料金の購入量を抑え、屋根上などで発電した割安な電気を使うことでの省エネ効果が得られます。さらに、自社で使う電力に占める再生可能エネルギーの比率を上昇させることもできます。

    コストは年々下がり、多様な導入方法、中には補助金が出る導入方法もあるため、導入には適した時期と言えます。

    |2021年以降の太陽光発電の導入方法

    FITを使った導入-自家消費型太陽光発電

    FITは数年前から自家消費を前提としており、発電した電気をまずは自社で30%以上消費した上で、余った余剰分をFIT制度の固定価格で売電します。FIT価格は電気料金よりも安いため、できるだけ使った方が、投資回収を早められます。

    この導入方法では多くの場合、事業所や工場の屋根、あるいは敷地内の空地に設置します。

    工場や倉庫に太陽光発電をつけたい

    医療介護福祉施設に太陽光発電をつけたい

    ドラッグストア・スーパーに太陽光発電をつけたい

    PPA・TPO

    PPA・TPOは第三者保有モデルと言われ、太陽光発電に出資する事業者が別にいるため、自社でPPA・TPOモデルを使って太陽光発電を導入する場合は、初期費用・ランニングコスト0円で導入できることが魅力です。

    ただし、設置場所が自社事業所の屋根であっても、太陽光発電設備の保有はあくまで出資する事業者である点に注意が必要です。これが、初期費用・ランニングコストともに0円で導入できる理由です。

    設備は事業者との取り決めによって多少異なりますが、10年ほど経てば無償で事業者から提供されます。

    また、PPA・TPOには環境省から補助金が出ているため、今最も導入しやすい太陽光発電です。

    PPA・TPOモデルはこちら

    自己託送

    屋根に太陽光発電を設置したいけど、スペースがなくて設置できない。空地もない。そういった場合でも、太陽光発電を導入できる仕組みが自己託送です。

    電気を消費する事業所や工場などの需要地から離れた空地に設置した太陽光発電で発電した電気を、電力会社の送配電網を通して、電気を消費する事業所や工場に届ける仕組みです。電気の届け先はグループ会社内まで適応されるため、グループ単位での再生可能エネルギー率向上にも貢献します。

    屋根にスペースがない。近くに空地もない。でも太陽光発電を導入したい。そんな時は自己託送です

    蓄電池の導入

    蓄電池は家庭用の比較的小規模なサイズから、工場や物流倉庫までをカバーできる大容量のものまで幅広いラインナップがあります。店舗や事業所なら7~12kWhほど、医療・介護施設なら12kWh以上のもの、工場クラスでは78kWh以上が一応の目安ですが、消費する電力量やバックアップしておきたい容量によって異なるため、販売店と相談しましょう。

    価格は高いと思われがちですが、リチウムイオンバッテリーの技術革新と着実な普及によって下落しています。今後、EVが主流となることを考えれば、さらなる低コスト化も期待できます。

    自社に合った蓄電池とは?

    |蓄電池の省エネ効果

    ピークカット-デマンド抑制

    ピークカットは⼀⽇のうちで最も電⼒の使⽤量が多い時間帯に、蓄電池に貯めた電⼒や太陽光発電で発電した電⼒を使⽤することで、電⼒使⽤ピーク時に電⼒会社から買う電⼒量を減らします。

    これによって最⼤デマンド値が抑えられ基本料⾦が削減でき、電⼒会社から買わない分の電⼒量料⾦も削減できます。

    ピークシフト

    ピークシフトもピークカットと同じく最⼤デマンド値を抑制する効果がありますが、ピークカットとは違って使⽤する電⼒量は変わらず、⼀⽇の時間帯によってばらつきのある使⽤電⼒量を均⼀にすることで最⼤デマンド値を抑えます。

    例えば、電⼒をあまり使わない夜間に蓄電池に電⼒を貯め、電⼒をよく使う昼間に放電する使い⽅があります。

    新電力への切り替え

    新電力への切り替えは、最も簡単にできる電気代削減方法の一つです。ほとんどの場合、旧東京電力や旧中部電力などの大手電力会社よりも5%ほど安いプランが用意されています。

    新電力と言っても、旧一般送配電事業者(旧東電や旧中電)が整備している送配電網を利用するため、電気の質は変わりありません。仮に新電力からの電気の供給が難しくなった場合でも、旧東電や旧中電から電気が供給されるので停電の心配はありません。

    新電力は2021年3月時点で709社が登録されており、各社様々なプランが用意されています。その中から自社に合ったプランを探すことは、数が多いだけにハードルが高いと感じるかもしれません。

    自社に合った新電力とは?

    |新電力の選び方

    基本料金と使用電力量

    電気料金は大きく電気の使用に関わらず支払う基本料金と、使用した電力量に応じて支払う電力量料金とで構成されています。ここでは主要な3プランを紹介します。事前に電気量明細を確認して自社がどれくらい電気を使っているのか、どの時間帯が多いのかを把握しておくと選定が捗ります。

    ・基本料金 電力量料金

    このプランでは、電力量料金が高めに設定されているため、あまり電気を使わない業態がおすすめです。基本料金0円で、電力量料金だけというプランも存在します。

    ・基本料金 電力量料金

    このプランでは、基本料金が高めで電力量料金が割安に設定されており、日頃から電気を多く使う業態がおすすめです。

    ・2・3タイム制

    朝~昼・夜の2タイム制あるいは朝・昼・夜の3タイム制をとるプランです。多くの場合、夜間が割安に設定されているので、夜間に多く電気を使う業態がおすすめです。

    再エネプラン

    太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー由来の電気を使えるプランです。

    RE100などに加盟していることから、再生可能エネルギーの比率を上げたい企業におすすめのプランですが、RE100に適合するためには注意が必要です。再生可能エネルギー由来と言っても、発電場所から需要地へ電気を届ける際には既存の送配電網を使わざるを得ないため、他の火力や原子力由来のエネルギーと混ざってしまい、再生可能エネルギー由来の電気を買うだけではRE100に適合した電気とはみなされません。そのためRE100に対応するには、再生可能エネルギーの発電所で発電された電気であることを証明するトラッキング付き非化石証書のついた再エネプランを選ぶ必要があります。

    再エネ(RE)プランを設けている新電力は数多くありますが、RE100に適合するためにはトラッキングされた再生可能エネルギーかどうかの確認をしましょう。

    地域新電力

    新電力会社のなかには、ある特定の地域のみに電気を供給している「地域新電力」と呼ばれる地域密着型の新電力があります。

    特徴はサービス提供範囲が限定されている、その地域で発電した再エネを使えるプラン、資本はその地域の企業だけで成り立っている、地域通貨などの多彩な複合サービスなどです。これら特徴からわかるように、地域新電力は電力サービスを通した地域の活性化や地方創生を目的としています。東京一極集中の是正とも合致し、全国規模でこうした新電力会社が立ち上がっています。

    競争力という面では大手の電力会社には劣ってしまいますが、地域に根差した企業にとっては、ともに地元を盛り上げていくパートナーとなるのではないでしょうか。

     

    エネルギーマネジメントを導入したお客様の声

    太陽光発電や蓄電池の導入、新電力への切り替えといったエネルギーマネジメントを導入されたお客様の声をご紹介します。

    |マーブ工業株式会社 様 製造業・事業所

    製造業のお客様で、事業所の屋根に太陽光発電を設置されました。その際に既存の電力契約を見直したことで、さらに電気代削減につながっています。

    詳しい事例を見る

     

    |静岡県浜松市 診療施設 様 医療・診療施設

    太陽光発電の導入と新電力への切り替えをされました。営業時間の関係から消費電力のほとんどを太陽光発電で賄っておられます。

    詳しい事例を見る

     

     

    今後のエネルギーマネジメント

    創る・省く・使う・蓄える

    これまでのエネルギーマネジメントは、東日本大震災直後の電力不足を改善するためにスタートした背景から、省エネにフォーカスされていました。その後、上述したように社会情勢の変化によって、省エネだけではない再生可能エネルギーの導入拡大やBCP、企業価値の向上など新たな付加価値が見出されるようになりました。

    エネルギーマネジメントは、これまでの省エネに重点が置かれた「省く」から、自前の太陽光発電によって電力を「創り」、省エネで「省く」、効率的に「使う」、余った電力は「蓄える」という4つのフェーズが有機的に連動する概念に変わりつつあります。

    省エネによるコストカットを実現しつつ、持続可能な企業の創造に貢献するエネルギーマネジメントは、アフターコロナやWithコロナと呼ばれる時代に最適な経営戦略です。

  • 【ニュースリリース】つづくみらいエナジー㈱の小売電気事業者登録完了のお知らせ

  • 静岡県の夜明けは「再エネ県、しずおか」から

    静岡県に豊富に存在する「再エネ」を利用して静岡県の地方創生に挑むつづくみらいエナジー株式会社は、経済産業省、資源エネルギー庁の審査を経て、2021年2月19日に正式に小売電気事業者として登録されました(登録番号:A0766)。再生可能エネルギーを県内に提供していくことで、大企業誘致や県内企業の競争力アップに貢献するとともに、メインパートナー企業と関連ビジネスを展開し、静岡県の地方創生に挑戦していきます。

    コロナ禍により人口過密リスクが明らかになる一方、オンラインミーティングや在宅勤務など、場所を選ばない働き方が進んでいきました。静岡県は、人口減少都市へと転じ、若年層の転出超過が目を見張りますが、浜松市を筆頭に日本有数の日照量を誇り、太陽光を中心とした再生可能エネルギーに恵まれています。今、世界中の国がこぞって脱炭素宣言を表明し、ビジネスシーンでもRE100(※1)などの脱炭素、気候変動への取り組みが加速し、大手企業のサプライチェーンに位置する中小企業までも再生可能エネルギーの導入が必要とされる状況になろうとしています。

    つづくみらいエナジー株式会社では、今後需要が急増していく再生可能エネルギーを静岡県内に提供していくことで、我々自身が大企業を県内に誘致する呼び水になるとともに、県内企業の再エネ比率向上を通した県内企業の競争力アップに貢献していきます。そして、静岡県を「再エネ県、しずおか」としてリブランディングし、移住者増加や新規ビジネス創出に貢献し、静岡県を世界に冠たる持続可能性都市へと成長させる一助になりたいと考えています。

    つづくみらいエナジー株式会社は、スマートブルー株式会社、静和エンバイロメント株式会社、株式会社M.A.Cの出資により設立されましたが、今後出資企業を55社まで増やし、静岡県全体のムーブメントとしていきます。

    ※1 RE100:The Climate GroupとCDPによって運営され、企業の再生可能エネルギー100%を推進する国際ビジネスイニシアティブ。AppleやGoogleなど、世界の大手企業が参加しており、日本企業は50社参加し、世界第2位の参加企業数を誇る

     

    コンセプト

    地域の再生可能エネルギー資源の地産地消を謳う「地域新電力」は、日本各地で増えつつあります。一方で、公共施設の電力契約を独占するためだけに設立されたもの、大手企業が参画し、エネルギー代金の域外流出先が代わっただけのものなど、掲げられた理念と実態が異なる新電力が多いこともまた事実です。つづくみらいエナジー株式会社はそのような地域新電力とは一線を画し、地域再エネ資源の地産地消だけにとどまらず、県内企業のみの出資(出資構成は下記に記載)によるエネルギー代金の静岡県内での循環、出資企業間のアライアンスの形成などを行い、「しずおかの電力会社」を目指します。

    出資企業

    つづくみらいエナジー株式会社は、真の地域新電力を目指して、県内企業の出資のみから成り立っています。出資区分として、経営に参画するメインパートナーと、当社理念に賛同し、アライアンスへの参加等を通して後援を行うつづくみらいメンバーの2つを設けています。出資企業数は、メインパートナー及びつづくみらいメンバー合わせて最終的に55社となる予定です。

    〇メインパートナー

    スマートブルー株式会社
    静和エンバイロメント株式会社
    株式会社M.A.C
    ※ 今後日進電機株式会社及び西部地方の企業が参画予定です。

    〇つづくみらいメンバー

    株式会社カントビ、有限会社エス・ティ・シー、株式会社ライフ・デ・ザイン、司法書士・行政書士法人あおいリーガル、マーブ工業株式会社、株式会社ナナクレマ、株式会社鎌田配管工事店、株式会社アクセス、株式会社大岡成光建築事務所、株式会社電器堂、キタイ電気株式会社
    ※ 残り39社は現在募集中です。

    供給予定開始時期

    2021年6月(電力広域的運営推進機関及び一般送配電事業者との各種契約・手続き完了後)

    提供予定電力プラン

    〇再エネプラン

    再エネを含み、企業の再エネ比率の向上と脱炭素化に資する電力プラン

    〇再エネコンプリートプラン

    RE100、RE Actionに対応したトラッキング付き再エネ電力を提供

    〇子育て応援プラン

    3歳児以下の家庭向けに特別割引の電力を提供

    〇在宅介護応援プラン

    在宅介護者向けに特別割引のある電力を提供

    今後の取り組み予定

    つづくみらいエナジー株式会社は、再生可能エネルギー由来の電力を提供するだけでなく、再生可能エネルギーを軸にした様々なビジネスを展開していきます。現在予定している事業は下記になります。

    〇再エネ100%オフィスの提供

    RE100参加企業を筆頭に再生可能エネルギーを求める企業は増えつつあります。再エネ電力プランの契約による再エネ100%オフィスを県内主要都市で展開していきます。

    〇PPAモデル

    工場やオフィス等の屋根上に第三者が太陽光発電設備を無料で設置し、テナント等がその電力を使用するPPAモデルを県内企業向けに提供していきます。メインパートナー企業等で太陽光発電設備の設置を行い、つづくみらいエナジー株式会社は発電量で賄えない部分の電力の提供を行います。

    〇EVリース

    電気自動車(EV)は今後急速に拡大していくことが見込まれます。親会社のスマートブルー株式会社でEVリース事業を展開し、つづくみらいエナジー株式会社では環境省の補助金(※2)に対応する再エネ電力の提供などを行っていきます。

    〇アグリゲーター

    県内の太陽光発電を中心とした発電所を束ねるVPP(バーチャルパワープラント)や需要家側リソースとの調整を行うDR(デマンドレスポンス)を行うアグリゲーターを目指していきます。

    ※2 令和2年度第三次補正予算で環境省が計上している「再エネ電力と電気自動車や燃料電池自動車等を活用したゼロカーボンライフ・ワークスタイル先行導入モデル事業(経済産業省 連携事業)」では、再エネ100%電力の調達等を条件にEVや充放電設備等の設置・導入に補助金が支払われます。
    参考サイト:http://www.env.go.jp/air/cms_a-taiki_s1/pr_moe.pdf

    会社概要

    社   名:つづくみらいエナジー株式会社
    本社所在地:静岡県静岡市葵区七間町14-1 ザ・エンブル七間町2701
    設   立:2020年11月2日
    代 表 者:代表取締役 塩原 太一郎
    U   R  L:https://tmenergy.co.jp/

    本件に関する問い合わせ

    つづくみらいエナジー株式会社 瀬野
    電話番号:054-277-2293
    Email:info@tmenergy.co.jp

    世界の気温変化の歴史と近年の昇温の原因
    1850~1900年を基準とした2010~2019年の観測された昇温への寄与の評価
    極端な高温が観測された変化の評価およびその変化における人間活動の影響の確信度の合成図
    世界中の地域で大雨が観測された変化の評価とその変化における人間活動の影響の確信度の合成図
    世界中の地域における農業および生態学的な干ばつが観測された変化の評価とその変化における人間活動の影響に関する確信度の合成図
    5つの例示的なシナリオにおけるCO2及び一部の主要な非CO2駆動要因の将来の年間排出量
    5つの排出シナリオにおける2021年から2100までの世界平均気温の変化
    地球温暖化による極端な高温の頻度および強度の増加
    地球温暖化による大雨の頻度および強度の増加
    地球温暖化による干ばつの頻度および強度の増加
    年平均鉛直精算土壌水分量の変化(標準偏差)
    1850~1900年を基準とした世界平均気温の変化
    9月の北極海の海氷面積
    世界全体の海面付近のph(酸性度の尺度)
    1900年を基準とした世界平均海面水位の変化
    累積CO₂排出量の関数としての1850~1900年以降の世界平均気温の上昇
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